ひかげ旅館へいらっしゃい

著者 :
  • 早川書房
3.23
  • (5)
  • (23)
  • (49)
  • (9)
  • (2)
本棚登録 : 241
感想 : 41
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094629

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 辛い時、悲しい時、いつも手紙で相談にのってくれたのは、別れた父。その父が亡くなり、主人公は父が経営していた旅館へ行ってみる事に。
    そして初めて知る。そこで父は女装し「おかみ」をしていたということを―。

    金色に黒の横縞の壁に、イルミネーションのコードが巻きついた手すり。極めつけにどこか卑猥な内風呂。外から見ても、中から見ても、下品で悪趣味なひかげ旅館。でもそのごちゃごちゃとした猥雑なところが、女装癖のあるおかみに合っているという気がしなくもない。

    父の死をきっかけに、その旅館の手伝いをする事になった主人公・なるみ。
    そこから見えてくる父であるおかみの姿。
    なるみやひかげ旅館の人達の悩みにうまい具合に寄り添うような言葉選びだとか、妙な例え話だとか。そういうのが説得力があるというよりは、胸にすとんと落ちてくるような感じ。なんか良い。
    なんだかんだで一風変わったおかみは、周囲から慕われてたんだよなぁ。

    ストーリー的には結構好み。何が良いって、もちろんおかみの魅力にかぎる。彼女(彼?)が話す拡大解釈された一寸法師の物語が、今の世を皮肉った感じでなかなか面白い。
    ただなるみの、父親が女装していたという事実を、割とすんなり受け入れてしまったのに違和感が。もっとこう娘として複雑な感情があったりするでしょうよ。天藤とか源五郎の人となりも、もっと掘り下げて欲しかったな。

    綺麗に終わったと見せかけて、これからなるみが最低な夫(読んでいて胸糞が悪い)とどう決着をつけるのか心配にもなる。

  • おかみさん、会ってみたい。
    たぶん、すぐには理解できなくても、
    後から後からジワジワとおかみさんの言葉が沁みてくるんだろうな。
    いずれはそんなおばあちゃんになりたい。
    いや、経験が浅すぎるか…

  • 書館で借りたもの。
    母と別れた父が亡くなったとのしらせを聞いたなるみ。父が経営していた旅館を訪ねるが、そこにいたのは傷心も忘れてしまうほど個性的な従業員とお客だった…。

    なぜか訳ありの客を引き寄せてしまい、それを受け入れるひかげ旅館。
    そのお客さんたちが結局どうなるのかが描かれていない(いい方に向かうか違うのか、そこは知りたかった)。

  • 母と別れた父が亡くなったとのしらせを聞いた
    なるみ。父が経営していた旅館を訪ねるが、
    そこにいたのは傷心も忘れてしまうほど個性的な
    授業員とお客だった…。心に残る、温かい旅館小説。

  • 230頑張れ!作者には大変失礼だけど、浅田次郎ならもっと泣けるお話につくったやろうなあ。でも希望の持てるお話でした。

  • ドラマになりそうな映像が浮かんできました。
    ドラマだとキャスティングは…なぁんて。
    続編が読みたい感じ。

  • この旅館に集まる人は、確かにみんなひかげもの。
    困った人もいるけど、みんなおかみさんのように少しずつ強くなる。いや、強くなるではなくて、生きる術を身につけていく。といった感じ。
    つらいことがあるなら、いつでもいらっしゃい。
    そんな場所が、すべての人にありますように。

  • おかしな旅館で何となく人が流れ着くのが分かる。
    残した言葉の端々で皆の心を包んでいる、おかみさんの存在感が大きいです。
    個性豊かで味わい深い物語。

  • 「ひかげ旅館」
    名前からして、裏であるとか、世間から認められない、ほんのり不幸なにおいがする物の、その不幸でさえ、あまり華々しいものではなく物悲しい…
    そんな感じの旅館は、ヒロインの父親が営んでいた。
    夫婦仲が上手く行かなくて故郷に戻ってきたなるみは、なりゆきで、少しの間旅館を手伝う事になる。
    あまりお客は来ないのだが、たまにくればわけありな人たちばかり。

    悪くはないけど良くも無い…
    全体に、陽の当たらない路地のにおいがする。
    小学生の源五郎(おじいちゃんみたいな名前ですが)が、なかなか良い味を出している。
    全体的に人間の描き方も薄い感じがするが、
    なるみのダンナとの会話は、ああ、男ってこうだよね~!と、あるある過ぎて、そこはリアルだった。

  • 夫との諍いに疲れ、幼い頃に離別した父の遺した旅館を訪れたなるみ。
    そこには風変わりな従業員と風変わりな客が。
    面白い設定、魅力的なキャラ満載なのに
    上滑りなまま終わってしまった感。
    勿体ない。

    【図書館・初読・3/18読了】

著者プロフィール

神奈川県生まれ、東京育ち。日本大学芸術学部文芸学科中退。日本推理作家協会会員。2009年、『山姫抄』(講談社)で第4回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。『泣きながら、呼んだ人』(小学館)が盛岡のさわや書店が主催する「さわベス」1位を獲得。2011年に刊行した『嫁の遺言』(講談社)が多くの書店員の熱い支持を受けベストセラーに。その他に『蛇の道行』(講談社)、『四月一日亭ものがたり』(ポプラ社)、『ひかげ旅館へいらっしゃい』(早川書房)、『ごめん。』(集英社)など。昨年刊行した『カスタード』(実業之日本社)は奇跡と癒しの物語として多くの読者を勇気づけ、本作はその続編にあたる。不器用だけど温かな人情あふれる物語には、幅広い世代にファンが多い。

「2022年 『ロータス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

加藤元の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×