ロンリー・ファイター (ハヤカワ・ミステリ文庫 コ 6-4)

  • 早川書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (502ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151709548

感想・レビュー・書評

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  •  一二年前からの新人コーベン・ファンなので、新作の合間に古いマイロン・ボライター・シリーズを当たって読む。この作品もその一つ。だが、今回は少し趣が異なる。それは、二か月前に25年ぶりのシリーズ・スピンオフ『WIN』を読んだばかりだということ。その『WIN』は、マイロンの盟友である王子ウィンザー・ホーン・ロックウッド三世を主人公として25年後の2021年に刊行された準シリーズ作品。現在のウィンは40代となり、所有する不動産のマイロンの事務所であったオフィスは、秘書とスペースをウィンがそのまま別目的で使用しているが、ことあるごとにマイロンの不在を嘆いていること。間接的出演は果たすもののマイロンは顔を見せることはその作品では終始なかった。

     だからまた、ここに来て四半世紀前に戻るぼくにとってはと、ウィンもボライターも25歳は若返っている世界にタイムトリップしてしまうのだ。本は、読み手が時間を自由に往来することのできる便利な手段なのである。

     さて、久々の元祖マイロン・ボライター・シリーズ。本シリーズの特徴として、否、ハードボイルド全体のそれと言った方がよいだろう、独特の主人公とそれを取り巻くワールドが脳裏に残りやすく、異なる作品を開いても環境や人物背景がとても蘇りやすいと、そういう美味しさがある。毎度、舞台や出演者は変わっても、動かない独自の空気のようなもの、変わらないレギュラー・スターたちの顔があり、彼らの印象的な会話を、懐かしく親密に感じながら再スタートされてゆくのを楽しむことができるのだ。これはシリーズ作品の強みである。でもどのシリーズ作品でもそうか? と言われると、それは疑問。印象に残りやすいシリーズ・キャラなくして、それはあり得ない、とだけ言っておこう。

     さて今回のテーマ・スポーツは、ゴルフである。本作の特徴は、主人公のマイロンがゴルフに全然、興味がないこと。知らないこと。それどころか、ゴルフのどこが面白いのかと無関心ですらあること。むしろゴルフの持つ上層階級意識みたいなものへの軽蔑すら匂わせる。しかしそれでも彼はプロであり、依頼人は彼を頼る。マイロンは、プロフェッショナル・スポーツ・エージェントなので、ゴルファー関係者から依頼が来たって、シリーズ・キャラとしては読者のためにどのようなサービスでも引き受けなければならない。と、きっと作者がマイロンに囁いている。

     しかしハードボイルドとして考えれば、ゴルフをやる階層に漂う張りつめた空気の中に、下町の一匹狼が飛び込んでゆく物語なのだ、ある意味、伝統的な構図、まさに独壇場ではないか。そこへもってきて今回は相棒のウィンが依頼主と競合する立場になるために協力を得られない、と来た。珍しくもマイロンの単独捜査でほぼ全編を貫くことになる。シーズンとしては必要な変化球。

     作品としては、結果的にここまでのシリーズで一番面白いのではないだろうか? キャラクターの個性も凄いが、ゴルフ界を取り巻くハイクラスの家族たち、スポンサー間競争、世界規模でマスコミに晒される注目度の中のワンストローク。ゴルフが好きな人にとって、特にゴルフのシーンが多いわけではないが、明暗を分けるクライマックスはチャンピオン争いにかかる注目や賞金額の巨大さに伴ったそれなりのクライマックスを用意してくれる。さすがのコーベン劇場、とう圧巻のプロットには再三ながら拍手を送らざるを得ない作品である。

     暴力とセックスの嵐が大豪邸と虚飾と、すれ違う愛の夜を吹き抜ける、マイロン・ボライター、ソロ・プレイの一作に改めて乾杯。

     こういうとき、ウィンならこうするだろうという、およそらしくないやり方で切り抜ける辺り、とてもつらそうで楽しかったよ。

     でも一部の読者の方は、登場シーンの少なさに少々物足りなかったのでは。それもまた、作者の次作への仕込みの一つである気がする。でもウィンの過去の秘密暴露ネタが地雷のようにぶち込んであった。やるよね。

  • マイロンにはいつもトラブルが降りかかる。名門ゴルフクラブを訪れたことがきっかけで、彼はプロゴルファーの夫婦の息子を誘拐した犯人を探しだすことになったのだ。ゴルファーとして不遇だった少年の父親は再起を賭けて全米オープンに出場中だった。彼を動揺させるための犯行か?さらに相棒ウィンは調査への協力を拒絶し…孤立無援のなか、スポーツ・エージェントのマイロンが機知とジョークで敵に立ち向かう第4弾。

    前作よりもよい印象。ビターな結末。

    テレビや映画がこのシリーズにはよく出てくるが、今回はコロンボがあのセリフとともに引用される。

  • 図書館で。
    今回のテーマはゴルフ。個人的にはあまり興味無いですが、打った球がギャラリーに当たらないんだろうかといつも中継を見て思います。ま、プロはそんなことないのかな。

    今回はウィンの手助けなしに独力で事件解決しなくてはならなくなったマイロンさん。確かに自分がかかわってる事柄なら暴力的解決は辞さずなのに、ウィン一人でワルモノ退治はダメってのは筋が通らないよなぁ。そのあたり、マイロンも色々ダメ人間って気がする。
    そしてウィン母も何故にマイロンを紹介したんだろう。カンフル剤みたいな気持ちだったのかな。

    このシリーズは女性が悪役というか影で糸を引く首謀者、というパターンが多いなぁと思いました。

  • いつもながらの軽快なタッチながらも奥深い。

  • 参りました。大好き。文句なしに五つ星。問題は、「マイロン」って名前がなんでそんなに恥ずかしいのかぴんと来ないってことかな?

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