三分間の空隙【くうげき】 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
4.30
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本棚登録 : 161
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151821608

感想・レビュー・書評

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  • アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム『三分間の空隙 下』ハヤカワ文庫。

    最後の最後まで息詰まる展開が続く下巻。クレイグ・トーマスの『闇の奥へ』を彷彿させるような作品で、非常に面白い。パウラは家族と共に生き延びることが出来るのか。一難去ってまた一難。パウラが家族と共に普通の生活を取り戻すまでの長く険しい道程の結末は……

    麻薬犯罪組織が社会を支配する時代。快楽を求める麻薬中毒者と麻薬製造と売買により莫大な金を手にする犯罪者たち、彼らをを壊滅するために手を尽くす米国政府。

    家族と共に自ら生き延びるために米国下院議員の救出を選択したパウラ。

    下巻の冒頭でグレーンス警部と麻薬犯罪ゲリラ組織に潜入しているパウラが面会し、パウラがグレーンス警部に依頼した内容から『三分間の空隙』の正体は米国下院議員のクラウズが捕らえられているアジト上空を人工衛星が監視しない時間だということが解る。さらにパウラはグレーンス警部に様々なアセットを要求するが、果してどのようにして米国下院議員を救出しようというのか……

    本体価格1,160円
    ★★★★★

  • ことこの連作に関してはかなり熟れてきてて一般受けしそう。
    制裁とかボックス21とかの粗さも好きねんけど。

  • グレーンス警部という人物は、ストックホルム警察の現役捜査員では最年長というような年代で、一緒に居て愉しいというタイプでもない偏屈な男であり、事故で植物状態になった妻が長く施設に在って、その妻が亡くなってという複雑な個人の事情も在るのだが、執念深く捜査に取組む非常に老練で辣腕の刑事である。少し不思議な人物という感じがしないでもない。現場に出る、私用で出るという以外は、自宅アパートか警察本部の自室に居ると言われているような変わり者なのだが、勘と“押し”で事件関係者に迫って、事件を解決に導く手腕はなかなかに見応えが在り、シリーズで描かれる「社会の闇」にも関わる、見た目以上に重大な真相に肉薄するのである。
    下巻は目が離せない展開が続く。
    グレーンス警部はコロンビア現地や米国を密かに訪ね、独特な“押し”で関係者と色々と話し合いながら、ウィルソン警視正が何とかしようとしているホフマンの事案に取組む。
    グレーンス警部はホフマンを間接的に知っていた。スウェーデンでの荒稼ぎを目論むポーランドのマフィアへの対策に係る潜入捜査作戦でホフマンが活動していて、刑務所内で事件が発生してしまった時、グレーンス警部は警官隊の指揮を命じられて現場に入ったのだった。ホフマンを射殺せよという話しになったのだが、射殺は果たせなかった。やがて、ホフマンが脱出したらしいということはグレーンス警部も把握はしていた。
    そういう縁が在るホフマンを、グレーンス警部は何とか支援しようとする。ホフマンの側は、「処刑リスト」から逃れるべく、独自にクラウズ下院議長の一件に尽力しながら、何とかグレーンス警部と共に脱出を図ろうとした。グレーンス警部は、スウェーデンでホフマンが積み残している問題の軟着陸を思案する。
    こういうようなことでダイナミックに展開する物語で夢中になってしまった。これまでのシリーズ作品とは、少し色合いが異なるかもしれない。が、凄く面白い!!

  • 読み応えありました。
    思えば「三秒間…」もすごい本を読んでしまったとしばらく興奮がおさまらなかったっけ。またパウラに逢えるなんて…。緊迫感や憤りや安堵や様々な感情に翻弄されながらも心地よい読書タイムでした。家を見ながら涙するシーンではもらい泣きしそうになりました。
    とてもハードな内容なのにすんなり頭に入ってくるし、ともすると美しささえ感じられる文章だと思います。作者さんの文章なのか訳者さんの文章なのか。好みです。
    今度は三時間ですか?楽しみです。

  • エルメスティーソとの対決があっけなかった。
    子供に始末できる相手ではないのは知っているだろうに。。

  • ☆本シリーズは三部作で『三秒間~』『三分間~』『三時間~』とのタイトルが用意されている真ん中に位置する作品である。前作を引き継ぐものなので、本作を100%楽しみたい方は『三秒間の死角』から開いて頂きたい。できれば本書のガイドもレビューも(本稿含め)何も読まずに一作目からお読み頂くことが興趣を削がぬ唯一の楽しみ方である。

     さて、アンデシュ・ルースルンドの名前が日本の読者の心に克明に記されたのは何と言っても『熊と踊れ』で、そちらは続篇含めて、登場人物のモデルとなった兄弟のうち書かれなかった実在の一人ステファン・トンべリとの共著。この後、絶版になっていたグレーンス警部シリーズが続々と再版される。こちらは服役経験のあるベリエ・ヘルストレムとの共著。

     いずれも強力な現実へのアンカー役としての助っ人を得つつ、素晴らしいリーダビリティを発揮しつつ物語るのはルースルンドの筆力そのものである。いずれの作品もページを開くなりその世界に引き込まれてしまう題材の確かさと、そのスリリングな語り口はあまりに魅力的だ。

     『三秒間の死角』は、『熊と踊れ』シリーズとハヤカワ文庫での再版の影に隠されてしまった格好で、ひっそりとこれだけが角川文庫から出版されており、『このミス』などでも決して高い評価を得ずに我々の眼の前を通り過ぎてしまった作品だったが、何を隠そう、あまりに遅くこの作品を手に取ったぼくには、『熊と踊れ』に比肩するおそらく最高級の傑作であった。

     刑務所内の著述はやはりリアリズムを担当するステファン・トンベリの面目躍如であったと思う。この作品は昨年、アメリカで映像化されたものが日本で公開され(『THE INFORMER/三秒間の死角』)ディテールはともかく、原作の持つダイナミズムは活かされ、それなりに劇場で楽しませてもらった。しかし、それにしてもこの孤高の主人公ピート・ホフマンの魅力は何だろう?

     孤高と書いたが、家族を何よりも愛し、なおかつ潜入捜査を選択し実行できる資質、国からも世界からも裏切られる暗闇のヒーローでありながら、打って出る計画の歯切れの良さ、そして読者をも騙し抜く圧巻の脱出行。どれをとっても現代の冒険小説と呼べる孤高の作品である。

     前作と異なるのはまず舞台だ。南米コロンビアの麻薬地帯、そして雇用種はアメリカ政府。北欧ミステリというよりも、ドン・ウィンズロウの『カルテル』などを読んでいる感覚に襲われる。ちなみにぼくは現代のページターナーを代表する二人(組?)の作家は、ドン・ウィンズロウとアンデシュ・ルースルンドだという体感を持っている。なので、余計にウィンズロウ世界にやってきたスウェーデン人主人公の活躍という興味をもって読めるのが本書である。

     前作を引き継いでいるので、一度使われた驚きは本書では再体験できないものの、前作にはないスケールでの大掛かりな逆転ミッションと、既に主人公の能力や特性を知っているが故の期待値に満ちたスリリングな仕掛けっぷりやアクションを楽しむことができる。そして何よりも我らがピート・ホフマンは絶対のスーパーヒーローではなく、妻と二人の子供を大切にする家族の父であり、心優しき生活者であるところが本書の肝である。

     本書ではグレーンス警部がもう一人の主役として、故国を離れての大活躍を見せる。アクション面ではなく、グレーンスならではの悩みや女々しさを帯同しつつ、それでもなお。本書の最大の見どころはむしろグレーンスの果たす役どころにあるかもしれない。ツイン・ヒーローの活躍が積み重ねられてできあがる特大スケールの物語世界は、必ずや多くの読者を引き込んでくれるに違いない。一作目『三秒間の死角』の実力に見合わぬ低評価に対し、本作はきっと大きなリベンジを見せてくれるに違いない。

  • グレーンス警部シリーズ。前作からのつながり、さらに広がる物語。コロンビアの麻薬の蔓延と組織、アメリカの要人を拉致とたくさんの要素がある。上巻はグレーンスの登場は少ないけれどコロンビアでの動きはとても読み応えがある。コロンビアに潜入捜査に入ったある人物の顔。家族への思い、生き延びるためということ。さまざまな展開、感情がある。潜入捜査のなかで起こる葛藤、スパイとしての立ち振る舞いと、麻薬や殺人への対処。アメリカ政府の本音と建前。そこに立ち向かうグレーンスたち。今作から次作へとまた楽しみや興味が広がる展開だった。前作の『三秒間の死角』(角川文庫)を読んでからのほうが楽しめるのでぜひ先に読んでいただきたい。

  • 下院議長の誘拐事件によって“対麻薬最終戦争”の火蓋が切られ、激化するアメリカとPRCとの戦いの中で窮地に立たされた潜入捜査員。ホワイトハウス上層部は彼をゲリラの一員として作戦の殺害対象に定めているのだ。絶体絶命の状況で起死回生を図る捜査員がグレーンス警部の協力のもとに見出したのはわずか三分間の空隙。その驚くべき計画の全容とは―。

    久しぶりの一気読み。ピートはもちろんのこと、グレーンス警部の大活躍にも満足。未訳の6作目が気になるが、三時間の導線も楽しみ。

  • 分厚い2冊の徹夜本だった。。。
    サスペンス・ミステリーとしての面白さもそうだけど、いつもに比べて圧倒的に読みやすい。それはいつも凄惨に描かれる犯罪被害者や貧困等の社会問題が出てこないから。
    少なくともグレーンス警部が劣悪な犯罪者やそこに至る背景に怒り憤りを感じる部分がないんだよね。。。
    そこがちょっと物足りなさを感じなくもない。。。
    まあ描かれてないわけじゃないんだけどちょいと弱いよね。
    まあこれ以上分厚くなっても困るか笑

  • CL 2022.2.14-2022.2.16

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著者プロフィール

アンデシュ・ルースルンド 1961年生まれ。作家・ジャーナリスト。ヘルストレムとの共著『制裁』で最優秀北欧犯罪小説賞を受賞。

「2013年 『三秒間の死角 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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