戦闘妖精・雪風〈改〉 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-27)

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150306922

作品紹介・あらすじ

南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体「ジャム」。反撃を開始した人類は、「通路」の彼方に存在する惑星フェアリイに実戦組織FAFを派遣した。戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに、孤独な戦いを続ける特殊戦の深井零。その任務は、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情かつ冷徹なものだった-。発表から20年、緻密な加筆訂正と新解説・新装幀でおくる改訂新版。

感想・レビュー・書評

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  • 人間性とは何か、意志とは何か、思考とは何か。ジャムの作った機会人間の存在と、ファティマの存在がかぶるのは私だけではあるまい。

  • 正体不明のフェアリ星生命体ジャムと、それと戦うフェアリ空軍FAF、そしてFAFの主力である大型戦闘機シルフィードのお話。ジャムは人間を識別できず、機械と闘ってると思っているという設定は面白いが、最終的に人間という有機物を識別し相当に近しいやり方でコミュニケーションを取ってくるのは違和感が強かった。ジャムはあくまで機械を標的とし、それが故に人類が予測できない致命的な攻撃を仕掛けてくるし、降伏のコミュニケーションもできないとしたほうが面白そう。またAIが人類を超克してくといったテーマも見られるが、雪風に捨てられた、とか助けられたとか判断してしまう主人公零は実はものすごく人間的。機械は人間的なロジックでは判断、思考しないことを理解しながらも雪風に人格を求めてしまっている。これは言ってしまえば自動掃除機を可愛いとペット扱いしている人と同じだ。とりあえず15年後に書かれた続編を読む。

  • ★零、あなたはいつまでもブーメラン戦士ではいられないだろう。(p.192)
    これは、おもろいです。気になりつつこれまで読んでこなかったのは食わず嫌いでした。ついいろいろ考えることになるでしょう。

    あえて類似品を探したら昔の特撮ドラマ「UFO」とか森博嗣さんの「スカイ・クロラ」シリーズとか。でもいずれも人間と同種の存在(ないしは人間)との戦いなので味はだいぶ異なります。

    個人的にSFやファンタジーには、まず魅力的な設定、それを表現するための魅力的なキャラクタと、魅力的な謎、そして多少テンプレでもいいのでそれらを動かすためのシンプルかつ豊かな物語性が必要と思ってます。
    この話では情報収集のため味方機を見殺しにしても必ず帰投するという過酷な任務に対応できる「なにかの手違いで人間になってしまった機械」ようなパイロットたちというのが設定で、その中でも戦いの意味や人間の存在について思考を続ける深井零という主人公やブッカー少佐、使命に特化された人工知能と性能を持った機体「雪風」がキャラクタで、そして敵であるジャムが謎にあたるでしょう。ストーリーはゲストキャラたちによってという感じで。

    【妖精の舞う空】帰投中シルフィードに似た機体と交戦し撃墜した零は軍法会議にかけられその間ブッカーの仕事を手伝うがあれこれ考えてしまう。

    【騎士の価値を問うな】シルフと格闘戦闘機ナイトの実戦訓練が企画されるが短距離走者と長距離走者が「あんパン食い競争」をするようなイベントに乗り気になれない零。戦争にはなぜ人間が必要か。ジャムがもし機械なのだとしたら人間などお呼びでないのかもしれないと零は思う。

    【不可知戦域】偏向的な記事を書くジャーナリストを後部座席に載せ雪風はフェアリイではない未知の場所に飛ばされたが、どうやらそこで雪風は単独でジャムと戦っていたらしい。《ジャムはまだ地球を直接侵略していない気がする》p.159

    【インディアン・サマー】空中飛行基地バンシーが味方機を襲い全滅させた。なぜか零が航空電子工学の天才、トマホーク・ジョンとともにその調査を行うことになった。

    【フェアリイ・冬】除雪隊の一介の隊員が最高位のマース勲章を叙勲したがその理由を誰も知らない。

    【全系統異常なし】ジャムの新型ミサイルは有人機では対応できない。軍は新型無人格闘戦闘機の開発とブーメラン戦隊でも最も過酷な戦闘を生き抜いてきた雪風の無人化を試みる。

    【戦闘妖精】雪風は地球を飛ぶ。ブッカーはリン・ジャクスンと出会う。

    【スーパーフェニックス】雪風は搭乗者を考慮しない戦闘を行い零たちは大きなダメージを受け、壊滅したはずの基地に救われるがどうもおかしい。ジャムは初めて人間を認知したかもしれない。そして雪風は人間と古い身体を捨てる。

    ■簡単なメモ(★は重要語)

    【一行目】いつの時代のものでもよい、世界地図を広げたとき、そのどこにも戦争、紛争、対立の示されていない地図など例外中の例外である。

    【アドミラル56】日本の航空母艦。
    【天田守少尉】FAFの除雪隊員。マース勲章を叙勲し困惑する。
    【アレヴィ博士】空軍戦闘心理研究所。
    【SAF】→ブーメラン戦隊
    【FRX】スーパーシルフを元にした小型軽量機だがコンピュータの容量はスーパーシルフに匹敵する。最終的には無人化を予定しているが当面はブーメラン戦隊のパイロットが教育役として搭乗する。
    【FAF】フェアリイ空軍。地球防衛機構の主戦力。フェアリイ側「通路」を中心にほぼ同円周上に基地を配置している。
    【エメリー中尉】エイヴァ・エメリー。オドンネル大尉の実質的な個人秘書で恋人でもあるようだ。
    【オドンネル大尉】ヒュー・オドンネル。ファーンⅡのテストパイロット。陽気で気さくなタイプ。個人秘書のエイヴァ・エメリーは恋人でフライト前の会話で死亡フラグを立ててしまう。
    【カール・グノー大佐】システム軍団・技術開発センター所属。遠隔操縦機を開発した。《ジャムとの戦いに人間など必要ない。機械のほうが優秀だ》p.76。
    【機械】結局のところ人間もどんな生物もメカではあるわけで、その境界は判別しにくいしできないのかもしれません。
    【基地】六つある。シルヴァン。ブラウニイ。トロル。サイレーン。ヴァルキア。フェアリイ。全軍の総合参謀本部はフェアリイ基地にあり規模も最も大きい。
    【儀礼兵】戦死者の顔をしたアンドロイドで編成された儀式用の人形たち。
    【凍った眼】空間受動レーダー。ジャムの戦闘機がさまざまな手段で透明化するのに対応した。
    【権藤大尉】天田守少尉の上官。
    【クーリィ准将】特殊戦の副司令。鬼のような婆さんだとか。
    【ジェイムズ・ブッカー少佐】→ブッカー少佐
    【シェーナー大将】戦術空軍のトップで総司令官。
    【ジャム★】異星体。三十年前「通路」を通り先制攻撃を仕掛けてきた。どういう存在なのかとか侵攻の目的とか何もわかっていない。本気を出してはいないようにも思われる。なんとなく、地球側をフェアリイに誘い込み地球の兵器=戦闘用コンピュータを進化させようとしているようにも見える。あるいは人類の非人間化が目的のようにも見える。あるいは人間など見ていないように見える。《ジャムは人間の本質を消し飛ばしてしまうと。》p.303
    【シルフィード】FAFの戦闘機。双発。高価で数が少ないが現在量産型を開発中。イメージ的には実在の戦闘機F-15 イーグルに近いのかと。エンジンはフェニックス。
    【スーパーシルフ★】シルフィードのうち十三機は戦術偵察用に改造・運用されており「スーパーシルフ」と呼ばれることもある。電子頭脳を強化された空飛ぶコンピュータというべきものであってフェアリイ基地地下深くに設置されている戦略コンピュータや戦術コンピュータとダイレクトに繋がっておりスーパーコンピュータの端末とも言えそうだ。すべて特殊戦第五飛行戦隊に配属されている。他の部隊に一~二機ついてゆき戦闘情報を収集する。その任務はたとえ味方機が全滅したとしても戦闘には直接参加せず情報を収集し必ず帰投すること。そのための強力な火器を持つ。パイロットには鉄の意志が必要。後部座席に電子戦オペレータが搭乗する。エンジンは最終的にはフェニックス・マークⅪ。
    【戦い】《戦いに理屈はいらない、零は思った。他人にはなぜそれがわからないのだろう。》p.119
    【TAB-14】壊滅したはずの基地。
    【チュー少尉】ムンク大尉の相棒。
    【通路】異星体ジャムの地球侵略用通路。半径五百メートル。紡錘形をしており最大直径三キロ、高さ十キロ。南極点から千キロ、西経およそ百七十度、ロス氷棚の一点にある。三十年前のジャムの先制攻撃によって人類は初めてその存在を知った。
    【トマホーク・ジョン】航空電子工学(アビオニクス)の天才。バンシーの異変を零とともに調査することになった。零は会った瞬間彼を戦士として認め握手をした。インディアン。心臓はプルトニウム238の熱で動いているので日本には入国できなかった。《そう、祖父は口ぐせのように言ってた、みんなで一緒に食べよう、一人だけ腹をいっぱいにするやつは仲間じゃないってね。》p.182。《零、あなたはいつまでもブーメラン戦士ではいられないだろう。氷のハートはいつか融ける》p.192。《ぼくは・・・・・・人間だよな》p.196
    【ナイト】カール・グノー大佐のチームが開発した小型無人の格闘戦闘機。遠隔操縦する。格闘戦=旋回性能はシルフィードを上回る。「マクロス」の「ゴースト」に近いイメージかと。
    【南雲】アドミラル56の館長。
    【人間】《人間に仕掛けられた戦争だからな。すべてを機械に代理させるわけにはいかんだろう》p.97
    【バーガディシュ少尉】零のフライトオフィサ。後部座席に乗る相棒。頼りになるが地上では素っ気なく生きている死体のようだと零は思うが自分も同じだということも意識はしている。
    【パイロット】スーパーシルフのパイロットは「なにかの手違いで人間になってしまった機械」という人格の者が選ばれている。当然他の部隊のパイロットからは嫌われており「死神」と呼ばれたりもする。
    【バンシー】空中飛行基地。シルフィードの部隊を搭載し原子力でとぶ。
    【ヒカラチア】プーメラン戦隊の女性オペレータ。
    【ファーン】単座の格闘戦闘機。
    【ファーンⅡ】ファーンを高性能にし無人化を念頭に開発中。
    【プーメラン戦隊★】「SAF」。スーパーシルフ全機が配備される特殊戦第五飛行戦隊のこと。通称「ブーメラン戦隊」。形の上では一部隊だが独立した司令部を持ち軍団レベルの運用がなされる。三番機が雪風、六番機はミンクス。
    【フェアリイ★】「通路」が繋がっていた先の惑星。ジャムの母星かどうかは不明。全天のどこにあるのかなどいっさい不明だが現在の主戦場。ジャムによって戦場として選ばれ地球側がここに呼び込まれたような雰囲気もある。太陽は連星。原生恐竜とかいるらしい。もしかしたらジャムはこういった「戦場」をいくつも持っているのかもしれない。
    【フェアリイ基地】惑星フェアリイにある地球の基地のうち最大で中心。地下大洞窟の底にビルが林立する都市。
    【深井零】→零
    【ブッカー少佐★】ジェイムズ・ブッカー。零の唯一の友人。顔に切り傷があり凄味がある。零よりも日本通で雪風の機体に書かれた「雪風」という文字は少佐の手になる。元はパイロット。プーメラン作りの趣味がある。《ジェイムズ・ブッカー少佐は、一言でいうならば、恐れを知っている男だった。》p.57
    【ブラッディ・ロード】フェアリイの太陽は連星で一方からもう一方に向けて吹き出すガスが赤く、ブラッディ・ロードど呼ばれている。
    【フリップナイト・システム】→ナイト
    【マース勲章】最高位の勲章。
    【マーニー】TAB-14の看護師。
    【ムンク大尉】シルフィードのパイロット。
    【ヤザワ少佐】TAB-14所属。
    【雪風★】零の愛機のパーソナルネーム。スーパーシルフ。部隊の三番機。最後の方では地球の空も飛べるエンジン、フェニックスマークⅪを搭載。次第に人間を必要としない兵器に近づいていく。《片想いだ。雪風はもはや独立した意識体になりつつある。いつかふられるぞ》p.272。《おれが言いたいのは、零、いつの日か、雪風がおまえの、人間の、敵になるかもしれないということだ》p.273
    【ランダー】アンディ・ランダー。アメリカのフリーコラムニスト、軍事評論家、ロビイスト、兼作家。偏向的な文章を書く。「宇宙大作戦」のカーク船長っぽいかも。
    【理性】野生動物はきわめて理性的な存在だと思います。生と死の狭間では理性的でないと生存を続けられない。ブーメラン戦隊のパイロットたちもまた理性的。で、理性的なことは一般人類にとっては非人間的なのでしょう。だから疎ましがられる。これもまた動物=人間そのものではあるのですが。まあ、ブーメラン戦隊の連中はそれすら理性的にスルーするようですが。
    【リン・ジャクスン】対ジャム戦史を著した。『ジ・インベーダー』というのがそれかもしれない。かなり皮肉な見方をしているようだ。《異星体ジャムも結局のところ、一隣国の仲間にすぎなかったのだといえる。》p.138
    【零★】深井零。ブーメラン戦隊所属で三番機雪風のパイロット。少尉→中尉。《地球は苦い思い出を溜めた大きな水球でしかない》p.36。《おれは性能の悪いやつは嫌いだ。人間も機械もだ。》p.38。《雪風を狙うものはすべて敵だ。おれは雪風以外は信じない。》p.171。ジェイムズ・ブッカー少佐が戦争と人間性についてや、戦争が人間のものであるかどうかを考えるが、零は自分が人間的であるのか非人間的であるのかよりも雪風にとって自分が必要なパーツ(できれば対等なパートナー)であるかどうかを重視しているように見える。
    【ローラン大佐】フェアリイ基地広報部。

    • 青格子さん
       (改)も買った筈なのに読んでない事に、投稿の文章を読んで、気づきました。ありがとうございます。読まなねば!
       (改)も買った筈なのに読んでない事に、投稿の文章を読んで、気づきました。ありがとうございます。読まなねば!
      2023/08/08
    • isutabiさん
      あ、なんらかの形で他の人の役に立てたら嬉しいんやなあと知りました、
      あ、なんらかの形で他の人の役に立てたら嬉しいんやなあと知りました、
      2023/08/09
    • 青格子さん
      読書で繋がるって、嬉しいですよね。
      読書で繋がるって、嬉しいですよね。
      2023/08/09
  • ○雪風を一心に愛する零と、それを見守る親友ブッカーとの絆、そのどちらも詳しい背景は語られないのがめちゃくちゃ渋くて良かった。
    ○徹底して雪風に人間性が描かれないことで、他の面では非人間的な零の唯一の人間味が切なく引き立つ。
    ○体言止めの多い文章が硬質で格好良く、操縦描写へのこだわりが凄い。車の運転さえできない自分でも、読んでると石油臭い匂いがしてくる気がする。
    △戦闘シーンの動きや操縦の説明が、詳しい人なら理解できて更に楽しそうなのに、自分ではふんわりした想像しかできなくて残念。

  • さて。ここに一冊の本がある。タイトルは『戦闘妖精・雪風<改>』。一切のヒントがない状態で、いったいどのような内容を想像するだろう。

    まず「戦闘」と「妖精」という言葉が目を引く。「美しい親切な女性」という妖精の説明からは、戦闘という言葉は連想できない。かといって妖精と戦闘が全く相容れないものだとは言い切れない。『ロマンシング・サガ3』に登場する妖精というキャラクターは、主人公達の仲間に加わり戦闘に参加する。とすると、戦闘妖精というのは戦える妖精のことなのだろうか。雪風というのがその妖精の名前だとすると、水だか風だかの属性を持った(吹雪系の魔法が使える)妖精というイメージが湧いてくる。

    さらに『戦闘妖精・雪風』の表紙を飾るのがグレーの戦闘機だという情報が与えられたとしよう。モノトーンな戦闘機。妖精の影も形もありはしない。ということはこの本は戦闘機の話であって、妖精は関係ないのだろうか。妖精の話なのか戦闘機の話なのか、判断に困るところである。

    最初の数ページを読んでようやく、戦闘妖精雪風というのが戦術用の人工頭脳を積んだ高性能戦闘機のことらしいと分かって来た。しかしこの人工頭脳、無駄なおしゃべりは一切しない。というか任務の遂行に関わること以外の反応をしない。戦闘マシーンに搭載された人工知能と言うと、『フルメタルパニック』のアルや、『E.G.コンバット』のGARP、『スカーレット・ウィザード』のダイアナ・イレブンスなどを思い浮かべてしまい、雪風の異質さに少し戸惑いを覚えた。(ラノベばっかじゃん。)雪風に比べるとHAL9000がとてつもなくフレンドリーに見えてくる。


    指揮官のブッカー少佐が行進をする人形を作ったとき、彼が雪風の人工頭脳のインターフェイスを作るものだと信じて疑わなかった。こう、ホログラムかなんかで妖精が出て来てパイロットをナビゲートする感じで。戦闘妖精雪風がアニメ化されているって話は聞いていたから、無意識に萌要素を求めてしまっていたのかもしれない。この予想は最後二重の意味で裏切られることになった。

    萌えなんていう甘っちょろいものはない。ファンタジーのような夢も救いもない。親切な美女もいない。

    ひたすら殺伐とした、正体不明の敵との戦争。人間の理解を超えた無機質な機械頭脳。積み重なる犠牲。戦いの意味を見失いそうになる人類。

    ハードだ。ハードすぎる。先ほどラノベを引き合いに出してしまったのが申し訳なくなるほどハード。「戦闘妖精」っていうタイトルはミスリーディングではなかろうか。といいつつ、それに代わるぴったりのタイトルは思いつかないわけだが。むしろ読後、妖精という言葉の認識がガラリと変わってしまうので「戦闘妖精」にすとんと落ち着く。


    妖精という軟派(?)な語感に惑わされず、騙されたと思って読んでみて欲しい。

  • 再読。年齢が近づくと零の社会不適合者っぷりがよく分かる。同時に零の生きづらさ、雪風への執着についても、以前より理解できるような気がした。無機質な戦闘シーンが好き。

  • <発>
    シリーズ最新刊『アグレッサーズ』の紹介が例によって「本の雑誌 新刊めったくたガイド」 に載っていた と思うw。調べるとこの『戦闘妖精・雪風(改)』がどうやら一番のっけのやつみたい。かなりの人気シリーズの様子。すかさず手に入れて読む。いやはや僕にとってSFは読む動機付けさえ見つければなんでも面白いんだなぁ~ という事を改めて認識する。

    しかし主役たる” 雪風 ” は,味方を見殺しにしても帰投することを第一目的とした言わば戦闘しない偵察機 ってのが売りな筈なのに,物語ではのっけから敵と戦ってばかりだな。ま,いっか。異星人との戦争SFなんだから戦うしかストーリーが無い!って途中から開き直ったんだろうなぁw。あ,久々の分かり易いニッポンのSF作品だったので,興奮して少しネタバレ感想してもうたかな。やれやれ。すまぬ。

    ちょっと気になる事がある。主人公の「零」の読み。これ一体なんて読むのが正解なんだ。大抵の小説作品は人物の名前について最初に登場した時にその読み仮名が振ってあるのだが、本作にはそれは無い。もっと云うとどんな漢字にも読み仮名はふられていない。
    本作「零」以外のほとんどの登場人物名はみんなカタカナ(主に欧米人)なので「零」以外の人名にフリガナは不要なのだけれど それにしても一つも無い。
    いやあった "RDY" というアルファベット三文字省略語には ”レディ” というフリガナをふっている。おそらく作者のオリジナルで ”準備” を意味させる短縮語だろうけど、どうしてそこだけ読み仮名なのだろう。著者オリジナル だからか?だったら人の名前は作者の一番のオリジナルだろうがっ!)

    漢字に一切のフリガナが無い件に鑑みて。この雪風シリーズの古くからのファンの読者諸兄様は「零」をなんとお読みですか。僕は普通に「レイ」ですが別に「ゼロ」だって「ミオ」だってかまわない筈。(知らなかったが今回調べて「零」は「あま、しずく」とも読めることを知った。雑知識が増えて良かった。でない とこの件から得るものは 作者と出版社の手抜きに気づいた事 以外には無いところだったw)

    さらに僕りょうけんの辛らつ感想は続く。「戦闘妖精」とはいったいなんぞや。何か物語の中身と関係あるんかい。単純にそれらしき雰囲気(ファンタジーSFっぽく見せかける)を醸し出すためだけにつけた題名だろ。そうとしか思えん。思えんがいまさらどうでも良い。そんな変な雰囲気偽装などしなくとも本作はそこそこ面白いんだから。

    それにしても巻末に二つもある 解説 はどっちもつまらん。ページの無駄でしかない。せっかくの面白いSF小説作品なんだからこんな駄解説は要らない。

  • うーむ、なかなかに面白い。

    異星人と戦うAIを搭載した戦闘機雪風。
    操るのは空軍エリートパイロットの深井少尉。

    戦いに生き残り続け、学習を進めていったAIは、やがて人間の操縦者を必要としなくなる。
    戦闘妖精・雪風 爆誕。

  • 愛蔵版購入したので処分。
    なお、文庫版の以下の作者のコメントや解説は愛蔵版には収録されていない。
    雪風(改)によせて 神林長平
    人間的/非人間的 石堂藍
    ジャムはそこにいる 冬樹蛉

    神林長平が上述のコメントでいう「付け加えられる新たな物語に対応できるようにするための、ごく小さな修正」ってどこなんでしょう?

  • 第4巻の前に再読。体言止めを多用する硬質な文体が心地良い。零が人間に無関心な割に少佐とは友人関係を築いているのがどうも腑に落ちない。「不可知戦域」(3話)から徐々に異様な展開が出てきてゾクゾクする。「フェアリィ・冬」(5話)と「スーパーフェニックス」(最終話)には背筋が寒くなった。コンピュータが発達した今読むと、戦闘機をパイロットなしで飛ばせるならその方が良い気もするが。ジャムの狙いが何なのか気になる。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

神林長平の作品

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