ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ 1852)

  • 早川書房
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本棚登録 : 201
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150018528

作品紹介・あらすじ

講演のためにセントルイスを訪れた歴史学者ルーク。しかし、会場には、再会するとは夢にも思わなかった人物が待ち受けていた。その名はローラ・フェイ・ギルロイ。20年前、遠い故郷でルークの家族に起きた悲劇のきっかけとなった女性だ。なぜいま会いに来たのか?ルークは疑念を抱きつつも、彼女とホテルのラウンジで話すことにした。だが、酒のグラス越しに交わされた会話は、ルークの現在を揺り動かし、過去さえも覆していく…。謎めいたローラ・フェイの言葉が導く驚愕の真実とは?巨匠の新たなる代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 何十年も前に出たきり足を向けていない故郷の小さな町から、大学教授となった「わたし」のもとへ突然現れた、かつての冴えない小娘、ローラ・フェイ。いっそう冴えない中年女となった彼女は、何を胸に秘めて私に会いにきたのか? 「わたし」の父と陳腐な関係をもち、その死のきっかけをつくったのは彼女だというのに。
    そこで蛇がまちかまえているのを知りながらふらふらと引き寄せられる小動物のように、「わたし」は、ローラ・フェイとの望まぬ会話にひきずりこまれていく。語り手の疑念や不安は読み手にも感染し、息詰まるほどの緊張感を感じさせる。おぼろげな不安をかきたてるのはローラ・フェイだけではない。「わたし」はなぜこれほど、何の脅威にもなりそうにない平凡な中年女をおそれるのか。何度も彼女を冷たくあしらい、逃げ出そうとしながら、なぜ彼女との会話をうちきれず、回想に我を忘れるほどのめりこんでしまうのか。
    やがて、夜が更けるとともに、ゆっくりと浮かび上がってくる真の罪は、決して犯罪として裁き得ないものゆえに、より残酷だ。平凡な人生で終わりたくない、自分の能力でどこまでゆけるか試してみたいという願望そのものは、野心ある若者ならば誰もが抱く。それが魂を殺す罪となるとは。
    2人の人物が静かに会話をかわす一夜の物語だが、緊張感みなぎる文章が抗いがたい魅力を放つ。大人のためのミステリーだ。

  • 今はどうだか知らないけれど、30年ぐらい前は日本もこんなことがあったんじゃないだろうか。
    進学率がどんどん高くなって、親父は中卒で息子は大学卒。
    親父は中卒で、しかも知能指数よりも体力が求められた時代に育ったものだから、子供が(そして母親が)どうしても上の学校へ進学したい(させたい)というのが、理解できない。そこまで無理しなくても俺の跡を継げばいいじゃん、俺も親父の跡を継いだんだから。俺も貧乏だけど、近所もみんな貧乏だ。
    見てはいないけど、きっと「ALLWAYS三丁目」の世界?
    大学に行こうという息子から見れば、親父のガサツさは耐え難いというのは、容易に想像できるね。
    とは言え、今でもオヤジはパンツも一緒に洗ってもらえないくらい家族中から蔑まれているから、あまり昔と変わらないのかもね。
    主人公もなまじインテリだから、過去を引きずっているだけで、親父並みのDQNなら、気にも留めなかったかもね。でもそうだと、結局本は書けないわけで。

    息子や娘から蔑まれるのは、男としての悲しい宿命なのでしょうか?

  • 昨日銀座に行ったときゲットした「銀座百点」の中の
     「グラス越しの世界」 東理夫 に紹介されていた本。
    そこでは、本書にでてくるアップルティーニ(アップル・マティーニ)についても語られている。
    「ウォッカ」と「グリーン・アップル・パーカー」で作るカクテル。
    サスペンス小説にでてくるマティーニやリンゴ酒は、魅力的 (*^_^*)♪
    と、つられて読み始めました。

    私の好きな フリーマントルの「チャーリー」シリーズでも こだわりのお酒が登場します。

    さて本書は、サスペンスなわけで、冒頭から暗く憂鬱な雰囲気〜。
     読み進めたものか・・・、「アップルティーニ」がでてくるまで がんばろう!

    読みすすめると だんだんと面白くなってくる。 
    そう・・・まるで、ピノ・ノワールとアップルティーニをちびちびやりながら、語り合う二人の話を 横に座って聞いているよう。
    それでていて、まるで映画を見ているように、過去の映像がフラッシュバックする。
     これがまた時系列順というわけでもないので、アップルティーニのおかわりとなる。
    会話も本質をついたり 取りとめもなかったり。
    やがて、ローラ・フェイの言葉とルークの言葉が重なりあい、真実が見えてくるが・・・。
    読み終わる頃には どっぷり世界に浸っていました。 (*^_^*)♪

    2012/5/6 予約 5/12 借りる。5/15 読み始める。7/22 読み終わる

    内容 :
    歴史学者のルークは、20年前、故郷で彼の家族に起きた悲劇のきっかけとなった女性ローラ・フェイと再会する。
    彼女との会話は彼の現在を揺り動かし、過去さえも覆していき…。
    謎めいた彼女の言葉が導く驚愕の真実とは?

    著者 :
    1947年アラバマ州生まれ。作家。
    「緋色の記憶」でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞、「緋色の迷宮」でマルティン・ベック賞を受賞。

  • ミステリと思って読むと、なんだそんなことか。と思う。
    でも、最後に何があるのだろう?と思うから引き込まれて読まされてしまう。

  • 5月24日読了。図書館。

  • 正確にはミステリーとはいえないような内容だと思うが、早川書房から出ているのでミステリーということにしておく。

  • ジリジリと追い詰めるような展開。
    とても淡々としている。
    悲しい話で、二人の会話だけで進んでいく物語が斬新なんだけど、主人公の行動にイマイチ納得できず、残念。
    人間の心の闇を描いているんだろうけど、迫るものがなくて、残念。

  • ローラフェイとの会話が延々と続く中でも、過去の秘密を探るという展開がページをめくらせられました。半分を過ぎたところで、結末を知りたくて一気読みです。会話中、二人がお互いを探り合うやり取りの描写、主人公の心境の変化の描写が上手で、読んでる側も「あーあるある、こういう焦り」等、実感できました。(読了 2013/12/29)

  • 主人公の頭でっかちで自己中な子ども時代の描写が、いちいち痛くて辛い。いかに自分のものの見方が未熟で偏っていたか。ローラ・フェイとの会話を通して気付いていく過程が非常にリアルで、読み手は主人公と同じショックを味わう。そして最後に明かされる主人公が抱えてきた苦しみ。この痛みを他者と分かち合えたからこそ、ラストがあるのだろう。

  • 大好きだけど、記憶シリーズが印象強くて
    しばらく空いてしまったクック作品。
    実に2年半ぶりの読了でした。

    不器用な父親が店の女性と不倫したせいで
    彼女の男に殺されてしまった、と思ってる主人公。
    彼女との久々の、そして最後の会話で
    その真相があらわになるわけですが …
    いやぁ、やっぱクックはとんでもない!
    他の誰にも真似できない筆致は素晴らしいです。

    会話の中でどんどん出てくる主人公の深慮。
    この深慮をどれだけ深く書けるかがクックの最大の魅力といってもいいのかな。
    事実がひっくり返るわけではないけれど
    背景、思いがひっくり返ることでどうしてこんなに静謐な物語ができるのか。
    すごいったらありませんよ。

    父親がなぜ死んだのか(殺された、ではなく)
    真相に行き当たった時の主人公の思いは
    おそらく想像を絶するものだろうと思います。自分を常に支えてくれた母親が何をしたか
    そして自分は何をしたのか、しなかったのか。

    最後のちょっとした温かみは
    クックとしては珍しく光を与えるものですけど
    それが無かったら、この重さはキツいわ。

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