地上最後の刑事 (ハヤカワ・ミステリ 1878)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150018788

作品紹介・あらすじ

〈アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞〉小惑星衝突が迫り社会が崩壊した世界で、ある新人刑事は保険会社社員の自殺事件に疑問を持ち、地道な捜査を開始するが。異色のミステリ

感想・レビュー・書評

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  • 惑星衝突の発表で混乱した社会で、犯人をつかまえようと地道に捜査する私ヘンリー・ペレス38歳。周囲は自殺と決めつけるが私は殺人の疑いを持っての捜査なのだ。衝突発表で混沌混乱する社会。「結晶化する」「灼熱化する」「水に沈む」社会を描いたバラードの世界も頭をかすめるが、バラードほどには作品世界に入れなかった。SF的装置と殺人捜査がミックスしたところが新味か。

    バラードの世界はもう限界まで来ているところの描写だが、こちらは「死ぬまでにやりたいことリスト」をやる、もう勤めなんかやめ、それゆえ警察署員も数が減っている、通信、交通も不通になりかけている、など描写が具体的。間に私ペレスの死んでしまった親や妹ニコとのかかわりが入る。

    場所はアメリカ・ニューハンプシャー州コンコード。
    惑星衝突の発表が1月、事件発生が3月20日、それからの3月22日、27日、28日、4月11日が描かれる。衝突地点の発表が4月9日で衝突は10月。

    アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA)受賞作

    著者:ベン・h・ウィンタース 1976.6.14アメリカ、メリーランド州生まれ。セントルイスのワシントン大学卒業。

    2012アメリカ
    2013.12.15発行 図書館

  • 半年後に隕石が衝突することが発表され人類滅亡までのカウントダウンが始まっている世界。
    人々は仕事そっちのけで残された時間を有意義にするため、”したいことリスト”の実現を目指し社会機能が減衰。
    一方多くの人が希望を失い自殺者も急増。

    そんな中一見すると自殺に見えるが、何かひっかかる事件に遭遇する新米刑事ヘンリー・パレス。
    終末の憂いを帯びる廃れた世界でひとり熱意を保ち職務を全うしようとする姿が健気で胸を打つ。

    極めて特殊な状況設定の中で明らかにされていく事件の真相と差し込まれるヘンリーのプライベートサイドストーリー。
    終わりゆく世界での事件解決までの道のりと虚無感との融合がある意味新鮮な感覚のSF警察物語。

  • “この耐えがたい内的要因”

    小惑星が地球に衝突して世界が終わらんとする世界で刑事としての役割を果たそうと奮闘する刑事の話で、特にミステリーとしての謎解きがおもしろいというよりは、その終わりに向かう世界の破滅的空気がよかった。もし今があと半年で滅びようとしている世界だとしたら、わたしならきっとだらだら寝転がってツイッターをするだろうなと思う。しかし作中だとインターネットへの接続はかなり不安定になっているらしいので、ツイッターをできるほどの余裕はないだろうな。そしたらやはりツタヤでDVDを借りて映画を見るか(ツタヤが営業しているとして) 本を読むのかもしれない。あまり悲観的になりすぎず目の前の娯楽を楽しむ自分が見える。本を読みながらそういう想像したけど別にわたしの世界があと半年で滅びることもなく外はいい天気でのどかに時間がすぎている。だからわたしはだらだら寝てすごすのではなくきちんと生きなければならない。

  • 「小惑星不景気」
    なんて素晴らしい造語なんでしょう!

    小惑星「マイア」が10月には地球に衝突するのが確実である事が判明した1月のある日。マクドのトイレで首を吊った男が発見される。
    厭世気分が蔓延する世界で、一見自殺に見える事件を掘り下げていく新米刑事。自殺する人間も多く、誰も事件に真面目に取り合わない中を主人公は地道に一つ一つ証拠を積み上げていく。この辺は全くオーソドックスな推理小説。設定がSFなだけ。
    終末世界には必然的に登場する宗教団体、地球脱出を真剣に考える輩、人類のエリートだけを極秘施設に囲う計画があると信じる人々、「マイア」を核攻撃すると息巻く危ない国。シュールな且つリアリティのある終末景色だ。(妖星ゴラスはやっぱり非現実的なのかしらん)
    登場人物が多く名前を覚えるのに苦労するが人物描写は中々上手い。ナオミは魅力的だしニコとの兄妹愛も面白い。
    しかしながら肝心なミステリ部分がチョット弱い、そこだけ残念。
    設定は凄く面白いし全3部作の第1作だそうだし続編が楽しみ。
    果たして地球は滅亡するのか!?(そういうSFな要素は排除してお話は進むんだろうけど。)

  • マルティン・ルターの言葉を想起。
    「たとえ明日世界が滅びるとしても、私は今日リンゴの木を植える」

  • 小惑星 地球を衝突、殺人事件。設定が面白く、全体的に灰色な感じの世界がかっこいい。何気に取った本だけど、面白い❗三部作らしいので自作も読む予定

  • ファストフード店のトイレで死体で発見された男性は、未来を悲観して自殺したのだと思われた。半年後、小惑星が地球に衝突して人類は壊滅すると予測されているのだ。しかし新人刑事パレスは、死者の衣類の中で首を吊ったベルトだけが高級品だと気づき、他殺を疑う。同僚たちに呆れられながらも彼は地道な捜査をはじめる。世界はもうすぐなくなるというのに……なぜ捜査をつづけるのか?そう自らに問いつつも粛々と職務をまっとうしようとする刑事を描くアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞作!
    原題:THE LAST POLICEMAN
    (2012年)
    — 目次 —
    1.首吊りの街
    2.無視できない確率
    3.希望的観測
    4.すぐに、そうなる時がくる
    5.エピローグ

  • 小惑星が衝突して地球が滅びるまであと半年。
    未来を悲観して自殺したと思われた男に不審な点があることを発見したパレスは他殺を疑い、捜査を始めるのだった。

    半年後を見据えて、自暴自棄になる者、淡々と己の役割を果たす者、何とか生き延びようとする者。
    混沌とする世界の中で、それでも己の仕事に邁進するパレスがハードボイルドだなぁ。
    なぜ彼がそこまでするのかは見えなかったけど、そういうタイプなんだろうなあと思うことで納得。
    事件の彩りにはなっているけれど、決して終末感に逃げずきちんとミステリを描いているのはいいね。

  • 半年後、小惑星が地球を直撃し人類は絶滅に近い打撃を受けると確定したら、自分はいったいどうするだろうか?

    そんな世界で、自分の仕事を全うしようとする新人刑事の物語。映画「アルマゲドン」や「ディープ・インパクト」、クラークの「神の鉄槌」も小惑星衝突の危機を阻止する人々の姿を描いたSFでしたが、この物語はそんな状況下の地上の人々の物語。しかも自殺とも思える死因に疑問を抱いた新米刑事の地道な捜査を描くミステリーなのです。今年はロシアに大きな隕石も落ちて話題になったしもはやSFとはいってられないのですね。

    ほとんどの人は死ぬまでにやってみたい事をやるべく仕事をやめるか、酒か薬で紛らそうとするか自殺してしまい、交通機関は麻痺しネットは通じなくなり電話も・・・じわじわと破滅していく世界がリアルに描かれていきます。すごい設定。

    そんな中でも、職務を通常通り全うしようとする新米刑事は正義感に突き動かされてというのではなく、あくまでアドレナリンに突き動かされていったり、きちんとしていたいという個人的な欲求の結果というところも説得力があります。

    世界の壊滅であれ、健康上の理由であれ、金銭的な理由であれ、もう自由にならなくなる時が確定したとしたら、自分はいったい何をするだろう。ちょうど死ぬまでにやりたい100のリストを作っていたところだったので、あまりのタイミングにびっくりです。

    3部作とのことで、今後も楽しみなシリーズです。

  • 半年後に小惑星が地球に衝突して壊滅的被害を及ぼすと予想される世界。 
    ファストフード店のトイレである男の首つり死体が発見される。 
    状況は、未来をはかなんでの自殺と思われたが 新人刑事のパレスは、首を吊る際に使われたベルトだけが高級品であることに違和感を覚える。 
    他殺を疑い、捜査を始めるパレス。 
    世界が終わるという絶望的な状況で「偏執的」ともいえる捜査で明らかになる真実。
    「こいつが犯人かな?」と予想した人物はハズレでした。 犯行の動機も、「この状況だからこそ」という点で及第点かな。 
    三部作ということなので、あと二作追っていこうと思います。

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