ミストクローク―霧の羽衣〈3〉永遠(とわ)の大地 (ハヤカワ文庫FT)
- 早川書房 (2011年1月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150205270
作品紹介・あらすじ
"西領"の王ヨーメンに囚われたヴィン。金属が尽き絶体絶命の彼女の前に、"破壊"神が姿を現し世界への疑念をあおる。そしてコロス軍を率いてファドレクス・シティを包囲するエレンドは決断を迫られる-霧の正体とは、コロスやカンドラ、テリス族はなんのために存在するのか、ヴィンとエレンドが導く"破壊"神と"保存"神の争いの行方は?時代を代表する傑作シリーズ、雪崩のごとく衝撃的感動を呼びおこす完結篇。
感想・レビュー・書評
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すごかった。伏線は見事に回収され、ラストへ向けた物語の奔流に飲み込まれて、気づくとミストボーンの1巻を読んでたときには想像もしてなかった場所に流れ着いてた。あーもう登場人物達が愛しくて切ないよー。
ヴィンとエレンドの関係がとても理想的で、愛情とか信頼とかについて、読みながら何度も思いを馳せた。相手を完全に理解できなくても、完全に信じることはできる。 -
うはあ・・・。
もう感嘆の溜め息しか出ない。
ここまで豊かな想像力を、ここまで自由に駆使することが出来る人がいるのか。
こんなに壮大な物語を、ここまで綺麗に美しく畳むことが出来るなんて。
風呂敷を広げ終わった中には、また別の風呂敷が入っている。
その風呂敷は、はじめの風呂敷よりも大きく広がる。
そして、二番目の風呂敷の中には3番目の風呂敷が、3番目の中には4番目が・・・。
そんな風に、どんどんと重層的に物語は広がりを増していく。
そして最後には、そのすべてが美しく畳まれ、収束する。
なんという素晴らしいファンタジィ。なんという素晴らしい物語。
最終巻である本書では、目眩くスペクタクルが展開されていく。
終わりゆく世界の中で、必死に打開策を探り続けていく登場人物たち。
その模索の中で、読者には次々と隠されていた謎の答えが提示され続ける。
そのさまは、まさに「サンダースンの雪崩」そのもの。
読み手は登場人物たちと同じように、その展開に翻弄され続け、息つく暇も無い。
サンダースンの紡ぐ物語は、明晰な論理による強力な因果によって裏打ちされている。
作中で起こるすべての現象には、明確な理由が必ず存在している。
それこそが、本シリーズが優れたハイ・ファンタジィであることの証明でもある。
常に一貫した「法則」によって制御される世界は、現実の世界とは一切変わらない。
ただ、その根底にある「基本原則」のみが、多少異なっているだけに過ぎない。
そういう意味で、本書はフィクションであり、かつ、ノンフィクションである。
法則を知った瞬間の驚きとカタルシスは、現実での「知る悦び」と何ら変わらない。
それを、ただ「本を読む」という行為によってのみ得られる、というのは、奇跡ですらある、と思う。
それは、他人の作り上げた世界を、理解していくという行為に他ならない。
「神」が作り上げた世界を、様々な推論によって少しずつ解きほぐし、明かしていく。
そうすることによって、この世界というものを理解していく。
それが、現実世界における科学であり、哲学である、と思う。
だとすれば、読書によって得られるものも、科学であり哲学であるはずだ。
なぜならその行為は、作者たる「神」によって創られた世界を、理解することであるのだから。
やっぱり読書はやめられないなあ、と思う。
ここからはネタバレで。。。
[more]
エレンドが死んだとき、まさかエレンドまで殺すのか、と思った。
ミストボーンから、本書では重要なキーマンにはクライマックスで死を迎える。
ミストボーンでは、圧倒的な存在感で物語を引っ張ってきたケルシャーが死んだ。
ヴィンの師匠として、また、盗賊団を率いる類いまれな指導者としてのケルシャーが。
彼を失うことによって、物語のスピードが損なわれることを憂慮した。
しかし、頼りないと思われていたエレンドが、その後を立派に継いだ。
新たな世界のリーダとして、ヴィンにとって最高の伴侶かつ相棒として。
そのエレンドが、本書のクライマックスで死んでしまった。
まだ、物語にはエピローグへと向かう決して少なくないページを残して。
何よりも、世界を支配する巨大な「悪」として描かれた支配王が死んだ。
その謎めいた経歴をすべて明らかにして、一人のテリス族として死んだ。
それによって、物語の進むべき道は不明瞭となってしまうのではないかと憂慮した。
けれど、その後を「深き闇」が継いだ。
支配王とは比べもののないくらい、あまりにも強大な敵として。
第二巻では、ドクソンを始めとして、盗賊団の一部の面々が死んだ。
それによって、物語の深みが減るのではないかと憂慮した
しかしその座は、新たに登場し、もしくは新たに脚光を浴びた面々で埋められることになった。
始めの登場人物たちに劣らない、素晴らしい魅力を持った面々に。
そして、セイズドの伴侶となるべきだったティンドウィルすらも死んだ。
その結果、セイズドは彼の信念を失い、その魅力をも半減させた。
それは、本書に至るまで、彼を捉える無気力さの原因となり続けた。
こうして見れば見るほど、サンダースンの鮮やかな「転回」の巧さに気付かされる。
本シリーズは、何度も代替わりを繰り返しながら進んできた。
勿論、その中心には、いつだってヴィンがいた。
そして、なぜヴィンが中心であったのか。あり続けなければいけなかったのか。
その理由も、本書内で明確に、鮮やかに語られる。
ヴィンが付け続けてきたイヤリングの意味。
ミストボーンの第一巻から、何気なく秘められてきた伏線。
銅の雲をも突き通すことの出来る、強大な「さぐり屋」としての力の源泉。
それが、<破壊>神とも絡むほどの深い理由であったこと。
ここぞという時に、ヴィンが霧を取り込んで、爆発的な力の噴出を得られる理由。
そして、それがなぜ、限定的なシーンでのみ発揮されるのか。
これらの、普通の物語であれば簡単に片付けられる謎ですらも、明確な理由が付けられる。
それも、小さなイヤリングという、たった一つの鍵によって。
そして、それを行った人物が、他ならないマーシュであるということ。
その瞬間、思わずはっと息をのみ、次の瞬間には思わず声が漏れた。
すべてが一本の線で結ばれた瞬間の、あの言葉に出来ない感覚。
それは、多少ニュアンスが違うけど、それでも快感という言葉でしか言い表せない。
エレンドが死に、ヴィンは次のステップへと歩を進める。
<均衡>を覆し、<相殺>による解決へと。
そして最後に、物語を引き継いだのがセイズドである、ということ。
すべてがあるべき形のまま推移し、収まるべき所へと綺麗に収まるラストシーン。
これほどまでに壮大で、これほどまでに複雑で、これほどまでに重層であった作品。
それを破綻なく、綺麗な収束を見せられる作品は、そうそうないと断言できる。
いやあ、本当にいい作品だった。
ラッキーに続く注目株として、サンダースンのファンになりました。
以後の作品、全部買っていくことになるでしょう。
続刊が楽しみだ。 -
予想通りの怒涛のラッシュで最後まで一気にまくる展開。破壊神の探しているものも明らかになるし、窮地の状態から一気に逆転までたどり着くし、というわけで満足の最終巻です。スプークの活躍はよかったが、託した秘密が最後にいきたわけではないのがちょっと不満といえば不満ですね。彼の成長が最後の大団円に結びつくので、まぁ、フォーカスされていたことには納得ですけど。。。
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さすがブランドン・サンダースン。緻密な設定をストーリーに生かしてかつ伏線を回収して綺麗にまとめるのはさすが。
エラントリスでも一抹の悲しさを残したエンドだったから予想はしていたけど、ラストで2人が復活していたら最高だったのに。。このあたりのセンスがブランドンらしい。 -
伏線もすっきり解決して、キレイに終わったものの、終盤がうまく自分にかみ合わず微妙な後味に。
とはいえ、数々の伏線がラストへ向けて収束していく構成は見事。
9冊もあって全部読むのは時間がかかりますが、読むだけの価値はあったと思う。