- Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300943
作品紹介・あらすじ
アガサ・クリスティーは多くの傑作ミステリを書くかたわら、一冊の小さな宝石のような本を残しました。聖書に題材をとった物語と詩を集めたクリスマスブックです。人間の心理についての鋭い観察力と卓越したストーリーテリングが作り上げた小宇宙は、ミステリに劣らぬ驚きと優しいさわやかな感動に満ちています。
感想・レビュー・書評
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クリスマス駆け込み読了。なじみがない聖書の話や聖人達の話がクリスティーの腕ですーっと頭に入ってくる。『水上バス』の主人公が自分のように感じ一番響いた話。『いと高き昇進』の注釈の聖人紹介文面白い。『島』はミステリアスな雰囲気が素敵。
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ミステリと思う勿れ笑
季節に応じた作品に触れようの回。(今夏は横溝正史の『獄門島』)
オリエント急行もポワロ・シリーズも未だ手付かずなのに、いきなりソフトな面からお邪魔する。あとがきにも書いてあるけど心理描写が巧み。「何?どうなる⁉︎」とビクビクじゃなくてワクワクした気持ちで各話の続きが気になっていた。
彼女が料理したクリスマス・ストーリーズはどれも不思議な構成だった。短編集ではあるけれど「信仰」をキーワードに各話が一本の糸で繋がっている。(自分にとって短編は変わらずとっつきにくいものだけど、そう考えたら個々の話として楽しめた) 彼女の代表作もこのスタイルで展開していくのかな。『クリスマス・キャロル』みたいなストーリーブック調にも見受けられるけど、聖書の知識を蓄えるのもさる事ながら大人になって再読するとまた違った味わいになってくると思う。
第1章は彼女なりにアレンジした聖誕劇だけど、とにかくルシファーの登場シーン(聖誕劇で⁉︎と思うだろう…)が一番度肝を抜かれた、を飛び越して笑いでつんのめった。東方の三博士が”VIP”と呼ばれていたのも。(間違ってはいない笑)
『いと高き昇進』もお気に入り。聖者達の行進で幕を開ける衝撃のイントロ。14人の聖人(ペトロ以外知らない人達。翻訳者さんですらご存知ない人もいる汗)が静物として崇拝される運命から解放されてそれぞれの形で現代を生きるところが何だか清々しい。(「解放された」って解釈で合っているのかは疑問だけど…)
彼女がどれほどの信仰心を持たれていたかは知らないけれど、普段「目に見えざるもの」への感謝を忘れがちな人が読んでも説教っぽくは聞こえないだろうし、クリスマスを機に思い出させてくれる仕掛けになっているのかね。 -
聖書の知識があれば楽しめたのかも。
そんな私でも理解できて良いなと思った話は、
「ベツレへムの星」
「水上バス」
原題は、"Star Over Bethlehem"
解説は、赤木かん子さん -
ノンシリーズ。
「クリスマスにはクリスティーを! 」
(このコピー考えた人、天才!)
ということで、本書はミステリではなく、聖書を題材にとったショートストーリー&ポエム、11編が収録されている、クリスマスブックでございます。
聖書がベースとなっているので、全体的にキリスト教要素が強く、聖書の知識があるとよりお楽しみ頂けるかと思います。
そんな中、個人的に好きだったのは「水上バス」ですね。
人間嫌いだけど善良な、ミセス・ハーグリーヴズの一日が描かれているのですが、クリスティーの人間描写の上手さと、ミセス・ハーグリーヴズの心に変化が起こっていく様が繊細に描かれていて、何度でも読み返したくなる秀作だと思いました。
あと、ペテロやカタリナ、クリスチナ等々・・といった聖人たちがワチャワチャ登場する「いと高き昇進」も、ユーモラスで楽しめます。
そして、(聖母)マリアと堕天使ルシファーの、ちょっとヒリヒリする(?)やり取りが興味深い表題作「ベツレヘムの星」は“クリスティー版聖誕劇”というところでしょうか。
“ノン・ミステリ”の本書ですが、クリスティーのちょっと捻りが効いた小話も良きかな・・と、いうことで。
ちょこちょこ挟まれるポエムも含めて、聖夜の雰囲気を堪能させて頂きました。
それでは、「Merry Christmas, Mr. Lawrence(←w)!」-
あやごぜさん、こんばんは♪
「クリスマスにはクリスティーを!」←本当にこれ考えた人天才ですよね!
そしてちゃんと24日にレビューあげるあや...あやごぜさん、こんばんは♪
「クリスマスにはクリスティーを!」←本当にこれ考えた人天才ですよね!
そしてちゃんと24日にレビューあげるあやごぜさんも素敵!(戦メリですねw)
私もクリスティー今読んでるのですがクリスマス本番25日までに読み終わりそうにありません(*´ω`*)2023/12/24 -
111108さん。Merry Christmas☆彡
コメントありがとうございます♪
“戦メリ”、気づいて貰えて嬉しいです~。
こ...111108さん。Merry Christmas☆彡
コメントありがとうございます♪
“戦メリ”、気づいて貰えて嬉しいです~。
この時期を狙って読んだので24日にレビューできてよかったです。
111108さんは『カーテン』を読まれたのですね!
ポアロものラストという事で、年の瀬に相応しいチョイスですね(^^♪
私が『カーテン』を読むのはいつになるんかな~w2023/12/25 -
あやごぜさん、お返事ありがとうございます♪
あやごぜさんにつられて私も何とか「クリスマスにクリスティー」できました(^^)
『カーテン』で...あやごぜさん、お返事ありがとうございます♪
あやごぜさんにつられて私も何とか「クリスマスにクリスティー」できました(^^)
『カーテン』でポアロもの全て読み終えたので、もう新しいポアロに会えない寂しさと達成感と混ざった気持ちです。ほんと、年の瀬の雰囲気と合う読書となりました。次からはノンシリーズに挑戦していきまーす♪2023/12/26
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アガサ・クリスティーのクリスマス・ブック。クリスマスの時期に合わせて読もうと手元で温めていた。
本書は、冒頭の『ごあいさつ』を含めた詩が5編、聖書を題材にした短編が4編、現代イギリスを舞台にした短編が2編という構成となっている。
全編が神の存在を感じさせる内容で、クリスチャンではない多くの日本人にとってなじみのないテーマではあるが、そこはクリスティー、すぐれた人間観察力と描写力で、物語として十分に面白く仕上がっている。
「神」がテーマになっているとはいえ、多くの短編の中心は女性である。女性の心理を描くことに定評のあるクリスティーならではの、ちょっと皮肉のきいた内容となっている。
特に『水上バス』はおすすめ。クリスティーは長編の方がよい、と思っていたが、その印象が覆されるほど気に入ってしまった。
『水上バス』は、できるだけ人と関わりたくないけれど、それを隠して世間的には正しく親切に暮らしている初老の未亡人、ミセス・ハーグリーヴスの一日の話。
人付き合いのわずらわしさに疲れ果て、抜け出そうと水上バスに乗った彼女だが、とある出来事がきっかけで自分の気持ちに変化が生じていく。
ちょっと内向的な性格の人なら、わかる、わかる、とうなずいてしまうリアリティがあり、何より読み終えた後、思いがけずクリスマスプレゼントをもらったように心がほんのり温かくなるのがよい。
ほかにも、カトリックの十四聖人が天から降りてきて、地上の人々をそれぞれの得意分野で救済する『いと高き昇進』が面白かった。匂いに敏感な聖クリスチナが、公衆衛生の悪さに思わず代議士を目指そうと決心するところは笑ってしまった。
クリスマスにゆっくりと読むのにおすすめの一冊である。-
b-matatabiさん、こちらにもおじゃまします。
『いと高き昇進』面白いですね!注釈を読んで面白さ深まりました。聖人なのにとっても人間く...b-matatabiさん、こちらにもおじゃまします。
『いと高き昇進』面白いですね!注釈を読んで面白さ深まりました。聖人なのにとっても人間くさいですね♪2022/12/25 -
111108さん、こちらにもありがとうございます。
『いと高き昇進』の14聖人、皆いい味出してますね。天使の言葉をいちいち確認せずにはおら...111108さん、こちらにもありがとうございます。
『いと高き昇進』の14聖人、皆いい味出してますね。天使の言葉をいちいち確認せずにはおられない聖トマスもつぼです。2022/12/25 -
2022/12/25
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クリスマスに見つけて、お正月に読み終わりました。
ミステリーではなくてもクリスティはクリスティ。それが一番の感想です。ただし、全編ショートショートと言えそうな長さなので、この長さが私のクリスティ感と違うところです。全編に注がついています。その注を確かめると、ほとんどが出典としての聖書。どこに書かれていることを典拠としての話なのか、ということでした。これは、聖書を手元に置いて読むと、もっと理解が深まるのでしょう。
典拠を示した注ではなかったのが「いと高き昇進」。聖者についての解説です。この注を確かめて思ったのは、聖人の大部分が、日本でいえば鎌倉時代ぐらいの人々だということ。聖人とは、ひょっとすると、社会科で習った鎌倉仏教の始祖、開宗の方々と同じような捉え方なのだろうか、と思いました。これもまた、キリスト教を知らないが故の勝手な想像です。
各編、この訳で良いのだと思いますが、芥川龍之介の文体で読んだら、もっと違った味わいがあったのかな、作品に込められている機知と諧謔の雰囲気は芥川の文体がより生きるように感じた次第です。 -
クリスマスに合わせてぜひ読みたい本。クリスティーといえばミステリーだが、このようなハッとするような短編もあるのだと初めて知った。
一つ一つがミステリーっぽさもあり、不思議さも持っている。
ただ、キリスト教についての予備知識がある方が楽しめるのではないかと思う。 -
表題作の、ベツレヘムの星(Star over Bethlehem) が一番良かった。(聖書にちなんだ場面が多く、表題作以外では、どの逸話と絡んでいるのか分からないから。)マリアとイエスの話なんだけど、普通の母子の間のお話として読んだ。神(っぽい人)が、イエスの人生の三つの場面(磔刑前とか)を切り取ってマリアに見せ、こんな人生だがいっそいま命を奪ってあげたらどうか?と提案し、マリアがなんと答えたか、というお話。全ての母は、きっと同じ答えをするのではないだろうか。
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ミステリーの女王として日本でも有名な作家による「クリスマスブック」。聖書の物語をベースにしつつミステリーを得意とする作家らしい”ひねり”があって、とても面白かった。また、日本の作家によるクリスマス話でよく見られるキリスト教徒を貶したり笑い物にしたりするような不快な描写もないし、サンタクロース関連の話が一切ないのも良い。
コメントありがとうございます!
同じタイミングで読んでたなんて嬉しいですね♪
『水上バス』の主...
コメントありがとうございます!
同じタイミングで読んでたなんて嬉しいですね♪
『水上バス』の主人公、本当に自分のように思えました。この主人公のように何か神がかりな事起きたら性格?性分?変わるのでしょうか?
本当に、違う国の何年後かの読者が主人公と自分を重ねる話を書くなんて‥クリスティー上手いですね。
主人公の女性、自分で思っているほど人間嫌いではないと思うんですよね。ただ単に人よりもパ...
主人公の女性、自分で思っているほど人間嫌いではないと思うんですよね。ただ単に人よりもパーソナルスペースが広いだけというか。
神ではなくとも、なにかのきっかけでふとそれが緩和されて、でも次のタイミングでまた元に戻って・・・
それの繰り返しで人生が過ぎていくんでしょうね。
なるほど、パーソナルスペースの問題。緩和したり戻ったり‥うんうん。
コメントに説得力ありますね!
なるほど、パーソナルスペースの問題。緩和したり戻ったり‥うんうん。
コメントに説得力ありますね!