ガラスのなかの少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 28-1)

  • 早川書房
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151768019

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  • 1932年、禁酒法の時代のアメリカ。メキシコ移民の17歳の少年ディエゴは幼い頃家族とはぐれ、シェルという奇術師で詐欺師の男に拾われ、今はインチキ霊媒師となったシェルの助手をしている。用心棒兼運転手で怪力大男のアントニーとの三人組ファミリー。ある日パークスという金持ち宅での交霊会で、シェルはガラスの中に少女の姿を見る。やがて、バーンズという別の金持ちの娘シャーロットが行方不明になったニュースが新聞に載り、それを見たシェルは自分がガラスの中に見たのはこの少女だと言う。一行は少女の行方を占う霊媒師としてバーンズに近づくが…。

    ガラスの中に現れた少女の幽霊、インチキとはいえ霊媒師という職業、詐欺師や奇術師のネットワークはサーカスの異形の人々とも通じており次々出てくるゴム女や犬男、ナイフ投げ師など、オカルトファンタジー的なものをイメージしていたのだけど、意外にも現実的なクライムミステリー。(よくみたらレーベルもハヤカワミステリーだった)少女の失踪はオカルト的なものではなく、優生学を信じるマッドサイエンティストがらみとなり(まあそれはそれで大変怖いけど)しかもわりと早々に遺体が発見されてしまう。終盤、フリークスたちVSマッドサイエンティストの護衛黒服たちのアクションはハリウッド映画に出来そうなくらいだった。

    期待していたファンタジー要素はなかったものの、展開が早くてぐいぐい読めた。バーンズ邸に現れた、シェルらと同じくインチキ霊媒師のリディア(本名はモーガン)という女性とシェルの関係、パークス邸でメイドをしていたメキシコ人少女イザベルとディエゴのラブストーリーなども交えて、なにより登場人物たちが魅力的なのが良い。ディエゴとシェルの疑似親子関係、アントニーとのファミリー感、そしてディエゴの成長。犯罪組織と詐欺師軍団の戦いの合間にそれらが盛り込まれて、単純に娯楽作品として面白かった。

    シェルが奇術に使う蝶を育てている「愛蝶室」という温室のような場所がとっても素敵。ビジュアル化すればこの部分はとても幻想的になりそう。ガラスのなかにシェルが見た少女の幽霊とはなんだったのか…はやや現実的なオチがつくけれど、ディエゴの回想で始まった物語の、その後の展開は切ない。けれど美しいラストシーンだった。

  • 蝶を見て思い出す回想シーンから鮮やかでぴりっと。わくわくしますね~。
    1932年、禁酒法の時代のアメリカ。
    メキシコ人の少年ディエゴは17歳。
    頭の切れる詐欺師のトマス・シェルに拾われて息子同然に育てられ、大男のアントニオと三人で仕事をして回っていた。
    最近の役は霊感のあるインド人という触れ込みで、ターバン姿。
    母の霊に会いたいという金持ちのパークスの邸宅で、降霊会を催すのだが、その時にシェルが少女の幻影を見る。
    霊魂の存在を信じていないシェルなのに…
    ディエゴにとってはメキシコ人のメイドで可愛いイザベルに出会ったことのほうが重要だったが。
    数日後、ハロルド・バーンズの娘シャーロットが行方不明と新聞に出て、これがあの時見た少女だというシェルは、無報酬で少女の行方を捜そうとする。
    それが、思いも寄らない展開に?
    バーンズ邸には本物の霊媒師と名乗る美しい女性・リディアがいて、彼女の導きで遺体を発見してしまう。
    彼女は何者かに襲われて身を潜め、匿うことにするが‥
    バーンズの知人に犯人がいるとシェルは睨む。
    ゴム女や犬男など、とんでもない危機に際して集まってくる詐欺師達が楽しい。
    時代色があり、闇は濃厚で、不気味さもあります。
    それでも他の作品に比べると、ぐっとわかりやすい。
    テンポの良さと、すごくキャラが立っているために読みやすいのです。

  • 幻想文学の中でも大好きな作品「白い果実」と同一の作者だと、後書きを読むまで気づかなかった。
    「白い果実」の印象とは、だいぶ違うが、こちらも最後までグイグイ読ませる。

  • 推理小説の賞をとった作品だったので借りて読んでみました。
    あまり好みではなかったです。

    自分が降霊会とか見世物とかそういうことにあまり興味が無いからだと思うのですが最初の方はなかなか世界観に入り込めず、あまり面白くないなと思いながら読んでおりました。
    そのご時世の時代背景も後書きに書かれているほど状況がわかるでもないし。もっとEROでしたっけ?KKKとかが普通に活動していて、と言うところとか学者の研究の方を掘り下げてもらったほうが個人的には興味を持てたのになあと思いました。

  • ちょうちょー

  •  1932年のアメリカ東海岸を舞台にしたインチキ霊媒師の話。
     アメリカ探偵小説クラブ賞、最優秀ペイパーブック賞受賞作です。

     主人公は、メキシコ人の少年で、インチキ霊媒師の相棒であり、彼に育てられてもいる。ある降霊会で、霊媒師シェルはガラスの中に行方不明になっている少女の姿を見る。その少女を探すことで、金儲けができるとふんだ彼らは、その親の元に降霊会をもちかける。
     タイトルと表紙でだまされます。
     というか、こういう話なのかなと思ってくると、また違った面を見せる。まるで万華鏡のような小説。

     人物の造詣が格好いいです。
     保護される少年から、様々な局面を切り抜け成長していく主人公。蝶を愛し、自由にいい加減に生きているようでありながら、とてつもない深い愛を持っているシェル。大男でクール、頼りになるチームの要であり運転手アントニー。そして、物語のキーとなる別の霊能士リディア。さらに、シェルを助ける様々な一筋縄でいかない人々。
     時に怖く、時に笑え、時に悲しい。
     物語の可能性が全て詰まっています。

     にしても、愛は深いです。
     誰かを育て、慈しむという愛は、深く広い。
     本を閉じた時、愛の温もりに涙腺が緩みます。

  • 図書館で適当に借りたら、とても面白かった!。オカルティックな雰囲気が好きでいいなぁ。と思ってたら、『白い果実』の作者でした。こっちも好きな本なので、嬉しいです。

  • 登場人物の誰も彼もが魅力的。映像化したらいいのに、と思うようなお話。

  • 主人公はオカルト趣味の金持ちをカモにしているいんちき霊媒師の助手の少年。詐欺師なので法には触れますが恩義は忘れないし義理人情には篤いです、という、私の大好きなパターン。他の作品も是非とも読んでみたくなりました。

    フィクションなんですが、1930年代の白人至上主義とか、根は同じですがメキシコ人の強制送還(違法移民だけでなく合法の移民も)がされていたとか、そういうあまり知られていない史実をベースに書かれた話、というのがすごいです。私も全然知らなかったのですが、史実が基礎にあるということでかなりゾーっとしました。

    ロバート・マキャモンが書いた 『少年時代』 が好きな方は、もれなく好きだと思います。

  • 後半の強引な展開も許せるぐらい、雰囲気も登場人物もとても好き。あと、2、3作ぐらいは、この登場人物たちの物語を読みたかったのに。残念。 (2007.3.10 読了)

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