- Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300431
感想・レビュー・書評
-
この年になってクリスティかと笑われそうだが、旅行中に何か読む本をと思って本棚の中から一冊選んで持っていったところ大層面白かった。本棚にあったので初読ではないはずだが、読んだのは何十年か前で内容は完全に忘れていた。
ここ最近の複雑なトリックとサスペンスが洗練されたエンターテイメントと比較して、クリスティなんて非現実的なプロットと時代がかった謎解き話かと軽く見ていたが、穂井田直実の解説にある通り、年を取って判る面白さというものは確かにある。ミス・マープルの年齢に近くなって、そろそろ老人の生活を復習しておくにはよい年かもしれない。シリーズをもうちょっと読んでみよう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マープル
翻訳の永井淳氏って聞いたことあるなーと思ったらジェフリーアーチャーを担当していた方だった。懐かしい。
始まりは何となく退屈な感じ(マープルが退屈な話を聞かされてるから当たり前)だったけれど、最後は畳み掛けるような面白さだった。いつものように私が怪しいと思った人は全然関係なかった。ラフィール氏も登場した時とラストでは全く印象が変わった。それにしてもリゾート地での療養をプレゼントしてくれる甥がいるなんて羨ましいなあ。マープルシリーズの未読は3冊になり寂しい。 -
解決のためのヒントが各所ちりばめられていて、とっても読み込み甲斐がありました。解決編で、ああそうか! と気づかされる時の悔しさと爽快感。絶妙。後期の作だそうで頷けます。
それにしてもヘイスティングズ的な役がいないので、異国の地でも独りでがんばらなければならないマープルおばあちゃん… しかしこちらの心配とは裏腹に、お年を召されてなお強く、そして軟らかである。見習いたい。 -
2003年発行、早川書房のクリスティー文庫。マープルもの。マープルは登場時からずっと老婦人、というイメージだが初期は初老の婦人。解説によると少し性格は変わっているという。そういえばそうかも。短編はマープルがよく、長編はポアロがいい、ような気がする。この話については、マープルらしい作品。3部作構想だったとう第2作の「復讐の女神」がトラベルものというマープルらしからぬものだっただけに第3作を見たかったきがしている。
解説:「解説」(ミステリ評論家)穂井田直美、 -
リゾート地で療養していたミス・マープル。そこで殺人事件が起きて。アガサ・クリスティーはミステリのトリックや設定もさることながら、魅力的な人物を創造するのがとても上手だ。
-
療養のためセント・メアリ・ミード村を離れて遥か彼方の西インド諸島を訪れたミス・マープル。
そこは最早リゾートだからセント・メアリ・ミードのような人間関係は生じないかと思いきや、裕福な人間たちが限られた空間に集うわけだから根本的な人間模様は変わらない
つまり噂も憶測も飛び交うお喋りの坩堝と化すわけだ
ゴールデン・パーム・ホテルにてお喋りの代名詞となっている人物がパルグレイヴ少佐だね
ミステリにおいて、口が軽い人間が殺される率は高いものだけど、彼もその例に漏れず
ただ、この場合に厄介だったのは彼があまりにお喋りだったせいで皆が彼のお喋りを話半分にしか聞いていなかった事か
誰も彼もまともに聞いてないのに、パルグレイヴ少佐はお喋りのせいで殺されてしまった
マープルは人との会話からその人柄を読み取るのが得意なタイプだけど、肝心な人物の話が曖昧なものだから推理も上手く進まないという点が今回の事件の特徴かな
また、もう一つの特徴を上げるなら、マープルの助手役となった人物が風変わりと云うか驚きの人物であった点だろうか
マープルは療養に来るくらいには体の自由が効かない状態。おまけにポアロのように名探偵を名乗っているわけでもないから警察を自由に動かせもしない
だから彼女の代わりに動いたり、考えを補佐する人物が必要となるわけだけど、まさかあの人物がマープルの助けになるとは思わなんだ
マープルの推理力に感激し協力的になる人物は数あれど、あのような姿勢から協力的になった人物はかなり珍しいんじゃなかろうか?
あと、特徴と言える程のものではないけど、あとがきで言及されているように、本作はマープルの柔軟な姿勢が目立って居るね
ゴールデン・パーム・ホテルでは知り合いがいるわけでもなく、むしろ彼女と年の離れた人物ばかり。夕食時にはスチール・バンドが鳴り響くなど彼女向けの環境とは言い難い
それでもマープルはその環境を楽しもうと自分の言い分を他所において、全く異なる生き方をする人物の話に耳を傾けるし、スチール・バンドも好きになろうと努力する
そういった控えめな積極性が噂をかき集めなければ真実に到達できない事件の解決へ近づく助けとなっていると読み終わると判るね -
十代のころ読んだ気がするがほとんど覚えていなかった。40歳を超えた今読む方が楽しく読めたように思う。
ラフィール氏、なんて爺さんだっ!と思ったけど中々魅力的なご老人で、ミスマープルとのコンビは最高。
この本は難しいトリックはないけどマープル女史の魅力たっぷり。永井淳氏の翻訳も面白い。この人の翻訳でクリスティ作品もっと沢山読みたくなりました。