- Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200113
作品紹介・あらすじ
2019年最年長のブッカー賞受賞者。
侍女のオブフレッドは、司令官の子供を産むために支給された道具にすぎなかった。彼女は監視と処刑の恐怖に怯えながらも、禁じられた読み書きや化粧など、女性らしい習慣を捨てきれない。反体制派や再会した親友の存在に勇気づけられ、かつて生き別れた娘に会うため順従を装いながら恋人とともに逃亡の機会をうかがうが…男性優位の近未来社会で虐げられ生と自由を求めてもがく女性を描いた、カナダ総督文学賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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大分前に新聞の書評などで、同じ著者の「誓願」がかなり話題となっていたが、「侍女の物語」の続編だということで、こちらを先に読まないと!と早速図書館に予約したのだが、我が自治体は370万人の人口に対して2冊しかこの本の蔵書がなく…ほぼ一年近く待ったのではないだろうか(だったら買えよ!…いやいや、待つのも一つの楽しみなので…)。
待ちに待った本は1990年出版の新潮社の単行本(ブクログには載ってない)で、紙のフチも茶に変色、文字は小さく2段組。
気をつけて捲らないと、ピリッと破けそうなほど年季が入っていた。
そんな本を前にちょっと読む気が失せかけたのだが、読み始めると、あっという間に物語に絡め取られる。
カナダで出版されたのは、確か1985年。
あとがきでは、ジョージ・オーウェルの「1984」に並ぶ作品と書かれている(「1984」をまだ読んでいないのだが、ディストピア小説なのだろう)。
40年近く前の作品とは思えない。
舞台はカルト教団のようなキリスト教のある宗派による独裁政権下のアメリカ。
この混乱と粛正、狂気は今世に溢れるニュースの断片にも似て、背筋がスーッと寒くなる。
最後の締め方もまた、面白いのだが、主人公の「オブフレッド」…フレッド氏の侍女(公的妾といえる)という意味で、本名は名乗れない…は一体どうなったのだろうか。
彼女の物語の続きではないかもしれないが、「誓願」も早速予約してみよう(こちらは、かなり蔵書数があるようだし…)。
追記、グラフィック版も出て話題になっているが、こちらも我が自治体の蔵書は2冊。
早速予約したが、予約数45。順当に行っても一年近く待つな〜(買えよ!)
2021.11.24
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2023.1.2 Eテレ「100分deフェミニズム」で取り上げられていた。「侍女の物語」は映画公開時、音楽を坂本龍一が担当したというので題名は知っていたが、内容は知らなかった。今回番組で見てとてもおもしろそう、と思い読んでみた。
「侍女」の住むギレアデ国は、生殖がコントロールされている国で「侍女」は「司令官」の子供を産むために選別された身分の女で、”足がついている子宮”だ、と主人公の侍女はいう。
そして司令官の妻たちは老齢で自身では子は産めないのだった。さらに驚愕的な場面、”生殖”のための”儀式”には、妻の上に「侍女」が寝そべり、そこで「司令官」が生殖行為をするのだ。あくまでも妻の子、というわけなのだ。番組では漫画と朗読で示された。その漫画の顔が感情の無い顔でその世界の驚愕さがよく表れていた。本を読むと、さらにその場面では司令官の家の女中や運転手なども周りに待機しているのだ。・・うーん、マリー・アントアネットが出産する時は宮中でベッドの周りに貴族が集まったというが、生殖時はどうだったのか・・ 大奥では襖の外におつきの女中が侍っていたか・・
しかし、ちょっと似たような話を思い出した。弁護士の渥美雅子さんの著書を読んだ時、名家で子供がなかなか生まれないと、村から女性に来てもらい敷地に住まわせ、旦那はその敷地に通い、後継ぎを産ませた、というのだ。そして子供は正妻が後継ぎとして育てる。まあ江戸時代のお殿様もそうではある。が、渥美さんの著書は明治から昭和かの話。
アトウッドはギレアデ国を描き、女性と出産、極端に統制された国家、というのを痛烈に批判している。ギレアデ国はアメリカの東海岸にあるようで、ほんの少し前までは”普通”の生活があり、クーデターらしきものが起こり統制社会になった。「司令官」「妻」、「侍女」(司令官の子を産むための女性)、「小母」(侍女の集合所で侍女の世話をする)、「便利妻」(より貧しい者の妻で子作りと家事をする)「天使」(前線にいる兵士)、「保護者」 「女中」(司令官の家にいる家事をする女性)、「不完全女性」(ギレアデ国の規範に逸脱した女性らしい)は「コロニー」で暮らす。 「出産車」に近隣住民も乗って、出産所に行き出産する。女性の置かれた状況を見ると、アフガニスタンの現在、タリバンの社会ってこれに近いのじゃないか、なんてふと思った。現在もある、っていうことだし、一歩まちがえばギレアデ国は出現する。
本では最後の最後に、落ちの無い?落ちがついている。この世界は果たしてバラ色なのか? そうは見えない。
2023.1.2 100分deフェミニズム
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/2023special/
1985発表 (映画化1990)
2001.10.31発行(早川epi文庫、でも借りた本はブクログの表紙とは違った) 図書館
(単行本は1990早川書房) -
ある権力を維持するには、立場の弱い者から順番に「閉じ込めて、監視し、統制」していくのが常道だ。
弱い立場にさせられるのが女性の女性性、幼年男女、人種差別される男女、職業の貴賎、等々。その女性がターゲットになったデストピアの世界を描いたのが、この小説の主題。
読んでいて、むかむか吐き気が止まらなかった。
これは未来の世界ではないからと気が付く、今まさに現実だからだ。
フェミニスト的な立場としてだけではなく。
そして、唯々諾々としている自分がいるからだ。
書かれたのが1985年、今2023年。 -
me too運動と相俟って新たにドラマ化され、
再度脚光を浴びたと思しい、
1985年発表(原著)の、
当時から見た近未来ディストピアSF長編小説。
性の乱れや人口減を憂えたキリスト教原理主義勢力が
アメリカ大統領を暗殺し、政権を掌握、
女性の仕事と財産を奪い(銀行預金は父または夫の名義に変更)、
出産可能な女性を教育施設に送って「侍女」に仕立て上げ、
権力者の家に住まわせて、その子供を産むように仕向ける。
「侍女」は書物を読むことも書きものも禁じられ、
情報は遮断されている。
物語の語り手は、夫とも幼い娘とも引き離され、
本来の名前を奪われて「フレッドに仕える女」の意味で
「オブフレッド(of Fred)」と呼ばれている。
彼女は生き延びるため、
従順な「侍女」を装って自らを環境に順応させようとするが、
夜、一人きりになると夫や娘や母や友人に想いを馳せ、
かつての生活を回想する。
この、読んでいて気分が悪くなるような小説が
現代において再評価されることの意味を考えたい。
執筆当時に著者が憂慮した事態は過去の問題ではなく、
これから先の世界にぽっかり口を開けて
待ち構えているかもしれない。
だが、「生む機械」だとか「生産性」があるだのないだの、
政治家などに言われる筋合いはないのだ。
一連の事件をわかりやすく整理した最終章
「歴史的背景に関する注釈」が、
あまりにクールでショッキング(笑)。
現在の我々の営みも、未来人に回顧されれば、
ちっぽけで他愛ない話として片付けられるのだろうか……
と考えると、二重に怖くなる作品である。 -
図書館には1990年版のがあり そちらを読みましたが
二段編成の書籍だったし 最初は 主人公の時間が 前後したりして 読みきれないかと思いましたが 途中から どうなちゃうのだろうかと 引き込まれていきました。
近未来というのでしょうか?
普通の暮らしをしていた主人公なのに
クーデターで 政権が変わったアメリカ。
脱出を試みたが 捕まり
娘と夫と離れ離れになってしまった。
過去の思い出と現在が交差して 書かれているので
ちょっと頭を使いながら読みました。
赤い服を着なくてはならない 主人公の立場は 子供を産む 侍女。
そして 司令官(種)と その妻。
妻は もう産めない身体だから 出産可能な 侍女を持つ。
新しい政権は 少子化対策として
偉い人(司令官とか) とかの 子供を増やすべく
妾とかではなく 妻公認の 子宮=侍女を それぞれ持つ。
そして 必死になって 性行為をするけど
司令官はもうお年。
だけど 子供を産ませたい妻。
召使の男性と 性行為をして 産ませようとする。
主人公は 心が壊れそうになるけど
生き別れた 娘に会いたい一心で 生きている。
ラストは ハッピーエンドか バッドエンドか わからないまま
終わってしまった。
なんか 女性を産む機械のような扱いをする
この物語の 未来は 今の 日本のように 思えてしまいましたね。
この本を調べたら 映画?ドラマ化されていたようですね。
映像で見た方がわかりやすいけど 怖いですね~~~
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これは素晴らしい。重厚な読後感。すでに評される通り『1984年』を彷彿とさせるディストピア小説の金字塔。本物の絶望を味わいたければこの物語を読むべきだ。
キリスト教原理主義者によるクーデターから生まれた独裁神政国家ギリアド(ギレアデ)の物語を、荒唐無稽なフィクションと笑い飛ばせないのがこの世界の悲しさ。まさについ最近、アフガニスタンで似たようなことが現実に起こったばかりだ。
これ以上新たなギリアドが生まれないことを祈ることしかできない。
唯一の救いは、ギリアドが200年と保たず滅びていることだ。後の歴史学者に発見された手記として『侍女の物語』はメタ的にその社会背景が説明されている。その時代の世界はこのギリアドよりもマシなものだと思いたい。
英語読めるから、原書で読んでみたい。次の『誓願』も。
Huluのドラマも観なきゃな。