デューン 砂漠の救世主〔新訳版〕 下 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150124052

感想・レビュー・書評

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  • 前作のレビューでは、「SFならではの世界観とガジェットを深く堪能する楽しみ方もできるが、誰が読んでもその人なりの視点で楽しめる、典型的な貴種流離譚で昔からよくあるフォーマットの一大エンターテインメント」と評価させていただきました。その後、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による素晴らしい映画化もあり、SFにあまり興味がない人にもある程度知られた作品になったのではないかな、と思います。

    ・・・が、前作の新訳版や映画から「デューン 」の世界に入った人がこれ読んだら、驚くだろうなぁ。
    前作から続く独特の世界観と社会描写を背景としたSFではあります。が、読了して「あー、SF読んだなぁ」という実感はありません。ギリシャ悲劇かシェークスピア悲劇を観たかのような、運命的な悲壮感だけが心に残ります。

    前作のラストにおいて、主人公のポール・アトレイデスはコリノ公家の独裁体制を打破し、フレメンを含む全ての人類が適切に穏やかな生を送ることができる世界を目指して、自ら皇位の座を欲したのだと、鴨は理解しています。
    しかし、前作から12年後の本作において、ポールは独裁者と化し、フレメンは全宇宙で”聖戦<ジハード>”と称する征服戦争を繰り広げ、民はポールと妹のアリアを神格化しています。現体制を打破せんと暗躍するベネ・ゲセリット、ベネ・トレイラクス、名目上の皇妃であるイルーラン。ベネ・ゲセリットの一員でもあるイルーランは、救世主クイサッツ・ハデラックであるポールの遺伝子を純粋なまま後世に引き継ぐべく、フレメンであるポールの愛妾チェイニーが彼の子を産むことを阻止しようとしますが、チェイニーが懐妊したことがわかり、惑星アラキスは風雲級を告げる事態に・・・。

    と、結構大変なストーリー展開ではあるのですが、ポール自身は何をしているかというと、悩んでいます。ただひたすら悩んで右往左往して、政治的な決断等はほとんどしていません。このポールの心理描写が物語の大半を占めていて、これがまぁ重い重い(^_^; 前作にあった戦闘シーンや生態系の描写シーン等は、ほとんどありません。しかも、予知能力を持つポールが見る予知世界が100%クリアなものではなく漠然としたイメージのみのため、この先どうなるのか皆目分からずに読者もポールと一緒にひたすら悩み続けることになります。
    そして、最終的にポールが下した決断は、フレメンの掟に従ったものだとはいえ、まるで何もかもを投げ出してしまったかのようで、フレメンもそれ以外の民も、そして読者も、これで納得するんだろうか・・・?と思いました。前作のポールの輝かしい英雄ぶりを思い起こすと、隔世の感がありますね。

    ドゥニ・ヴィルヌーヴは、この作品までを映画化したいと考えているそうですが、これ、映画にするの難しそうだなぁ(^_^;
    作品的には、次の「砂漠の子どもたち」で一応3部作が完結するのですが、そこまで新訳版をだしてほしいなぁ。ハヤカワさん、お願いします!

  • あ〜〜面白かった。
    ゆっくりゆっくり読み進んだが、
    面白すぎて読み終わるのがイヤだった。

    幻視と現実の間の苦悩に苛まれるポール、
    その結果を選ぶ事への更なる苦悩。苦しすぎる。
    ポールのラストシーンは、電車で読みながらほぼ泣いた。
    で、2回読んだ。
    ダンカン・アイダホが側にいてくれた事が、
    ポールにとってはせめてもの救いか。

    結末、私は好きだった。
    アトレイデスの為政者としての存在意義よりも、
    フレメンとしての生き方が勝る潔さに胸打たれる。

    続きを読みたいけどどうしたら読めるのか。
    続編の新訳、いつでるのかな。

  •  自分の人生をとるか、国の未来をとるかで思い悩む為政者の苦悩が見事に描かれている。ポールの側室への寵愛ぶりを見て、武田信玄を思い出した。

  • ずいぶん前に旧訳で読んだが、新訳で再読してみた。基本的に感想は前の時と変わらない。未来が見えてしまうポールが愛する人を守るためにする選択が本当に哀れ。前作で何としても殺戮の聖戦を避けねばと自分に言い聞かせてたのに、結局全宇宙でそうなり、ポールや妹アリアは神のように崇められている。解説にあるように、ポールは理想の世界を作るのに失敗したのか。それともこの先に挽回できる余地はあるのか。続きが読みたい。

  • 最後の60ページが全てでした
    ポール自身の内省的な一人称視点の語り口と対照的に見られる周りの人々の盲目な信仰、、
    あらゆる専制政治への注意喚起であろう
    あまりにも世界観の異様さに気を取られすぎた、もう一度純粋な気持ちで読みたい

  • フランク・ハーバートによるSF大河、『デューン 砂の惑星』の続編・下巻。

    予知した悲劇的な未来に抗おうとするも、その"運命"から逃れる術が見出せず苦悩するポールに、旧勢力の策謀が迫り来る。その行き着く先は―――。

    「悲劇の第二部」と呼ばれるに相応しい悲しく辛い物語。前作のようなスペクタクルな要素は無いに等しく、ひたすら為政者ポールの苦悩を描いた内容となる為、前作のような展開を期待するのはNG。

    予知した悲劇的な未来に抗えず、次々と現実のものとなっていく中で現れる、予知には無かったいくつかの出来事。これらが未来を変える"希望"となるのか・・・。次作も新訳刊行予定とのことで、映画と併せて待ち遠しい限り。

  • うーん。面白い。

  • 結末は賛否両論と言われているようだが、私は好きだ。

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