- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300110
感想・レビュー・書評
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The ABC Murders(1936年、英)。
ポアロ・シリーズ。ミッシング・リンク・テーマ(失われた環)の名作。無差別連続殺人ものにおける黄金パターンの1つを確立した作品。
ポアロ宛ての挑戦状――差出人の名は「ABC」。その予告どおり、Aで始まる地名の町でAの頭文字の老婆が、Bの町でBの頭文字の娘が、Cの町でCの頭文字の紳士が、次々と殺されてゆく…。
発想の原点はチェスタトンの「折れた剣」に遡るが、日常社会の枠組みでこのトリックを完成させたのはクリスティが最初で、以降これをABCパターンと呼ぶようになったらしい。解決が合理的なので、読後のスッキリ感を求める人にも安心して薦められそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
さすがアガサクリスティー。古さを感じさせない見事な内容。ポアロの名推理が最高でした。
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ABCを名乗る人物からポアロに宛てられた挑戦状。
予告通り,Aから始まる土地で,Aの頭文字の人物が殺された。
現場に残されたABC鉄道案内。
その後もB,C…と事件が続く。
何も共通点もない被害者たち。
ポアロは巧みに消された”つながり”を追う。
「ミッシング・リンク」の完成形として名高い作品。
「『ABC殺人事件』にはよけいな飾りはない——
そこにはある殺人のためのみごとな着想があり,
最後の数ページで,事件についてポアロが説明するとき,
読者は完全に満足するだろう」(P.12)
クリスティの孫がこれだけ煽る本作。
面白くないはずがない。 -
ポアロシリーズ最初から読みたいと思った
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イギリスの推理小説家アガサ・クリスティー(1890-1976)の代表作のひとつ、1935年。
エルキュール・ポアロが登場する作品を読んだのは初めて。謎の手紙とともにひとつひとつ殺人が起こっていく不気味な前半部分と、真犯人とトリックの解明へ向けてスピーディに展開していく後半部分とが対照的で、読んでいて飽きが来なかった。三人称の語りが挿入される変則的な構成も、気味の悪さを醸し出す効果があって面白かったと思う。軸となるトリックはのちに「ABCパターン」と呼ばれるようになるほど有名なもので、予め概略は知ってしまってはいたのだが、それでも真犯人は最後まで分からなかったし、一応は楽しんで読むことができた。
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作中に「没個人的な殺人」という言葉が登場する。それは、個人的な怨恨でもなければ金銭目的や愛憎のもつれでもない、なにか"純粋に"狂気的な或いは形而上学的な犯罪動機を指しているのかと思い、期待しながら読んでいた。しかし、結局のところ動機はごくありふれた"人間的な"ものであった。さらに、推理の場面で人格だとか気質だとかコンプレックスだとかの心理学的・精神医学的な俗流通念が説明要因としてたびたび持ち出されている。こうした点が、「ABCパターン」というトリックの奇抜さとは裏腹に、なんとも安っぽく感じられた。
人間主義的でも心理主義的でもない"純粋な"犯罪小説というものを読んでみたいが、それは不可能なのか。人間だけが罪を犯し得るとするならば、確かに不可能なのかもしれない。仮にそのようなものが可能であるとするならば、それは推理小説ではなく、形式的な論理パズルになってしまうのかもしれないし、異界の非人間を持ち出すならSFや幻想小説の類になってしまうのかもしれない、或いは哲学小説じみてくるのか。いずれにせよ無いもの強請りであったか。
物語の前半部分でポアロが犯人像のプロファイリングを行っており、そこで描き出される人間類型が随分と現代的で驚いたが、プロファイリングのような手法で全てが明かされてしまうのではなんだか身も蓋もない気がする。そうした統計学的手法などでは捕捉しきれない、非合理的で矛盾しているがゆえに社会からの欺瞞的・暴力的な意味付与を断固峻拒する、そんな自由の犯罪というものを読んでみたい。
とはいえ、ポアロの次の指摘は説得的である。
「話をするというのは、・・・、人間に思考させないための発明なのです。それはまた、人間が隠そうとすることを発見するための、あやまたぬ方法でもあります。人間というものは、ヘイスティングズ、会話が与えてくれる機会を利用して、自らを暴露し、自己を表現せずにはいられないものなんです。そのたびに自分をさらけ出してしまうんです」
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第一の手紙を読んで、高校時代に「nut」という単語には「難問」という意味があると習ったことを久し振りに思い出した。「hard nut to crack」でイディオムとなる。
「Perhaps you'll find this nut too hard to crack.」-
突然コメントを送りつける非礼をおゆるしください。
佐藤といいます、いつも哲学的なレビューを興味深く読ませていただいております。私にはない視...突然コメントを送りつける非礼をおゆるしください。
佐藤といいます、いつも哲学的なレビューを興味深く読ませていただいております。私にはない視点なのでとても勉強になります。
一点だけ、同好の士としてお伝えしたく書き込みさせて頂きました。
「欺瞞的・暴力的な意味付与を断固峻拒する、そんな自由の犯罪」
森博嗣というミステリ作家の「黒猫の三角」「すべてがFになる」が、そういう思想のもとに書かれております。理系ミステリの異名があるくらい理系寄りの作風(作者は名大工学部の元教授です)なので、かなり読者を選びますが…
すみません、それだけです。失礼いたしました。既読スルーで構いません。2018/12/14 -
佐藤史緒さん
こちらこそ有難うございます。
森博嗣、名前は聞いたことありますが、本を手にしたことはありませんでした。
現代作家...佐藤史緒さん
こちらこそ有難うございます。
森博嗣、名前は聞いたことありますが、本を手にしたことはありませんでした。
現代作家に疎い私にとって貴重な情報です。
理系好きなので読書予定の1冊に入れておきます。
コメント有難うございます。2018/12/16
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ミステリーの第一人者、アガサ・クリスティーの小説を一度は読んでみたかった。
第三者で語られる目線というのが新鮮だったし、こんな見事な展開をこの年代に、イチから作り上げているのか。頭の中の創造性はどうなっているんだろう(ミステリーを書く人、すべてに通づるが…)。
ポアロのキャラクターが陽気で読みやすいし、章分けが細かく設定されているので、ストーリーがわかりづらくなりにくい。
ただ、洋小説ならでは?なのかアガサ・クリスティーならではなのか、日本人に馴染みのない言葉遣い、話し方、考え方に違和感を覚えつつ読み進めた。
読了感がスッキリなので、色々なポアロシリーズを読みたくなる。 -
クリスティはこれで3作め。あまり好みではなかったが、皆さんの感想を読むと「ミッシングリンク」の原点的な小説なようですね。本作を下書きにしてアレンジ、一捻り追加した小説がいかに多いかということですね。
個人的にはポアロの人柄がどうも好きになれない…妙に秘密ぶった言い方というか。突き放す感じ。ヘイスティングスのパートナーっぷりが最高ではあります。
ミッシングリンクと連続殺人の相性も良いので、そういった意味では非常に教科書的な一冊だと思います。
多くの方が触れているように、殺される人物の過去や周囲の人々を丁寧に書くことで、非常に血の通った作品になっている点はさすがでした。 -
狂人にも狂人なりのロジックがあり、それに基づいて行動している。どんなにおかしなことでも必ず原因があり、法則やルールが存在する。つまり、彼らは我々と同じ人間なのである。
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カストが不憫