- Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152091512
感想・レビュー・書評
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そこひっくり返してきましたか
いやいやとても完成度の高い作品でした
しかしながらやはり読んでいて気になったのは
果たして須賀しのぶさんは宗教に対して肯定的なのか否定的なのかあるいは中立なのかというところでした
自分が感じたのはその3方向それぞれに揺れ動いているような感じです
ちなみに中立というのは肯定と否定の間にあるわけではなくあくまで三角形のそれぞれの頂点というイメージです
そしてあの暗黒の時代に宗教(カソリックと限定してもいい)が果した役割とは何だっのか考えさせられます
そしてそれこそがこの作品の主題であることは『神の棘』という題名からも明らかなのではないでしょうか
自分自身は父親の葬式はお寺であげ、新年には神社に初詣に行き、クリスマスに浮かれる典型的な日本人で
神様の存在は自分にお願いごとがある時だけ湧いてくる人間です
なのであまり「神」という存在を真剣に考えたことはありませんが
もしあのユダヤ人の虐殺が『神の棘』だとしたら
そして命令されあるいはそれが正しいと信じさせられ虐殺に手を染めたことが『神の棘』だとしたら
そしてそれが「赦される」ためのものだとしたら
そりゃあないだろうと
それを納得できる精神構造こそ理解出来ません
また作中で宗教は常に敵役を求めているという記述があり
恐ろしいことですが少しだけなるほどと思うところがありました
悪魔がいなければ神も必要とされないということです
これは神が神として存在しうるために悪魔を生み出しているあるいは悪魔が生まれるのを歓迎しているともとれます
ならば今現実の世界で行われている悪魔の所業も神が用意した棘なのでしょうか
止められない私たちに刺さった棘も一緒にいつか赦されるのでしょうか詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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「神の棘」「革命前夜」どちらもとてもいい本でしたよね。「また、桜の国で」も、もうすこし時間が経ったら読みたいと思っています。(須賀さんの本を...「神の棘」「革命前夜」どちらもとてもいい本でしたよね。「また、桜の国で」も、もうすこし時間が経ったら読みたいと思っています。(須賀さんの本を続けて読むのはパワーが要るので…)本棚を拝見させていただいて何冊か気になる本があったので、フォローさせて下さい。2017/02/04
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アルベルトは淡々と読者を欺いた。
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戦争の恐怖や愚かさが淡々と綴られている中で登場人物たちがどう考え、行動していったかが繊細に描かれていた。
是非最後のシーンは自分で読むべきものだと思う。 -
2人が最後に会話をするシーンが印象的。
すべてがここにつまっている気がした。 -
戦中の話なので読んでる間ずっと気鬱になっていたけど読んでよかった。終章ですべての印象が変わり、でもアルベルトはずっとアルベルトだったし、精神力は並外れて強いけど、ただ人間だったんだなあと思う。
長いしつらくてしんどいお話だけど終章まで読んでほしい。 -
ナチスドイツの支配下で、ナチスとして働いていたが失脚した青年と、彼の幼馴染の修道士のそれぞれの人生の交差。
終章がもう痛くて痛くて……戦争が終わればどうなるのか、こんな展開が待っているとは……それぞれに信じるものがあって、信じるものの名のもとになら、何をしてもいいのか。今自分がしていることはどういうことなのか。それを一人一人、考えていくことが必要なんだなあと思いました。国のため、宗教のため、思うことは大事かもしれませんが、それと行動とは、そんなにも、惑いがなく、やってもいいことなのか。昨今の国際関係を思っても、あらためて考えさせられます。
ライトノベルらしさはなく、戦時中のドイツ国内の様子から、こんなことを考えさせてくれた物語でした。私が今まで読んできたような「ナチスがやってきたこと」を描いたのではなく、違う角度から描かれているところが新しかった。
隠されていた事実はあぜんとしましたが、それもまた彼らしいのでしょう。彼は最後にあんなことを言っていましたが、選択の機会を与えられても、決してそうしないと思います。それが彼だから。言い訳をしない、妥協を許さない、その姿は美しくもかなしい。そこまでする理由が、彼の人生のどこにあったんだろう。