- Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152091840
作品紹介・あらすじ
「これから、わたしたちはどうなるの?」二人の愛する女から突きつけられたこの言葉に、ケマルは答えを持たなかった。彼の心はスィベルとフュスンの間を揺れ動き、終わりのない苦悩に沈む。焦れた女たちはそれぞれの決断を下すのだが……。ケマルは心配する家族や親友たちから距離を置き孤立を深める。会社の経営にも身が入らず徐々にその人生は破綻していく-トルコ初のノーベル文学賞作家が八年の歳月を費やして完成させた最新傑作、待望の邦訳。世界文学最高の語り部が贈る愛の寓話。
感想・レビュー・書評
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もし、今恋愛から遠くにいる人や、恋人とうまくいっている人には理解しがたい世界で、失恋した人や強烈な片思いの人ならシンパシーを感じる物語なのかもしれない。
ともあれ、フュスンの家に8年も通い詰め、ついに結婚というところまで来たケマルさん。その間もフュスンの家からいろいろなものをこっそり持ち出し、コレクションに加えていく。やはり、気味が悪く、受け入れがたい。
結婚が決まっても、フュスンの葛藤には全く頓着しない。観察物のように彼女を愛でながらも、昔置き去りにされた時の彼女の悲しみや、女優になりたいという夢に本気で向き合うことはなかった。
それは、ケマルさんが自分の思うような理想像の彼女しか欲しくなかったからでは。
コレクションした物たちは、いわゆる死んだもの。なにも裏切ることなくケマルさんの傍らでフュスンを思い出すよすがとなってくれる。
だから結婚目前で彼女を失ったことは、ケマルさんにとっては悲しいばかりではなさそうだ。
永遠に彼女の記憶とともに穏やかに過ごせるのだから。
※うっかり自分で「これいいね」ボタンを押してしまいました。
どうやったら取り消せるのでしょうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恋愛小説というボーダーを軽々と飛び越えた長編作品
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文学
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トルコは僕たちのイメージするように、内乱や熱心者達の国じゃない。そこに人々の営みがあって、アタテュルクの言葉の下で、愛やセックス、様々な情景が入り混じる普通の国だ。ただ、それにしてもこの病的としか言えない愛を、どう受け入れればいいのだろう。言葉は一つ一つが人間の意志として記憶に残る。僕もたぶんいつかトルコへ行く。パムクという一人の作家のための、「無垢の博物館」を見るために。
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2006 年ノーベル文学賞受賞後の初作品。
1970 年代のイスタンブールを縦横無尽に利用して、
遠縁の娘フュスンへの愛、フェティシズムを描く。
主人公ケマルの人生、生活のその時その時を、
数多く積み重ねる手法が取られ、
一体この物語は何処に着地するのかと思いつつも、
終盤のメタ的展開を読めば納得。 -
プルースト的な記憶の物語。一見恋愛小説のようだが、本当の主人公はイスタンブル。
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(後で書きます)