われらが痛みの鏡 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ル 5-6)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151814563

感想・レビュー・書評

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  • 防衛線を次々突破して
    迫りくる装甲師団。

    我さきと逃げ出すパリ
    ジャン・パリジェンヌ。

    街道に溢れる何千何万
    もの避難民。

    そんな歴史的な背景の
    なかに描かれる、

    登場人物たちの数奇な
    運命。

    それぞれの抱く想いや
    様々な感情が渦巻き、

    個々の物語が重層的に
    絡み合い、

    やがて大きなうねりと
    なって、

    一つのテーマへと収斂
    されていく。

    誰か一人でも欠けたら
    到達しえない、

    明るい希望宿す結末に
    向かって突き進む。

    かくも壮大で読み応え
    ある贅沢な作品です。

    三部作ながら一作毎に
    異なる味わいがあって、

    そこがまたいいですね。

  • ピエール・ルメートル『われらが痛みの鏡 下』ハヤカワ文庫。

    3部作の完結編の下巻。戦火の中で運命に翻弄されながら、歴史の1ページを刻んだ登場人物たち。ミステリーの要素は希薄で、歴史大河小説のような趣の作品だった。はっきりとしたテーマや結末は見当たらず、読み終えても満足感は得られなかった。

    密林では評価が高いようだが、レビューは無いという不可思議。ステルス・マーケティングなのだろう。

    レストラン店主のジュールと共に戦火を逃れ、兄のラウールを捜すためにルイーズはパリを後にする。ラウールはガブリエルと共に捕らえられていた軍から脱走する。そして、終盤にルイーズはラウールと会うのだが……

    本体価格900円
    ★★★

  • 三部作完結。
    序盤は離れた場所の複数の人物に話が飛ぶので少し読み辛かったが、次第に彼らが絡み合ってくるとゾクゾクした。
    繊細な編み物のような構成はさすが。
    でも、絡み合いが面白かったけれど、一番面白かったのは絡み合ったようでするっと抜けていったあの人だったな。

  • ピエール・ルメートルの壮大でかつ人間味あふれた歴史群像劇。
    20世紀の二つの戦争に翻弄されたフランスの人たちの三部作、完結編。

    上巻からひきつづき「ルイーズの物語」「ガブリエルとラウールの物語」「デジレ・ミゴーの物語」が進む中、新たに「フェルナンの物語」が加わって、下巻は4本同時に進行していく。
    が、次第にそれらが交わり始めると、妙な期待感に浸っていき、読むのが楽しくなる。
    いったいどこですべてが交わるのか……ああ、そうなんです。
    そのためにこの人はいたのですね。
    とても効果的です。

    詐欺師と神様は、“カミヒトエ”……なんちゃって。

    それと映画的でもあるけど、完結編もエピローグで登場人物の“その後”が描かれていて、すっきりした後味がとてもステキなお話でした。

  • 下巻は一気に読みました。
    フランスの南に位置するベロー礼拝堂で、今まで別々の行動をしていた主要な人達がたどり着くあたりでは鳥肌が立ちました。登場人物達のプライバシーを守るために読者である我々もその場を離れるくだりは、なんとも言えない余韻を得られます。作者に感謝したくなりました。
    とても印象に残る作品でした。

  • 長い長いお話がようやく完結。
    一言でハッピーエンドなんて言うべきお話ではないはずだけど、ようやく帰結きた感はあります。
    しかし、初期の疾走感とノワール極まった小説はもう読めないのかな。

  •  今年はピエール・ルメートルの作品が二作立て続けに読めた年。しかも先に読んだ『僕が死んだあの森』の後は、ルメートルはミステリーをやめたという話もあるくらいだから、今後は本書のようにハヤカワ・ミステリで出版されてはいるものの、冒険小説に近い普通小説の枠で書いてゆくのだろうか?
     本書は第一次と第二次世界大戦の間のフランスの大作三部作の最終編であって、確かにこれまでのルメートルお家芸の謎解きミステリーやスリラーとは縁遠いものがある。それにしても三部作といいながら時代と家系を組み立て繋ぎ語りつつ、一作一作が独立して読んでも楽しめるエンタメ性に満ちており、ルメートルならではの面白さには太鼓判といった味わいはいささかも減じていない。
     本書は三部作の中でも、図抜けた面白さを持っているように思う。キャラクターたちの運命、すれ違い、出会い、絡み、いずれもナチに今にも占領されようとしているフランス国民の逃走を背景としたスケールの大きい群像小説として楽しめる、いわば現代の『戦争と平和』なのである。
     かつて第二次世界大戦をモチーフにした映画には事欠かなかった世代であるぼくら昭和戦後生まれ世代にとっては、懐かしくわかりやすい一時代のヨーロッパが久々に活写されており、まるでエンタメの故郷に還ってきたようなわくわく感があると同時に、ルメートルならではの酷薄な真実と遠慮のない暴力の世界が痛いほどに味わえる力作なのである。
     前作のヒロインでもあった亡きジャンヌ・ベルモンの娘ルイーズが巻き込まれるパリの事件に始まり、一方ではガブリエルとラウールという『兵隊やくざ』を思わせる前線コンビの噛み合わないロードノヴェルが展開。さらにはどこでこの大きなストーリーの流れに組み込まれてゆくのか想像すらつかない稀代のペテン師デジレによるド派手な詐欺のあれこれが語られつつ、戦争の危機感が増幅してくる総体的スリルを読者は味わうことになる。
     後半ではさらに機動憲兵隊フェルナンとその妻が加わり、前半の各キャラの世界に合流して新たな展開を見せてくれる。これら主要キャラクターたちの離合集散やその運命の翻弄そのものが、ひときわ語りに優れたルメートルというストーリーテラーによって構築されてゆく。大作であり力作であり、一見、別々の物語にしか見えなかったものが、集結して大きなうねりをもたらしてゆくダイナミズムは本書最大の読ませどころであろう。
     できれば三部作を順番に読んで頂きたいが、それぞれ独立して読んでも、何ら問題はない。ルメートルという作家の新たな地平を今後も期待したくなるエネルギッシュな本編に、是非とも翻弄され、身を委ねてて頂きたい。

  • 三部作、終了。
    様々な人間模様が楽しめた。

    最終的に登場人物が同じ場所に行きついて、「集結した!」と声を出してしまいました。

    デジレ気になる。
    詐欺師でも、人を救えるらしい。今までの罪滅ぼし?とも思ったけど、違ってた…デジレだけで、1冊書いてほしい。

    ジュールさんも素敵。パリに戻った翌日にはお店を開けるとか、本当に素敵!

    それにしても、私はこの戦禍をくぐりぬける自信はない…もちろん、ご先祖様たちはくぐり抜けてきたわけだけど。

  • 19世紀から始まった三部作は、1940年独が仏に侵攻した時間の苦しい時間が最も重きを置いたイメージの群像絵巻で幕を閉じた。
    表題「われらが痛みの鏡」は下巻160㌻に描かれているパリ市民が難民となって逃げ伸びる人々のあり様からとったとある。

    仏が独に宣戦布告したとは言うものの、「まやかしの戦争」とでもいえるような生煮えの時間が苦しめての時間が長かった。
    ルィーズを中心にガブリエル・ラウールとフェルナン・アリス、そして最後まで実像が分からないデジレが軸となっているが下地にあるのはDr.

    ルィーズの母と彼の紡いだ時間にジェルメールが絡まった恋の絵巻?と落とし物。
    余りロマンは感じないし、誰にも共感が持てないまま流れていく大河の様な作品で盛り上がりに乗り切れなかった。

  • (上巻より)

    レストランのシェフと車で逃げる途中で銃撃され、
    シェフを残し見知らぬ赤ん坊三人と逃げだしたときには、
    いったいどうなるのかと思ったが、
    避難所となっていた教会にたどりつき、
    無事だった時には安心した。

    軍隊でずる賢く立ち回っていた部下の男がエレーヌの兄で、
    出生の秘密を知ったとたん改心したのは、
    「レ・ミゼラブル」のお国柄なのか。

    詐欺師デジレの存在意義が今一つわからなかったが、
    シェフも結局無事だったし、
    エピローグでみんなが幸せそうで良かった。

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