ミステリガール (ハヤカワ・ミステリ 1872)

  • 早川書房
3.14
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (534ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150018726

作品紹介・あらすじ

小説家志望の中年男サムは、家出した妻の愛を取り戻すため、途方もない巨体を持つ異能の探偵ソーラー・ロンスキーの助手として再出発しようと試みるが……。『二流小説家』著者の最新ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 「二流小説家」が好評だった作者の2作目。
    今回は映画のパロディ的というか~映画オタクの愛と薀蓄に溢れています。

    小説家を目指しているサム・コーンバーグ。
    結婚5年で妻のララに突然去られ、呆然自失。
    小説が売れる見込みが全くない状況が続いていて、勤めていた古本屋も閉店という。
    妻を取り戻すために仕事に就こうとして、巨漢の私立探偵ソーラー・ロンスキーの助手となります。
    ロンスキーは富豪のようだが、家を出ることがほとんどなく、老いた母と家政婦と共に屋敷にこもっている変わった人物。
    謎の美女ラモーナの尾行が、サムの初仕事。
    ところが、ラモーナはサムの目の前で‥?

    サムの友人マイロは、レンタルビデオ店を経営していて、サムはよく一緒に好きな映画を見倒し、元古書店主でレズビアンのMJもよく来ている。
    伝説的な映画監督ゼッド・ノートと、彼の映画に出演していた妻のモナら美女達が、謎に絡んできて?
    メキシコに渡ったサムは、西部劇顔負けの銃撃戦に巻き込まれることに。

    やや展開が遅いのは1作目とも共通するけど、薀蓄の対象になっている前衛映画や西部劇にあまり興味が持てないせいか、1作目より長く感じました。
    主人公がダメ男なのは1作目も同様だったかもしれないけど、どこが違うのか‥切れ味?
    サムの書いている小説っていうのも、どうも‥
    サムが純文学(死語?)を書くような人に思えないのが~共感できないところかな?(苦笑)

  • んー、何というか、語り手の独白がちょっと鼻について、あんまり楽しめなかった。文系インテリオタク系ダメ男である主人公にどうも可愛げがないようで。ミステリとして切れがあるわけでははないので、気持ちがのらないまま読了。「二流小説家」は、ある程度楽しんで読んだけれど、世評ほど面白いとは思わなかった。「本好き必読!」みたいな評もあったけど、うーん、そうかなあ。

  •  『二流小説家』はちなみに面白かったのか? とあなたはぼくに問われるかもしれない。でもぼくはあなたにきっと答えることができない。あるいはぼくはこう答えるかもしれない。ミステリとしてはどうかと思う。謎解き部分はあるけれどもそう秀逸な流れでページを繰る手が止まらないというスピード感覚があるわけでは全くない。むしろ忍耐を強いられると思うので、よほど本の好きな人、活字中毒者たちに対してしかぼくは正直なところ薦めたくないんだ。

     『ミステリガール』はどうだったのか? とあなたはぼくに問われるかもしれない。ぼくはきっとこう答えるしかないだろう。言葉は好きですか? あるいはあなたには本を読む時間を大切にできますか? 何故なら、この本は、スリリングでもスピーディでもなく、むしろ数々の無関係にすら覚える著者の博学エピソードによってブレーキがかかることのほうが多い小説なので、そういう博学エピソードを楽しめない口には、ぼくは全くお薦めできないんだ。

     というわけでひどく多くの複雑な条件付きでなければお勧めできない作家としてデイヴィッド・ゴードンをぼくが見ていることだけは、了承してほしい。そのくらい難しい書物だ。この小説は言わば総合小説であり、ミステリ単体でシンプルに作られたものではないことだけは請けあう。それ以上にハヤカワ・ポケミスで出されてよかった本なのだろうか? とさえぼくの足元が揺らぐ。

     本書は一作目の度をさらに超えて饒舌が疾走する。前作は作中作やら、小説家の持つ小説論、マルセル・プルーストを持って何を語ろうとしているのかわからない不明確さなどが、中途半端なきらいがあったが、本書はさらにそれらの無責任なプローブが世界をつつき回しては出来損ないみたいなフリークなキャラクターたちの哄笑という名の手術に晒される。よくもまあここまで何かに偏り専門化した変わり者たちをクリエイトしたものだ、と感心するくらいに、彼らの造形は見事なものなのだが。

     この本はミステリなのだろうかと一千回くらい思い疑いを極限に増したあたりで、えええええ? というくらいの驚きに晒された自分が少し情けなかった。でも嬉しかった。この本はミステリだったのかもしれない、と確信には程遠いが、いくばくかの可能性に安堵のため息を付くことができたからだ。さらに、三本目のフィルムの登場により、この小説がミステリであったことがようやく証される。おいおい、もう巻末近いぜ、との感想は置いておくとしても。

     そして離婚を言い渡して行方を絶った妻ジェインの物語が、主人公(そういえばこの人は小説家志望)の道筋に重なったときに、三度目の驚愕が訪れる。いずれも前作を上回るツイスト構造であることは間違いない。この瞬間を最高の快感とするためにこの小説が書かれたことは間違いないと思うくらいに。作者の小賢しい笑顔に降参した読者たちの悔しさ半分の苦笑が見えてくるくらいに。

     というわけでこの作家は90%の人には薦めない。映画が好きであったり本が好きであったり、マニアックでフリークである人たちの魂を応援できるか賛同できるかする10%(もいるか?)の人たちのために存在する作家であると言い切っていいのかもしれない。ぼくは『ワイルド・バンチ』と、その映画でマパッチ将軍の役をやったエミリオ・フェルナンデスのその後のメキシコでの人気ぶりに関するトリビアが個人的な収穫であった。そういう魂の部分に触れる歓びみたいなところをつついてくるとてもいやらしい手口を持っているのである、このふざけた作家は。

  • 「ぼくが探偵助手となって最初の殺人事件を解決したのは、妻に捨てられて、いくらか正気を失った直後のことだった。」

    この書き出しの一文がこの小説のすべてを表していると言っても過言ではない。かな?
    結局のところ、デイヴィッド・ゴードンはおたくなんだな。
    映画は香港電影以外サッパリわかんないんだよね。
    なのでキチンとした評価はできないんだ。スマンスマン。
    本筋はよくあるパターンだと思うので、とりあえず真ん中で。

  • 地元米国よりも日本で評判になったという「二流小説家」でデビューを果たしたゴードン、第2作目となる2013年発表作。タイトルから洒脱なハードボイルドを想像していたが、過剰なデフォルメを施した〝くせ者〟らが繰り広げる物語は、どこまでもオフビートな展開で、読み手を煙に巻く。

    小説家を目指す若者サム・コーンバーグは、店番を勤めていた古書店が潰れて失職、悶々とした日々を送っていた。メキシコ出身の美しい妻ララは、夢を追い続ける甲斐性なしの男を支えてきたが、突然別れを切り出す。家を出たララとの関係を修復すべく、サムは職探しに奔走。運良く助手として採用された私立探偵の自宅兼事務所に赴く。探偵ロンスキーは、歩行がままならないほどの巨漢だったが、前途多難なサムの境遇をホームズ張りの観察力で言い当てた。頭脳明晰であることは間違いないものの、明らかに変人だった。早速、ラモーナという若い女の監視を任されたサムは意気込むが、所詮は素人に過ぎず失敗を繰り返す。ついには海岸に面したホテルで、意図せず接触したラモーナと〝成り行き〟で体の関係を持ってしまう。翌朝、部屋のベランダから女が飛び降り自殺した。ラモーナは精神を病んでいた。ロンスキーは「女は殺された」と主張。続けて「わたしの愛する女を殺した犯人を探せ」と激昂し、サムを唖然とさせる。この探偵も狂気に取り憑かれていたのだった。

    この奇抜な序盤を経て、死んだ女の正体がロンスキーの独白(調査記録)によって明かされる。本作は基本的に主人公サムの一人称語り(ぼく)だが、物語の進行に応じて主要な事件関係者自身が語る章を挿入し、それまでの流れを断片的に補完、整理していく構成をとる。
    ラモーナの本名は、モナ・ノート。ヨーロッパを拠点にカルト映画の監督として名を馳せたゼッド・ノートの妻だった。米国に移り住んだゼッドはスランプに陥り、B級ホラーを数本撮ったのちに、自らの頭を撃ち抜き死んだ。その場面は、最後の作品に収録されていたが、フィルムの所在は不明となっていた。女優として出演したモナはゼッドの自殺を目撃、精神的打撃により入院した。そこで出会ったのが〝患者〟のロンスキーだった。
    サムは、またしても入院したロンスキーに代わり、モナに関わる謎を探り始めた。貸しビデオ屋に勤める悪友の手を借りつつ、ゼッドの映画に関わった俳優やスタッフを訪ねて回る。新たな事実を掘り起こすたびに、〝ミステリガール〟モナは変幻し、実像に迫るサムを翻弄し遠ざけた。

    プロットには捻りを加えているものの、やや空回りしている部分も目立つ。処女作「二流小説家」でも顕著だったが、実験的手法を大胆に組み込み、破綻するぎりぎりで抑えている。第一作目に比べて評価は今ひとつのようだが、創作に懸ける作者の思いが分厚い文章から溢れ出ており、新鋭ならではのバイタリティを感じた。〝メジャーではない〟小説や映画作品に関する大量の蘊蓄、強烈な個性を持つ登場人物らのやりとり、退廃的で乾いたユーモア、終盤ではメキシコを舞台に「マカロニ・ウエスタン」へのオマージュと思しき躍動感溢れる場景で楽しませてくれる。実際、本筋よりも生彩に富んでいると言っていい。
    主人公は「実験小説」を標榜する作家志望の青年だが、これにはゴードン自身の経験を反映させているのだろう。ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ」などの難解な書物を読みこなし、淀みなく一家言を披露するが、いざ実作となると才能の限界に打ち当たる。小説家としても探偵としても〝二流以前〟の男が、曲がりなりにも事件を解決するというコンセプトは、いわば「二流小説家」の焼き直しともいえるのだが、読者に楽しんでもらおうという気概が伝わってくる。残念ながら、インパクトと完成度では前作には及ばないものの、本作でもミステリへの愛は横溢している。ゴードンには、まだまだ注目していきたい。

  • 前半はダメ男の戯言と映画と文学の蘊蓄ばかりで読み進めるのが難しかったですが、それぞれに癖のある登場人物たちに引っ張られて何とか終盤まで。ドタバタはしてますが全ての出来事に対する説明はなされており思ったよりちゃんとしたミステリ作品でした。自分的には映画と文学のマニアックなところは不要でしたが、そこに興味がある人はもっと楽しめると思います。

  • 面白かった!登場人物のキャラがどれも楽しいことになっている。なかでも、ともすればマヌケと評されそうなくらい誠実で不器用な自分サイズで満足して生きている主人公がイイ!

  • まあ長々とオタクな知識を披露してくれたもんやなっと。
    語り口は絶妙やし、もうちょい締まってたら好印象やったかも。

  • 図書館

  • 内容自体は面白かったけど、途中で中だるみしたのは残念。映画や小説に対する愛はすごく感じた。しかし、その愛が収集つかなくなって作品の中で一人歩きしている。

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