堕天使拷問刑 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 439
感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152088918

作品紹介・あらすじ

両親を事故で亡くした中学1年生の如月タクマは、母方の実家に引き取られるが、そこでは魔術崇拝者の祖父が密室の蔵で怪死していた。さらに数年前、祖父と町長の座をめぐり争っていた一族の女三人を襲った斬首事件。二つの異常な死は、祖父が召喚した悪魔の仕業だと囁かれていた。そんな呪われた町で、タクマは「月へ行きたい」と呟く少女、江留美麗に惹かれた。残虐な斬首事件が再び起こるとも知らず…。

感想・レビュー・書評

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  • うわぁ〜‎!!
    余韻がすごい……。

    飛鳥部勝則作品で1番人気なの、頷ける……。
    好きです‎߹ㅁ‎߹)♡



    読める日を楽しみにしていたヽ(´▽`)ノ♡

    もしも復刻版が刊行されなければ読めなかっただなんて…(༎ຶ⌑༎ຶ)
    読めて良かったよ〜


    悪魔崇拝の祖父が亡くなった。
    両親を事故で亡くし、母方の実家へ引き取られる事になった中学1年生のタクマ。

    転校初日にナイフが飛んできたこのクラスでは、タクマを「ツキモノイリ」と呼ぶ。

    祖父の生前に起きた、町長の妻と娘2人斬首事件は、祖父の呼び出した悪魔の仕業なのか。

    そのせいでいじめにあうタクマを庇った少女、江留美麗は何者なのか——。


    読んでいる間、幸せに浸っておりました。

    場面展開し一見無関係そうなエピソードや引用が点在するのですが、そのひとつひとつに意味がある事が作風から分かっているので、注意しながら読みます。

    排他的な町で行われる『ツキモノハギ』
    憑き物を剥ぐ儀式。
    これはタクマの新しい母、大門玲が巫女となり、執り行われるという。

    宗教絡むと格段に面白い。
    どちらかと言うと、町ぐるみの閉鎖的空間での宗教のようなもの。
    胸糞は当たり前に存在する。

    ※エログロ控えめ胸糞バイオレンスほんのり、
    純愛ゴシックミステリー。

    タクマが美麗と哲学についてしていた会話

    「良い場所に出るまで歩くんだよ。悪い場所で止まってはいけない。幸せ者というのは幸せにらなるまで生きた人のことをいう」(本文より)

    タクマが思いを上手く伝えられない様子は純愛ならでは。

    美麗の言葉数が足りないのも、陶酔感も厨二っぽい雰囲気も好き。

    もうね、お腹いっぱいになりました。
    こんなに※を詰め込んだ1冊、なかなかない。

    読後の余韻と、その後に訪れる喪失感が…。
    個人的に『ハーモニー』読み終わった後以来だよ…(´;︵;`)

    好きだわ〜。
    宝物にする♡



    ーーーーーーーーーー

    書泉・芳林堂限定 特別小冊子

    【魔女考】

    古島提子は人を殺している。
    魅力的な彼女の事を、伊佐カンナは噂する。
    彼女に惚れた男は自殺した。
    彼女は魔女だろうか。

    30ページの短い話なのに、特有の飛鳥部勝則の世界観♡
    『魔女』について、画家とオペラと—。
    いいわ〜好きだわ〜‎߹ㅁ‎߹)♡


    【針女】

    田中滋元は、江留美麗のアパートへ。
    彼女はいつも裁縫道具を身につけていた。
    その中から針を取り出し、滋元の指に刺そうとする——。

    美麗も出てくるし、おそらく『黒と愛』のあの子も♡
    47ページの短編だが、異質な空気感が好き。
    会話とか、厨二笑
    密室殺人を短編でとか、ホントすごい。

  • 想像力という名の翼をはためかせ、何処までも飛んでゆけるような小説だった。書き出しの一文にはロマンスすら感じた。悪魔や天使が飛び舞う飛び切りのロマンスだが最高に楽しめた。

  • 飛鳥部勝則『堕天使拷問刑』読了。

    密室で全身の骨を砕かれた死体、親子三人が誰もいない場所で一瞬のうちに斬首された怪事件、そして新たに起こる連続殺人。舞台は排他的な僻村、ツキモノツキやツキモノハギ、ヒトマアマと呼ばれる因習、アンチバベルの美術館、そして強く根付く「悪魔」の概念。
    怪奇ミステリの王道を行く展開の中、まれびと・異端としてやってきた主人公タクマは奇妙な友人や美しい先輩、凶悪な不良、警察よりも先んじられるやくざもの、そして異端の美少女と出逢う。

    奇書並みに詰め込まれた悪魔についての衒学趣味や横断するジャンルは読み応えがあり、途中で挿入される本筋と関係のない20頁強のモダンホラー紹介も実に作者らしい。バカミスという観点でも面白く、度肝を抜かれる奇想には脱帽。とりわけ犯人の行動や、とある人物の行為には衝撃を受けるだろう。

    冒頭から提示される謎は魅力的で、作中で悪魔の仕業であると示唆されるが、確かに人間業とは思えない。飛鳥部勝則の作風からしても最終的に超自然的な展開になるのか現実的な落としどころがあるのか判然とせずスリリングにストーリーは展開していく。

    ヤハウェの軍勢とルシファーの軍勢が戦ったとされる創世記戦争が俄かに現実に溢れ出し、怒涛の伏線回収と“解決”が始まる第三部「天使が現れなければならない」は息を呑む読み応えのある内容で、この章だけでも一読の価値はある。

    荒唐無稽とも言える展開の暴走と、急速な収束と叙情的な幕引きは、徐々に怪奇ミステリの苦い後味から青春の切ない後味へと読者を導き、不思議と美しく物語が着地してしまう。
    最後の「ひと押し」には崩れ落ちる想いがした。忘れ得ない傑作。

  • 青春、オカルト、因習村。
    尖った要素が尖ったまま盛り盛りで、モザイク状にピースが嵌まったような面白さ!
    こんなん初めて読んだ。すごい!

    確かにミステリとしてはめちゃくちゃな部分も明かされてない謎も多いまま走り抜けたようなところはあるけど、エピローグで全て許せてしまったというか。
    ラブだね、ラブ。

  • ここまでめちゃくちゃにやっておきながら、綺麗なジュブナイル小説として締め括られるのにやられた。トリックより雰囲気を楽しむ作家。

  • ミステリでありホラーでありジュブナイルであり。

    あれもこれもとてんこ盛りでとっ散らかった感が強いが最後の一文の叙情ですべて許せてしまう。

  • 絶版プレミア本の再版という情報と、そのインパクトの高いタイトルに惹かれて購入。

    両親を亡くした中学1年生の如月タクマは、母方の実家である大門家に引き取られる。片田舎の資産家である大門家には祖母・松と末娘・玲がおり、玲はこの町で行われている"ツキモノハギ"の巫女であった。"ツキモノハギ"という名目で、"ツキモノイリ"とされる者に容赦ない暴行を加える儀式や、事なかれ主義を貫こうとする住民らに、町の異常性を覚えるタクマ。また、タクマが引き取られる数か月前には、悪魔崇拝者と噂されていた祖父・大造が怪死、その数年前には大造と町長の座を争っていた現町長の大渕の妻と娘2人が、首を斬られて殺害されるという事件が起こっており、町では大造が召喚した悪魔が行った所業ではないかと囁かれていた。その血縁者で外からやって来たタクマは、住民から異質な目で見られ―――。

    「"ツキモノハギ"と呼ばれる異常なしきたりが残る閉鎖的な田舎町で起こる凄惨な殺人事件。これは"悪魔"の所業なのか―――。」

    2段組み475頁の長編サスペンス・ミステリー。かなりのボリュームだが、非常に読み易いテキストなのでサクサク読み進められる。理解しがたい閉鎖社会の"常識"を受け入れられず、孤立を深め、逃げ場もなくじりじりと詰められていく緊迫感がGood。中盤は若干の中だるみを感じたが、終盤に入ると怒濤の展開で読むスピードも一気に加速。そのまま最後まで読み終えたが・・・明かされた真相にイマイチ納得出来ずにモヤモヤ。(特に、クライマックスで暴れていた○○。あれをあのような扱いで済ますのは、流石に無理があると思うのだが。)

    読み進めている間は楽しめたが、前述のとおり真相はしっくり来ず、また、(言葉にするのが難しいのだが、)作中で提示された各設定やエピソードが物語の結末・真相にうまく収斂出来ていない感じもして、心地良い読後感を得ることが出来なかった。なんとも残念無念。

  • 復刊に沸くSNSを見て、何だか分からないけど予約した方がいいのでは?と慌てて予約した。
    悪魔的発想に飲み込まれそうになるぐらい陰惨な田舎町。現実的な真相で拍子抜けするとともに、ほっとした。悪魔が犯人でした、と言われても信じてしまうぐらい徹底して怪しい。
    最後のメールにものすごくキュンとした。どんな美人でも、浮世離れしていても、中学生の女の子だよな、と思うと愛おしい。と同時に、それは1番伝わってほしい相手には伝わらないことが切ない。
    他2冊の復刊ももちろん予約した。

  • 本格ミステリなのか?それとも特殊設定ミステリなのか?と考えながら読んでいるとそのどちらでもない。「巨大な蛇が殺したんじゃない?」と言われると「そう言うならそうなのかもしれないけど……」みたいな感じで、はや特殊設定か!?と前傾姿勢になっているところをスっと退かれてしまう感じ。
    悪魔はいたのか、天使はいたのか、みたいなのも結果としてはまあいなかったのかな?くらいでなんだかふんわりしている。
    田舎の村の因習の恐怖、は確かにあったと思うが、そのクライマックスとしては姥捨山で、それは物語の中盤くらいで結構分かりやすく示唆されている。
    そんなこんなでミステリとしても、伝奇ものとしてもふわふわしていて、じゃあこの小説はなんなんだろう?と思いながら読んでいたところで、小説のラストで「ラブレターでした!」と言われ「なるほど〜」となる。基本的な小説の構成は作中作や雑多な設定の詰め込みなどドグラ・マグラ的な感じではあるのだが、ラブレターでしたということなので読後はなぞの爽やかさがある。しかし読み終わってしばらくして改めて考えるとラブレターとして長すぎんだろ。

  • 両親を事故で失った如月タクマ。母方の祖父の家に引き取られることになったが、閉鎖的な町に今だ残る不可解かつ理不尽な風習に身も心も翻弄されていく。その地に今だ残る宗教のようなものと言うのは何作か読んだが、これはまた毛色が違って新鮮だった。いつも読むのは心霊の類いを取り扱ったオカルト的なもので、訳のわからないものが主人公ないし、そのまわりの人間に危害を加えるという感じたが、この作品は少し違う。昔からある凝り固まった伝統、そこに昔からすむ人間はすでにそれが普通だと誰も疑問に思わない理不尽な風習がとにかく怖い。
    事件が起こっても警察にまず知らせるという形を取らない時点でもうかなり異様だが、暴力的な儀式も最高に気持ちが悪いし、それを見世物みたいに町人がみているのもかなりどうかしている。作中に出てくる不良中学生も(出会ったことがないだけかもしれないが)ぶっとびすぎている。どうにかしている、胸くそ悪いという展開が多く、フラストレーションがたまる。理不尽に責め立てられる主人公にとにかく不憫で感情移入してしまった。主人公がたまりかねて「ぶっ殺してやりたい」と心のなかで言い出したときは、そうだ!その通り!となってしまった。

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