アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)

  • 早川書房
3.66
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本棚登録 : 543
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150118051

感想・レビュー・書評

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  • Amazonのレビューを信用してばかりいてはいけない、という例か。
    全編面白かった。

  • ディックには評価が甘いかもしれない私。
    だがこの文庫本という意味において★3。
    だってまあ買った私が悪いんだけど、
    あまりに映画アジャストメントアピールが強くて
    何話かの訳があまり好みではなくて
    既に知っている短編が入っていて
    字が大きい今時の文庫だったから。
    なので★4ではなく3なのはディックのせいではない。
    あくまで出版社と私の嗜好の問題。

    いずれの作品もディック的世界が堪能できてよろしい。
    現実とはあくまで自身の認識に基づいているにすぎない、
    ということを改めて感じさせる。
    でも『凍った旅』は怖かった。
    『アジャストメント』はどこをどうやったらああいう映画になるんだ。

    そんな感じ。

  • ほとんど既訳のディック短篇集。やっぱり浅倉訳で育ってきたんだなぁ。アジャストメントはもう映画は変えすぎ、この原作からあの脚本にもっていくほうがびっくり。

  • 難解だ。

  •  今回この短編集を購入したのは表題作である「アジャストメント」を読むためではなく(同作ももちろん面白いのですが)、巻末に収録されたディックの講演原稿「人間とアンドロイドと機械」を読むためです。
    「人間とアンドロイドと機械」は、遺作となったヴァリス三部作の執筆中にディックがイギリスで行う予定だった講演の原稿に加筆したもの。体調不良のためディックが渡英を中止したためこの原稿が残された唯一のものとなりました。
     ディックが終生作品のテーマとして持ち続けた「アンドロイド」という概念が一体何を意味しているのか。またディックの作品に共通してみられる記憶の改変、真実の隠蔽といったモチーフについてもディック自身の言葉で語られており、少しでも彼の作品を面白いと思ったことのある方なら必読です。
     後半、ディックの語り口はかなりオカルトめいてきます。デュオニュソス、エッセネ派、死海文書、転生、夢といった言葉が、まるでカルト宗教の教祖が語るような口調で綴られており、これを読まれた方は「果たしてディックは正気だったのだろうか?」と感じるかもしれません。当時のディックは友人の死やドラッグ中毒などでかなり精神的においつめられており、その表れと受け取る方がいても不思議はありません。
     しかし、私はこの部分に晩年のニーチェが書いたものとの強い関連を感じます。「私はインドにいた頃は仏陀でしたし、ギリシアではデュオニュソスでした」というあれです。ディックはユングに深く傾倒していたことで知られていますが、おそらくユングを通してニーチェを知り、それを引用した可能性が高いのではないでしょうか。ニーチェ、またその影響を受けたルドルフ・シュタイナーらの著作をフィルターとして読むとオカルト的要素の出所がはっきりしてきます。
     ニーチェの晩年とディックが死の直前に置かれた状況はある意味よく似ています。ディックがニーチェに同一化しつつ、意識的にこの原稿を書いたということは十分に考えられると思います。

  •  初ディック(正確には、『きょうも上天気』で一編読んだのが最初)。映画『アジャストメント』を観たことをきっかけに手に取ってみましたが、すごく読み応えがありました。とはいえ、表題作「アジャストメント(「調整班」改題)」は、映画にとってはほとんど原案程度みたいですね。

     特におもしろかったのは「ウーブ身重く横たわる」、「にせもの」、「ぶざまなオルフェウス」です。
     「ウーブ…」は高度な知性を持った宇宙豚の話。人間てどうしてこんなバカなことするんだろう…という落ち込みから一ひねりあるラストにぞくっとしました。
     「にせもの」は自分という存在や記憶のあやふやさ、それを証明することの難しさがテーマ。すごく心許ない気分になり、あとを引きます。
     「ぶざまなオルフェウス」はこの短編集唯一のコメディ。作家から霊感を奪う「逆ミューズ」になってしまう主人公が哀れだけれど、けっこうありそうな話かもしれない。

     総じて一言「好き」とは言いづらいけれど読んでいていろいろ考えるし、惹きつけられる話ばかりでした。ディックの他の作品も読んでみたい。『ブレードランナー』大好きなので、やはり『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』からかな。

     しかし早川書房って、こういう良書をきれいな装丁で出してくれるところは本当に好きだけど、映画業界に軽々しく迎合してタイトルを換えちゃったりするところは嫌いだ。「調整班」のままにしておけばいいのに。

  • 映画の原作みたいだし、読みたいなと思っている。映画はマッド・デイモンが格好良かった。もし、水と帽子がキリスト教で何らかの意味があるなら知りたい。

  • 〈私〉という存在は何か魂みたいなものがあって、生まれた時から存在するものではない。生まれてからの経験や思考を記憶として積み重ねていく、その積み上がった現在までの記憶の総体が〈私〉として認識されているだけなのだ。
    とすると、自分の記憶は本物の記憶なのかという疑問は、〈私〉の存在自体をおびやかす疑問で、本作に収録されている「にせもの」や「電気蟻」は〈にせものの記憶〉がテーマになっていて読み終わっても、う~んと考え込んでしまって答えは出ないんだけど、その考え込むという行為を誘発させる読書というのは非常に贅沢。他にも「父祖の信仰」での共産主義の描き方はなるほどと思えるものがあるし、「凍った旅」は非情な状況の中での救いみたいなものがあってその他の作品とはちょっと違うし、どの作品もすばらしい。
    マット・デイモン主演映画の原作「アジャストメント」は設定が同じで内容はまた別物っぽいので映画観た人でもまた楽しめるかも。

  • これはすごい… 「人間とアンドロイドと機械」おもしれ〜!異彩を放っとる。「消耗員」が何か好き。
    ウーブやブローベルはどことなくかわいい。コミカルで、ちょっと怖くて、面白い短編がぎゅっと詰まってお徳な本です!「アジャストメント」の原作が一番影が薄いかもなあ。他が充実しすぎてて。

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