<トリイ・へイデン文庫>タイガーと呼ばれた子--愛に飢えたある少女の物語 (ハヤカワ文庫 HB)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (511ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151102028

作品紹介・あらすじ

7年ぶりに再会したシーラは、オレンジ色の髪をした14歳のパンク少女だった。驚いたことに、かつての楽しかった日々も二人の間の信頼関係もまったく憶えていないという。彼女が少しでも打ち解けてくれるよう、トリイは自分がセラピストを務めるクリニックで夏休みの間、手伝いをしてくれないかと誘う。やがてシーラの口から、幼い頃から受けていた性的虐待の事実が明るみに…。真の癒しを見出すまでのシーラとトリイの葛藤を描く。

感想・レビュー・書評

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  • この本は続編で、シーラのその後がどうしても気になって読む事に。思春期になったシーラの事が書かれており、幼い頃の虐待、母親に捨てられた思いと戦っている思春期のシーラ。そのシーラを支えるトリイ。2人の不器用さがなんとも言えない作品。

    うーん。子供の頃の記憶って、誰でも幾つかはやっぱ残っているもんで。それが一生消えないって辛いよね。

  •  再読。著者本人もそう思っていたようだし編集者も書かない方が良いと結論を出していた『シーラという子』(1980)の後日譚で、7年後思春期の13歳になっていたシーラとの再会を描いたのが本書『タイガーと呼ばれた子』(1995)だ。時期的には『シーラという子』の出版から15年後ノンフィクションシリーズ8作中の6作目にあたる。
     この作品の中で出版準備中の『シーラという子』をシーラ本人に読ませていることから1980年より少し前の出来事であったことが推察される。さらにこの時シーラが14歳の誕生日を迎えていることから、今現在40代後半もしかすると自分とさほど歳が違わないかも知れないということに気づいて、なんだか嬉しくなってしまった。果して今ごろ彼女はどうしているのだろうか。とは言えそれは本書を最後まで読めば大体予想はできるのだが。
     後日譚を書かない方が良いという判断は、たぶん他の作品のように情緒障害児たちが主役になるのではなく、すでに情緒障害から立ち直りごく普通の思春期の13歳になっていた少女と著者本人とのとても私的な関係性を描くという意味でシリーズのテーマに則していなかったからではないかと思われる。またこの本の内容はむしろ『シーラという子』のドラマティックさに比べて極めてリアルに地味な思い出話にならざるをえず、読者にとって期待はずれになるという危惧があったためのようである。
     にもかかわらず完成したこの本を最後まで読むと『シーラという子』とは切っても切り離せない絶対に必要な完結編だと思える。これがあってこそシーラの幼少期を描いた『シーラという子』の本当の魅力が伝わってくると言える。そしてまたこの再会の後、またしてもシーラに関する数々な問題に東奔西走させられてしまうトリイ・ヘイデンだったが、彼女はすでにシーラの教師ではなく、シーラもまた彼女の生徒ではなかった。
     その答えが本書の最後の会話によって明らかになる。まあたぶん、著者はこの極めて地味で温かな結末を読者が気に入るだろうと予想したから当初の考えを置いて本にすることを決めたのだろうと思う。
     
    『シーラという子』で学年が変わり別れて行った後もシーラや他の生徒たちの動向を気にかけていた著者は、突然シーラの行方だけ見失ってしまった。再び収監された父親の影響だったということまでは分かったが、その後数年に渡ってシーラの所在がつかめず、ようやく再会できた時はすでに7年が経過していた。トリイとの思い出や教室での日々をほとんど思い出せないというシーラの言葉にとまどいつつ、再び彼女との関係を修復しようと躍起になる著者だったが、またしてもシーラによって引き起こされた事件の後、シーラと父親は住んでいた家からこつ然と姿を消してしまった……

  • 母に捨てられ、薬中・アル中の父親に育てられたシーラ。周りは敵だけだと認識していた7歳の少女にこの世には愛があるということを教えたトリィ。僅か5ヶ月間だった物語の7年後からのその後の話。

    14歳になっていたシーラは本質的には7歳の頃と同じだった。母に捨てられたトラウマを抱え、性的虐待を受けた傷を深く残したままだった。トリィはシーラと正面から向き合う事で、その傷を一つずつ癒し、その傷の重みを軽くした。


    上昇志向の物語だった前作に比べ、本作は中盤までシーラの暗澹たる行動が書き連なれていたので若干読むのを後悔していた。しかし、最後にはシーラが過去の過酷な想いから解放された様子が伝わり、良かった。

    ただの先生であるトリィが時には自分のプライベートを犠牲にまでしてシーラを支えたのは凄いと思った。1200kmの距離を迎えに行けるだろうか?自分無理っす。

    幼少期の子供は溢れんばかりの愛で育てましょう。

  •  これは著者自らの体験したことを書いたノンフィクションなのだけれど。
     だけれど、ノンフィクションだからと言って真実ではなく、書き記された時点で一つの物語なのだな、と思った。
     とても強い少女と、優しく見守る先生が出てくる。

     が、少女は先生に「あなたは本に書かれてるみたいに優しい人じゃない。いつもイライラしている」という。
     どきりとした。
     自分のことは(意図的ではなくとも)その時強く感じたことを書き記すし、信じたくないことは書かないだろう。ましてや相手のことなどわかる筈もない。

     物語として強いなぁと思った。
     面白いといっていいのかわからないけど、面白かった。
     前作ともども一読して損は無し、と思う。

  • 実録は永遠に後日談が存在しない。幸せだとよいすなぁ。

  • 「シーラという子」の後日談。
    成長したシーラがトリイと再び出会って話すことは、「シーラという子」のアナザーストーリー。この2冊は合わせて読んだ方が良いと思います。

  • 「シーラという子」の続編。前作を読んだ時、そんな短期間で人が変わるか!と思ったが、やっぱり現実は難しい。でも、時間とともに、大人になるとともに、情緒障害を抱えた子も折り合いをつけていくものなのね、と感じた。シーラが、大学に行かなくてほっとした。それだと、ちょっとできすぎだから。

  • 学校の先生もセラピストも限られた時間の中でしか愛せない。無条件の愛情を示せるのは母親しかいないし、それがどれ程子供にとって重要か改めて思い知らされた。
    長い年月はかかったけど、最期にシーラが母親に宛てた手紙にいたって本当によかったと思う。
    アクスラインのデブスの話のときも思ったけど、こうやって救われる子供って一体何割くらいなのかな?
    シーラという子を早く読みたい。

  • シーラのその後が気になって読んだ。最後には、頑張っている様子が分かったけど辛く苦しい環境の中生きなければいけなかったのかと思うと悲しくなった。

    ただこれは、物語でないにしても長すぎるf^_^;)

  • シーラと呼ばれた子の続編。
    久しぶりに会ったシーラは、過ごしてきた五ヶ月間の事を覚えてないという。
    新しく知った学校での出来事、終わったあとに残ったシーラの日常。悲しくもあるけれど、またゆっくりと成長している姿がサクサク読めた。

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