ジェニーのなかの400人

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152035554

感想・レビュー・書評

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  • タイトルを見て、多重人格の女性の話だろうと思いました。
    そして中表紙を見た所、こんな本の説明がありました。

    『アメリカ南部の片田舎に私生児として生まれたジェニーは、母親によって2歳のときから悪魔を崇拝するオカルト教団に入れられ、8歳で売春を強要された。十余年つづいた性的虐待と拷問の日々、彼女はたびたび意識を失い、見知らぬ人格にあとをまかせた・・・。』

    これを最初に見て読んでも、あまりに衝撃的な内容でした。
    驚きの連続です。
    まず400もの人格が一人の女性の中に存在するという事。
    本文には主要な何十かの人格が出てきて、400の人格の中にははっきりした人格ではなく、人格の破片というもののような物がほとんどでしたが、それでも驚きです。

    そして彼女がたった2歳の時から母親に虐待を受け、別の人格を作り出していたこと。
    虐待の相手が同性である母親だということ。
    その理由が、母親がジェニーの父親と結婚できず、生まれたジェニーにその相手の面影を見て憎しみの対象としただけでなく、自分と違って美しく才能があり賢い娘に嫉妬したものだったこと。
    400もの人格を有しながら周りの人間がそれを気づかなかったこと・・・。
    信じられないような残虐な虐待の数々・・・・。
    もし私がこんな経験をしたなら、すぐに死んでいたと思います。

    別人格の数というのはそのトラウマの程度によるものだそうです。
    そうだとすると、400という人格の数だけを見ても、ジェニーがどれだけ過酷な状況を生き抜いたのかが分かります。
    ジェニーという女性が、こんな困難な中で生きてこられた、今生きているという事が私としては1番の驚きです。
    ジェニーはとても強くしなやかで知性のある女性だと感じました。

    その人格を統合するため、ジェニーのセラピストが忍耐強く、思いやりをもって対応しているさまに心の救いを感じました。
    こんな素晴らしいセラピストにジェニーが出会えたという事に一筋の光を感じました。

    『けさ目をあけると、変化をもたらす未来が見えた。わたしはあまりにも長くうしろを見てきていた。そろそろ過去は変えられないのだということを学ぶときだった。未来こそがほんとうにだいじなのだ -ジェニーの日記より』

  • 凄絶な記憶。

    幼少期からの、ひどい、とても惨い虐待から精神を守るために400人もの人格を作り出した少女、ジェニー。
    彼女の生まれた環境自体はありがちなものかもしれない。
    しかし、祖母の死後から一転した母親の宗教団体へののめり込みにより、彼女の人生は壮絶な道へ切り替わってしまった。
    2歳から14歳にかけて、死んだ方がマシだと思う程、理解すると心が壊れてしまうような現実が次々と襲う。
    もっと物心ついた頃であれば死ぬ事も出来ただろうに、2歳の子どもに一体何が出来たのだろう。
    気が狂ってしまう方がよっぽど楽だっただろう。

    けれど、彼女の精神は別人格を作る事で生き延びさせた。
    痛みを受け入れる役割、愛情を与える役割、周りに認められようとする役割、別人格を慰めるための役割。
    けれど、その別人格たちの存在が彼女に日常生活を送る事を困難にさせていた。
    彼女の多重人格に気付いた心理療法士夫妻が、人格の統合を試みる。
    次々と現れる別人格が語る過去の記憶は、さらに想像を絶するものだった。

    久しぶりに読むのが辛い本だった。
    こんな現実が世の中にあると信じられなかった。
    彼女は人格の統合にも、過去の記憶を引き受ける事にもまだ時間がかかるだろう。

    自分の中に別人格が存在するのはどういう状態なのだろうか。
    それは、自分(アイデンティティ)とは何なのだろう、という問題だ。
    一つ思ったのは名前で、それは本書に登場する別人格が全て別名だったので、ふとそう思った。
    となると、名前は外部から呼びかけるもので(心の中で自分を呼ぶにしても)、他者の認識によって自己が存在するのだろうか。
    もしかすると、原人格のジェニーが消えてしまわなかったのも、自分の中の他者が彼女を認識してくれていたからなのだろうか。

    とまぁ、こんな哲学的な事は読書中はとても考えられなかったのだけど。
    このような現実を知る必要はないけど、私は知っていきたい。それは、自分の精神を危機にさらす事になるのかもしれないけれど。

  • 表紙のインパクトが圧倒的。
    中学の時に図書室にあったものを何となく手に取ったのがきっかけで読んだ。
    実話となると彼女が平穏に暮らせるようになることを祈らずにいられない。

  • 「失われた私」同様に アメリカの闇が詰まった一冊
    黒ミサなどのカルトの要素が強い さすがに400人全員紹介されているわけではない

  • 1993年刊行。

     多重人格症に罹患したとされる女性。その要因は性的虐待を含む幼児虐待の体験にあるとする。

     多重人格の要因/機序、そして実相は判然としないが、本書はその一要因を垣間見せる。

  • 20年くらい前に読んだが、あまりの恐ろしさにしばらくこの本の事が頭から抜けなかったのを覚えている

  • カルト団体によって、壮絶な虐待を受けた女性の実話。各人格の筆跡の写真は一見の価値あり。内容もボリュームも凄まじい。

  • 多重人格ってこんなに大変なのかー。
    それ以前に虐待が酷くてもうね…

  • まだ治療終わってないところで終わってしまっているからその後が気になります‥‥もう出版から17年も経っているのですから統合したと信じたいものですが。
    しかしアメリカ社会の闇に驚きです‥‥そんなカルト教が至る所で狂信されている実態に気持ち悪くなりました。というか、読んでいて想像を絶する数々の所行に何度読むのを止めたいと思ったか。400人出来て当然と思ってしまいました。
    幼児虐待の許し難さをひたすら痛感・再認しました。
    彼女に行われた数々の出来事を彼女が乗り越えるのはまだ相当かかってしまうことはよく分かります。セリーナが受け入れられているというのが凄い‥‥彼女の家族もどうなったんでしょうか。とにかくその後を知りたいです。
    小田晋氏による解説が大変興味深い。多重人格の態様について大変分かりやすく説明されている。訳者あとがきもアメリカにおける虐待とそれが与える犯罪者増加についての言及も注目したい。

  • 「わたしは自分のなかのほかの人たちと強い絆を築いてきました。だから、わたしはひとりぼっちではありません。」
    ハードカバー・400ページで上下段。ひたすら描かれるのは、ジェニーが受けた目を覆うほどの虐待の数々、恐ろしいサタニック・カルトの実際。そこから身を守るために主なものでも35もの人格を生み出したジェニーが、自分をどうにか一人に統合しようと、自分のなかの「自分」たちと語り合っていく。
    衝撃だらけです。ビリー・ミリガン読んで、多重人格知った気になってけど、気になってただけだった。そして虐待は許せない。虐待の連鎖がものすごく辛い。

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