ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151799518

作品紹介・あらすじ

20年前ある家族に悲劇が。原因となった女ローラがいま現れ……。巨匠クックの新機軸。

感想・レビュー・書評

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  • クックの「記憶シリーズ」が
    好きすぎて 全作読んでいます。
    
    97年MWA賞受賞した『緋色の記憶』に
    『夏草の記憶』『死の記憶』などなど。
    
    "記憶"を題材にした
    ストーリーに惹かれます。
    
    記憶って 記録とは違って
    あくまでも 自分自身が思い込んでいる
    主観的なものに過ぎませんよね。
    
    でも とても大切なもので
    ある意味 人生は
    記憶の積み重ねから出来ている
    と言っても 過言ではありません。
    
    自分が信じたい自分。
    自分にとって望ましい過去。
    
    でも その記憶が
    実は 違う角度から眺めてみると
    全く 別のストーリーだったとしたら・・・?
    
    主人公ルークは 生まれ故郷を捨て
    都会に出てきた 
    パッとしない歴史学者なのですが
    
    ある日 セントルイスで開いた講演会で
    家族の忌まわしい過去に繋がる
    ローラという女性と 20年ぶりに再会。
    
    嫌々ながらも 彼女の求めに応じ
    ホテルのラウンジで 昔話をすることに。
    
    そこから 現代と過去を行きつ戻りつ
    少しずつ過去の記憶が甦っては
    ねじれてきて・・・
    
    全体的に 渋めで落ち着いたトーンも
    かなり好みです。

  • 会話しながら過去や現在をいったりきたりして、ローラフェイと主人公の間の誤解やわだかまりを解いていく不思議な話。見事な作品だと思った。

  • トマス・H・クックは、一時期はまってよく読んでいた。『◯◯の記憶』っていうタイトルがやたら多かったのを覚えている。今からもう20年も前のことだ。
    すでに起こった事件の真相を、関係者の記憶から事実だけを拾い集め、繋ぎ合わせることによって明らかにする。当時はそれがとても面白くて面白くてたまらなかった。今回読んだこの『ローラ・フェイとの最後の会話』もそんな感じだ。

    歴史学者のルークは、講演のためにセントルイスを訪れた。その会場で再会した意外な人物、ローラ・フェイ・ギルロイ。彼女はルークの父親が死に至る原因になったとされていた女性だ。この約20年振りの再会は、もちろん偶然なんかじゃない。
    なぜ今になって彼女がルークの元を訪れたのか。
    ルークは不審に思いながらも、ホテルのレストランで酒を飲みながら昔話をする。
    彼女の目的は一体何なのか。
    ルークにはそれが分からないし、読んでいるわたしはもっと分からないまま、ずっと二人の会話に付き合わされる羽目になる。なんせこの三人(ルークとローラ•フェイとわたし)の中では、わたしが圧倒的に不利な状況だ。だって一番手持ちのカードが少ないんだから。
    まさかこのままこのお店で、二人の会話のみでストーリーが進むんじゃなかろうかと嫌な予感がする。そして、その予感は的中してしまったのだけど、でも決して「嫌な」予感ではなかった。
    結果的には面白かったからだ。
    思わせぶりなローラ・フェイには何度も愛想を尽かしそうになったが、お終いまで読んでみれば、彼女がああいった方法で会話を続けるしかなかったことが分かる。

    この世で最も絶望的なのは天災だと思う。
    でも一番恐ろしいものは、人間の心から生まれる。
    それは元々は全く違うものだったのに、もしかしたら美しいものだったかもしれないのに、いつの間にか変わってしまうこともある。わたしたちのこの心から生まれ、やがて手に負えない魔物になってしまう。
    救いのある結末で本当によかった。

  • 新宿ブックファーストの文庫棚で、蛍光イエローの背表紙が私の目を引き付けた。向日葵の写真が使われた表1も。新作? 『サンドリーヌ裁判』よりあとの作品かと思いきや、以前の作品だった。

    もちろん、クックお得意のパターンなれど、今作は主人公とローラ・フェイとの会話劇のような濃密感が特長的。

    人は、過去の消したい記憶を、消したいと思いながら何度も繰り返し思い起こしてしまう場合もあれば、本当に“その部分”の記憶をあやふやにしてしまう術も持ちあわせている。

    恐ろしいほどの己のエゴと、それが起因した取り返しのつかない過ち。封印していたであろう過去が、ローラ・フェイとの再会で、じわりじわりと、行ったり来たりしながら、核心に近づいて、パンドラの箱が開けられる。このあたりの緊迫感は、クックの真骨頂ですな。

    数々の思い込みと、偏見を持った推測による誤解と、幼き自分では見通すことができなかった真実。家族愛、親子愛、夫婦愛も、ぜんぶがセオリーなどなくて、千差万別の形があると、その哀しさを想う。そして愛だけでなくて、疎ましさも、疎ましさの向こう側の真っすぐでないけれど確かな愛情なども、失ってみて、振り返って、気付いて愕然とする。

    クックの作品は、最後にちゃんと救いが用意されていることが多い。この作品も同じく。大事なことに気付く、気付かされるクックの小説の主人公たちは、いつもそれなりに年老いているのだけれど、願わくば、でき得る限りはやく、己の“真実”と向き合い、行動すべしと、彼は手を変え品を変え語りかけてくるのだ。

    THE LAST TALK WITH LOLA FAYE
    ©2010 by Thomas H. Cook

  • はぁ、トマス・H・クックの作品だねぇ~~~~~~って感じ。
    読んでて面白いなんてことは全然感じないのよ、
    それでも読んでいくとね、輪郭がだんだんはっきりしてきて
    もしかしてそうかなぁ~と推理していると、あれれっと違って、そして最後にど~んと心を打たれてしまうわけね。
    この人の作品は読後に何度も反芻して、ますます味わいを深めるのよね・・・
    たださ、万人受けはしないかな。

  • 以前は読む本といえば海外ミステリーばかりだったのに、年をとるとともにカタカナの名前が覚えづらくなり(笑)、ほぼ日本の作品ばかりに。これは登場人物が少なくて、そんな私でも大丈夫。

    アラバマの田舎町を出て20年、冴えない歴史学者ルークは、ある日の講演会場で同郷のローラ・フェイから声をかけられる。彼女はかつてルークの父親の愛人と噂され、ルークの家庭に悲劇をもたらした張本人。嫉妬に駆られた彼女の夫ウディが、ルークの父親を銃殺したうえ、自殺したのだから。嫌な予感を抱きつつもしばし彼女と語らうことに。

    無感覚もひとつの感情。心の芯まで麻痺していたルークが感情を取り戻す過程を見守っている気分です。ルークとローラ・フェイの会話と、その間のルークの回想が描かれているだけなのに、すべてのシーンが想像できます。

    父親の、母親の、人生最後で最大の希望は何だったのか。そしてそれを知ったルーク自身の希望が形になるとき。

    派手さはまったくないのに、ちっとも眠くなりません。これぞ至福の読み物。

  • 2013/08

  • 母に勧められて読んだ本。回想シーンが何回も出てくるにもかかわらず、混乱することなく読むことができた。最後に主人公の偏った見方が覆されるシーンの描き方が見事だと思った。

  • 大学教授のルーカスは、自分の新著の宣伝のためにセントルイスで講演を行う。聴衆に20年前に逃げ捨ててきた故郷グレンヴェルの親父の店の従業員のローラ・フェイの姿を見つける。なぜ彼女がここに?彼女は講義の後のギフトショップのサイン会に現れ、誘われてホテルで2人の会話が始まる。故郷での2つの殺人事件にまつわる自分を含むさまざまな人間の愛憎と誤解。特にルーカスの父に対するエディプスコンプレックスから来る誤解は彼と周りの人の人生を変える。会話は、最後まで緊迫感に溢れ、惹きつける。ルーカスの抱き続けてきた誤解と疑問がほどけてゆき、真実が見えてきた後には何をすべきなのか?

  • 2013年9月19日(木)、読了。

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