ペルディード・ストリート・ステーション (プラチナ・ファンタジイ)
- 早川書房 (2009年6月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (664ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152090430
感想・レビュー・書評
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鳥人、昆虫人、サボテン人、水棲人、それと奇妙な怪物たちと人類が共存する都市ニュー・クロブゾンを舞台にした、猥雑でグロテスクな雰囲気満載のダークファンタジー。
主人公の科学者アイザックが、最初はだらしない印象だったのが、悪夢をまきちらす怪物の出現に街中がおののく中、数少ない仲間と闘っていくうちに、段々とヒーローっぽくなっていく。
ラストは思いも寄らない、もの悲しい終わり方だったが、久しぶりに読みごたえのあるSFだった。
緻密で想像力あふれる筆致に、読んでいて脳が興奮してくるのが感じられる。この濃密な雰囲気を壊さないためにも、安易な映像化には反対。
著者は『SFが読みたい!2010年版』で、日本の"オニ"や"カッパ"、"テング"といったモンスターも愛している、と言っているので、続編には是非これらのクリーチャーも登場させてほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
バス=ラグ界の説明の段階では面白かったけれど、お話としてまとまりがない。だから後半は完全に消化試合。おもしろいと思うことを全部書こうとしないでほしい。こちらは設定集ではなくて物語が読みたいんだから。
人間以外のキャラは魅力的。とくに蜘蛛が。 -
とにかく分厚い本である。
SF なのか、ファンタジーなのか。
ダークでゴシックなスチームパンク(サイバーパンク?)。
人以外に鳥人、昆虫型知的生命体、植物型知的生命体、
両生類人・・・何でもありで、作者の好き放題。
これを書いている時、作者はすごく楽しかったと思う。
とにかく、こんなぶったまげた小説は初めてである。
まだまだ知らなかった著者・作品があるのだなぁ、と実感。
文句なしに五つ星。
最後に「訳者あとがき」があるのだが、
小学生の読書感想文じゃないんだから、
細かくあらすじをタラタラ書くんじゃねえ!
本作品に続く「バス=ラグ」シリーズの作品についても、
あらすじが書いてある…orz 。
2001 年アーサー・C・クラーク賞受賞作品。
2001 年英国幻想文学賞受賞作品。 -
読んだきっかけ:新聞の書評+『キングラット』から
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かなり物語を堪能したつもりになって本を閉じれば、まだ十分の一程度しか読み進めていなかったことに気づいて驚く。それほどまでに密度が濃いというか、なんでもかんでもとでもいうか、あれもこれもというか・・・
舞台となるニュー・クロブゾンという都市国家では、人類は様々な形態の知的生命体と共存している。
主人公である、科学者アイザックの恋人にしてからが、ケプリと呼ばれる昆虫型の種族。知性があるのはメスのみで、体は人間の女性と同じながら、頭部は甲虫という形態。オスのほうは、カサカサ這い回る甲虫そのもので、同種間の生殖は、オスがメスの体をよじ登り、頭部に達して行われるという。うぇぇぇ・・・
人々(人類に限らない)の精神を喰らう夢蛾が跋扈し、詩をもって語る大蜘蛛が次元を自由に出入りし、産業廃棄物捨て場には機械の神が鎮座し・・・そんなニュー・クロブゾンの光景とともに、人類を含めたこうした種族の暮らしぶり、芸術、宗教までもが詳細に描き出され、その発想にはわくわくさせられる。
重大な罪を犯したとして、種族の掟により翼を切り落とされた鳥人族(ガルーダ)ヤガレクの、苦悩と孤独感に満ちた独白が、物語を引き締める。彼の罪を知ってしまうと、いささか鼻白む思いをさせられるが。
ミエヴィルが創造した、ニュー・クロブゾンも含めたバス=ラグと呼ばれる世界に関しては、ヨーロッパを中心としてコアなファンが多いというが、なるほど納得!
Perdido Street Station by China Mieville -
《バス=ラグ》と呼ばれる蒸気機関と魔術学が統べる世界で、最大の勢力を誇る都市国家ニュー・クロブゾン。
その中心は巨大駅ペルディード・ストリート・ステーションがそびえ、この暗黒都市では人間、鳥人「ガルーダ」、両生類人「ヴォジャノーイ」、昆虫人「ケプリ」植物人「カクタシー」など、様々な知的生命体が共存していた。
大学をやめた異端の科学者アイザックの元に、罪を犯して翼をもがれたガルーダのヤガレクがやってきて、飛翔の力を取り戻して欲しいと依頼する。
飛翔の研究中に手に入れた芋虫が、大変に危険な化け物で……。
クリーチャー好きには、かなりおすすめ。
全体的に暗くて、殺伐。