夢の蛇 (ハヤカワ文庫 SF マ 2-1)

  • 早川書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150107802

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  • 全面核戦争後の荒廃した地球。不毛の砂漠と化した地を旅し続ける女治療師・スネークは、生物工学的に変異させた蛇を使って血清や薬を作って人々を助けることを生業としている。治療のために立ち寄ったある村で、村人の無知と恐怖心から殺されてしまった彼女の蛇「草<グラス>」は、治療に不可欠にも関わらず産み出すことが非常に難しい<夢の蛇>だった。新たな<夢の蛇>を手に入れて治療師としての挟持を守るため、最先端の科学知識を独占する「都市」への困難な旅に向かうスネーク。一方、蛇を殺してしまった村出身の青年アレヴィンは、彼女の力になろうと一人後を追う。外部との交流を頑に拒む「都市」、何故かスネークを付けねらう謎の攻撃。様々な困難をくぐり抜けながら旅を続けるスネークは、新たな<夢の蛇>を手に入れることができるのか?

    凛とした物語。
    一言でまとめると「異世界で旅をする若者の成長譚」という有りがちなフォーマットのSFではあります。が、本作の最大の特徴は、主人公が自立した大人の女性であること、そして行動原理が「職業人としての挟持」であるということ。職業人としての腕前の確かさはもちろんのこと、一人の女として男のあしらい方も心得ていますし、大切なものを守るために権力に立ち向かう度胸も備えています。因みに1978年の作品です。発表当時、このキャラ設定は相当新しかったのでは、と思います。

    スネークが属する「治療師」は、蛇を使って医療行為を行うという一見怪し気な存在ですが、実は科学文明の大半が崩壊したこの世界において生物工学の知識と技術を守り続け、それを後世に伝えていこうとする気骨ある技術者集団です。一部の住民からは必要以上に恐れられ、「都市」からは疎まれながらも、人々の役に立つ知識と技術を守るために、あらゆる困難に敢然と立ち向かうスネークの姿。ややファンタスティックな舞台設定や描写が目につく作品ではありますが、スネークの生き様そのものが、まさにSFとしての立ち位置を確かなものにしています。

    時代的にフェミニズムSFの風が吹いた時期の作品と言うこともあり、スネークをはじめとする女性キャラのものの考え方や行動がカッコ良過ぎて、今読むとちょっと鼻白むところはあります。アレヴィンとのロマンスが御都合主義的な気もしますし、「~だわ」といった不自然に女性を強調した訳文もちょっと気になります。そんなわけで、全体的な印象は「古いSF」ではあるのですが、その描き出すエッセンスは今でも十分通読に耐える瑞々しいSFだと鴨は評価します。男性が読むと、またちょっと違うイメージを持つのかもしれませんね。

  • ファンタジックSF。
    だいぶ前の作品ですが、とても魅力的です。
    果敢な女性の愛と冒険の物語で、砂漠や山間を旅する情景描写がとても美しい。
    核戦争後の世界。人々は少しずつ集まって中世的な集落を作り、孤立がちに暮らしています。
    「治療師」の女性スネークは、砂漠へと単身、治療に訪れました。
    3匹の蛇「草」「砂」「霧」を連れ、蛇の毒や血清を利用してする治療は、村人の恐怖を呼び、一番大事な夢の蛇が殺されてしまいます。もとは異星のものだったとされる夢の蛇がとくに重要な存在だったのですが。
    その部族の青年アレヴィンと好意を抱き合うスネーク。
    次に出会った怪我人は「都市」の出身者でした。
    よそ者を受け入れない「都市」の知識か、都市を通じて異星の力を借りることが出来ればとスネークは接触を試みますが…
    何者かに襲われて大事な日記を盗まれながらも、勇敢に旅を続けます。
    山間の町では、町長の治療に当たり、馬の世話をしてくれた少女メリッサを虐待から救うことに。
    一方、スネークのために村を出て、治療師の住む美しい谷間の里までたどりつくアレヴィンは…。
    ヒューゴー賞ネビュラ賞をダブル受賞しただけのことはある読み応え。
    1970年代後半の収穫の一つといえるでしょう。

    古い作品だし~万人向きとは言えないかと☆4つにしていましたがやはり傑作!
    五つにします☆

    • sanaさん
      ふぃんさん、
      コメント、ありがとうございます!
      私もこれずっと気になってまして、いぜんの作品なので読んだのに忘れてるのかと思いつつ、やっ...
      ふぃんさん、
      コメント、ありがとうございます!
      私もこれずっと気になってまして、いぜんの作品なので読んだのに忘れてるのかと思いつつ、やっと読んだんですが。
      好みから言うと☆5つでもいいかな~と思ったぐらいなんですよ。
      どなたにでもオススメではないので、4つにしといたんですが。
      わあ、「ネリルカ物語」?!
      あれもいいですよねえ…
      2010/10/17
    • ふぃんさん
      読みました!
      荒廃した世界も、そこに暮らす人々のそれぞれの文化も、何より治療師という存在が本当に魅力的な世界でした。最後が気になって読み急い...
      読みました!
      荒廃した世界も、そこに暮らす人々のそれぞれの文化も、何より治療師という存在が本当に魅力的な世界でした。最後が気になって読み急いでしまったので、また読み直していますが、世界観や世界設定が味わい深いのにストーリーが一つだけなので何だか物足らない気分です。
      もっとスネークとともに旅を続けたかった、そんな気持ちです。素敵な本を紹介してくださって有難うございました!
      2010/11/27
    • sanaさん
      ふぃんさん、
      読まれましたか~!
      とても嬉しいです。ご紹介できて良かった~。
      風景も暮らしも出会う人々も、世界の描写が何とも言えず、雰...
      ふぃんさん、
      読まれましたか~!
      とても嬉しいです。ご紹介できて良かった~。
      風景も暮らしも出会う人々も、世界の描写が何とも言えず、雰囲気があって…
      治療師の存在、働き方がいいですよね。
      そうなんですよ~これ1冊しかないの?続きは?関連作は?って思いますよねえ…
      私もまた読み返そうと思います☆
      2010/11/29
  • ヒューゴー、ネビュラ両賞を受賞した作品ということで、かなり期待して読んだのだが。

    すべてが中途半端な印象だった。SFなのかファンタジーなのか、あるいはその中間なのか、作品の世界観が結局はっきりしない。主人公以外の登場人物がすべて主人公の行動を促すための装置のように感じてしまう。最後になっても明らかにならない要素が多すぎる。もっと設定とオチを有効に活かすやり方があったはずだと思ってしまう。フェミニズムを核とした作品だとしても、なぜこれがそんなに好評だったのか、どうも腑に落ちなかったのだが、ネットで解説を見たところ、原文では人称代名詞を極力使わず、登場人物の性別は初登場時ではわからないようになっているとのこと。どうもこの作品は70年代後半という「時代」を映す鏡のようなものだったのかも知れない、と思い始めている。

  • 各戦争後の地球、訓練された蛇を使って治療を行う医師?の物語。貴重な夢の蛇を失って彷徨う主人公は女性ながら仕事にストイックだが、人情は深い。ハッピーエンドを願わずにはいられない展開。ラストの逃げ出すあたりのイメージがよく分からなかった…2クールでのアニメ化を希望します!(笑)""

  • 古書購入

  • 女流作家らしく読みやすいが記憶に残らない
    表紙   5点上原 徹
    展開   5点1978年著作
    文章   7点
    内容 650点
    合計 667点

  • やっと入手。
    面白かった。蛇は象徴するものはなんだろう。と読み終わって二日経ってから考えてる。
    この作者のスタトレのも読んでみようかなぁ

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