マイ・シスター、シリアルキラー (ハヤカワ・ミステリ 1963)

  • 早川書房
3.32
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本棚登録 : 278
感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150019631

作品紹介・あらすじ

真面目な看護師コレデはうんざりしていた。美貌の妹アヨオラが、今日もまたその彼氏を殺してしまったのだ。これで三人目。コレデは死体を処理するが、次第に警察の捜査が姉妹に迫り……。ナイジェリアの新星が描くブラックユーモアと切なさに満ちたサスペンス

感想・レビュー・書評

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  • 初のハヤカワミステリ。
    読みやすい文体で、細かい節に区切られているのでサクサク読めました。
    妹怖すぎ、かつての父親ももっと怖いけど。

  • 連続殺人犯の妹の後処理を毎回する羽目になる姉が主人公。
    軽快な文章と裏腹に、次第に見えてくる背景は重い。
    ただ設定の面白さだけで書いている作品ではなくて良かったのだけど、私の好みとしてはもう少し書いて欲しかった…この物語でこのページ数は短すぎるように感じた。
    あえて色々とはっきり書かないのが意図してなのだとはわかるのだけど。

  • ナイジェリア人の作家さんということで、気になって読んでみた。
    アフリカが舞台の作品は、ほとんど読んだことがないので新鮮。
    ミステリ・レーベルから出ている本だけど、自分的にはこれは純文学だと思う。
    登場人物のほとんどがクズだと思ってしまうのは…自分がおかしいのか?

  • あっという間にクライマックスを迎えてしまった。サクサク読めるしコミカルなところもあるのだけれど、これそうとうトチ狂った姉妹の物語だぞ!?(褒めてる

    嫌いじゃないよ。コレデ。きみがいちばんトチ狂ってる。この二人は今後もこうして生きて(殺して)いくのかしらと先々を思うとまたゾッとする…

  • 各章が短いのですぐ読める。内容は凄いのに何故か突き放した様な雰囲気がドライで良い。コレデはずっと妹を庇い続けるのかと考えると着地がイマイチの気がした。

  •  ナイジェリア発新人女性作家によるデビュー・ヒットということである。ロンドンとナイジェリアの大都市ラゴス島を往来する若き女流作家(1988年生)のこれまでの人生がどのようなものかはわからないが、英国へ留学し、キングストン大学の学位を取得している上流育ち。写真は可愛らしくお洒落なイメージ。

     まずはアフリカ発ミステリーというだけでも珍しいし、数々のミステリー賞を獲得したという、本作の煽情的なタイトルも話題性豊かで目立つだろう。ちなみに本書は、二百ページに満たない短めの小説である。内容は細かく区切られた章立てによる、場面転換の豊富な、とても読みやすく興味深い作品であった。

     三人以上の殺人で「連続殺人鬼=シリアルキラー」の称号は得られるのだそうである。我らがヒロインは、殺人者の姉コレデ。彼女の愛する妹アヨオラこそが、殺人者である。アヨオラは三人目の彼氏をナイフで刺し殺してしまったことで、ついにシリアルキラーとなったのである。コレデは、愛する妹のために率先して死体を始末し、部屋の証拠を片付け、妹を救うべく奔走し、隠蔽する。

     コレデの仕事は看護婦。その職場でのエピソードが現在時制で、ストーリーの軸となりながら、凶器のような存在でありながら美貌を誇る妹アヨオラとの共存生活を描いてゆく。殺人鬼の妹が姉の生活に割り込んでくることで、姉は様々なトラブルに巻き込まれることになる。病院も自宅もスリリングな場面でいっぱい、ということに。

     この通り、基本プロットはとってもブラックなのだけれど、実は明るく、元気で、デリケートで、読みやすい家族小説とも言えてしまう。今は亡くなっているらしい父親の隠されたストーリーを背後に思わせぶりに秘めつつも、比較的無頓着な母親と姉妹という女三人、彼女らの暮らしにアヨオラが引っ張り込んでくる犠牲者たち、という構図が、何とも言えないスリルを生み出す。

     異常な事態を描いた状況小説、という読み方もできるし、人種や生活格差など様々な社会問題を孕んだ、ラゴスというアフリカの大都市を風刺する小説という側面も持っている。さらに家族と青春を描いた前向きな自立小説と言った側面も多分にある。どこを取ってもエネルギッシュな生命力に満ちているが、墓の中を覗くような怖さもつき纏う。

     恐怖とスリルをまぶしたシリアルキラーという異常を軸に、クライム小説としての切り口も添えて、読者の前に出される極彩色の民族料理。よく掻き混ぜて口にしてみると、様々な新しい味わいが得られる珍味食材。馴染みのないこの発見の喜びは、少なくともどなたにも感じ取って頂けることと思う。

  • ナイジェリアの作家が描く、サイコミステリー。交際相手を殺しがちな妹、その後始末を手伝う姉。姉妹の性格も容姿も真逆といってよい。
    家族、ジェンダーなども描きつつ話が進むが、重たくなりすぎず軽妙で読みやすいこの作品。ほんの1-3ページずつに章が分けられて描かれているのも驚きだが、重たいシーンでも軽妙なジョークが挟まれる。ナイジェリアの文化なのではとのこと。この独特な感覚は、ぜひ味わってほしい。
    お勧めです。

  • なんとも珍しいナイジェリアミステリ。

    人物描写や人間関係にそこはかとなく文化色を感じ、序盤やや馴染めない感じがしたが、凝縮された3~5ページからなる章を連ねた小気味よい構成に引き込まれていった。

    何故か付き合う男、付き合う男をナイフで殺めてしまう妹アヨオラに振り回される姉のコレデ。
    アヨオラの次なる標的はコレデが職場の病院で密かに想いを寄せる医師のタデ。
    アヨオラのぶっ飛びっぷりと、その言動を諫めながらも心の底では血の繋がりによる愛情を捨てきれないコレデの物語の行きつく先はどこなのか。

    とてもサスペンスフルで、なるほどおもしろいと感じた。
    結末が期待していたほどひねりの利いたものではなかったのでやや残念だったが、今後に可能性を感じた作品。

  • 姉というのは難儀なものである。そして、こういう法則は洋の東西を問わないらしい。舞台はナイジェリアの首都ラゴスである。
    タイトルと装丁のポップさにフラフラと手に取ったが、ポケミスなんて何年ぶりだろう。2段組とはいえ200ページ弱の作品だし、短い章立てでテンポよく話が進むので、読むのが遅いわたしでも3日間ほどで読了。
    読み始めたときには、シリアルキラーの妹だなんて、どんなサイコさんだろうと恐る恐るページをめくったが、彼女、美人でスタイルもよくて自己プロデュース能力にも長けてる、今時のイケてる女の子なのだ。地味で几帳面な姉に言わせるとだらしなくて大雑把で、と文句は延々と出て来るのだが、そうは言っても妹のことは放っておけない。なんてったって、妹の犯罪をきれいに始末して(それには看護師としての知識と技術はフル動員される)完全犯罪に仕立ててしまうのだから。でも、どうして妹のアヨオラは、いつも彼を殺してしまうの?
    やっと3人目の始末をしたばかりというのに、アヨオラはなんと姉が絶賛片想い中の彼を夢中にさせてしまう。いや待って、二重の意味で阻止したい。このままでは彼はアヨオラとくっつき、あの世へGo!
    この、姉の気を知ってか知らずか妹と母親の能天気さに読者は姉共々呆れるのだが、なーんかあるなと引っ掛かってくるのだ。
    そんなお話の中に少しずつ紛れ込むのが、彼女らの亡き父との思い出。とんでもないDV男の犠牲になってきた過去が彼女たちに影を落としていることに薄々感づいてくる。
    でも、はっきりと原因と結果が示されるわけではなく、読者の想像に委ねる部分がかなり多いのが読者冥利に尽きる。
    描きたいのはなぜこんな殺人鬼が生まれたかとか、どうして男たちは殺されたかではない(ぼんやりとは分かる)。事件を通してこの凸凹姉妹がどんな絆で結ばれているのかを感じていく作品なのだ。注意深く見ていくと、二人がお互いにどう言っていたかを他人がわざわざご注進してくるのに気付く。いわばミスリードというところなのだろうが、そんなことで姉妹の仲は揺らがないのですよ。クライマックスで立場が逆転するところがとってもよかった。
    巻き込まれ型のバディものでもあり、(本物の)シスターフッドものでもあります。どこが舞台でも成立するお話ではあるけれども、それだけに敷居がめちゃくちゃ低い。時折入り込むエキゾチックさが素敵な刺激となります。そして、姉としては妹に「元気?」とメールしたくなります。めちゃオススメ!

  • なんかあるかと思えば

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