いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学

  • 早川書房
3.78
  • (33)
  • (45)
  • (40)
  • (6)
  • (3)
本棚登録 : 568
感想 : 57
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095244

作品紹介・あらすじ

金や時間など何かが足りないと思った瞬間、あなたの認知能力は落ちている。欠乏が欠乏を生むメカニズムを精査し、従来の行動経済学の常識さえ塗り替える、天才研究者のコンビによる待望の解説書

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「貧すれば鈍する」と言われる。常におカネや時間などの不足分に気を取られて(どんな手を使ってでも埋め合わせよう!)IQが下がってしまっているという。「まな板の法則」のように不足分に関する雑念がCPUを専有して、切るべき具材を置くスペースが狭くなるのだ。つまりピンチ度合いが増すほどに酔っ払っているくらい思考力が低下してしまうということ。本書はそんな「欠乏の行動経済学」について解説されている。

    (行動)経済学からの説明は本書に譲るが、自己啓発系の本家「7つの習慣」の第一の習慣「主体性を発揮する」ためのマインドセットとしても本書は重要である。つまり「0の習慣」ともいうべきなのが「心身ともに余裕のある状態を作ること」である。本書のアドバイスに従えば、「第三の習慣」で最重要視される「緊急ではないが重要なタスク」を継続できるようになる。
    行動経済学の権威であるダニエル・カーネマンが「ファスト&スロー( https://x.gd/18Q0p )」で説いた認知バイアスの「システム1」に囚われないようにするためにもまずは「余裕のある状態」に自分を置くことである。
    そのためにはおカネも時間もギチギチに使い道(予定)を詰め込むのではなく3~4割程度の余裕(バッファー)を設けておきたいところだ。


  • 【感想】
    いつも時間がない、時間がないと思いがちだったけれども、
    時間がないと言う欠乏性に陥っていることに気づかされた。
    特に、身体の疲れにより休息が必要と同じように、精神的にも消耗したときに回復を必要とするというのは心に残った。
    育児はまさにこれ。

    あと、今まで貧困は金銭面しか考えていなかったけれども、
    心理的状況や処理能力まで目を配ると言う事はなかった。これも新発見。

    【心に残ったところ】

    ・ひとつのことに集中するということは、ほかのことをほったらかしにするということ。

    ・欠乏とは、自分の持っているものが必要と感じるものより少ないこと

    ・欠乏は人の心を占拠する

    ・欠乏状態とは、失敗できる余裕がないことだけではく、失敗する場面が多い。

    ・だから、スラックがあることは、豊かさを感じられ、心のぜいたくにも感じる。
    (大きなスーツケースに物を詰める時、トレードオフになっていることにすら気付いていない)


    ・トンネリングは、トンネルの内側のものが鮮明に見えるが、トンネルに入らない周辺のものは何も見えなくなる視野狭窄の状態。

    ・トンネリング(差し迫った欠乏時に起こす。
    例:借金を重ねることなど)を起こし、ほったらかしにし

    ・ジャグリング(緊急の課題を曲芸並みに次々とやりくりすること)によって欠乏の罠に陥る

    ・スラックをもとう(ショックをやわらげるくらい)

    ・本人の意思の問題ではなく、欠乏マインドセットを知り欠乏の罠を避ける方法、やわらげる方法を
    ・ダイエット、孤独感、借金なども欠乏マインドセット


    ・処理能力に負荷がかけられると、衝動抑えるのは難しくなる。
    (控えたいケーキを食べることや、言うつもりのない言葉を口走るなど)

    ・自分が孤独になると思い込んだ人は2倍近くたくさん食べている。
    他には脂っこい食べ物の摂取量がかなり多い。

    ★貧困は物質的は状況に重点が置かれがちだが、心理的状況、処理能力にも目を向ける必要がある
    (よく眠れていない?頭をきちんと働かせるのが難しい?気が散りやすい、動揺しやすい?そんなことが毎日起こる?)



    ・圧倒的に1番多かった答えは時間。(中略)
    もっと自由な時間が欲しいのだ。
    人は身体的に疲れきって休息を必要するのと同じように、精神的にも消耗するので回復する必要がある。
    ところが欠乏が長引くと処理能力の負荷は蓄積されがち。

  • .
    いつも「時間がない」あなたに/センディル・ムッライナタン、エルダー・シャフィール
    
    最近、仕事が多忙になってきて、あー、忙しいなぁ、時間が足りないなぁと思っていたところ、この心理状況のプロコンって何だろう?と思い、手に取った本。
    
    この本は様々な実験から、時間のみならず、金銭面でも、人が欠乏を感じた時の心理的影響と生産性の変化を分かりやすく教えてくれる。
    
    この本のキーワードは、"スラック"、"トンネリング"、"ジャグリング"である。
    スラックとは、余裕があることを指す。大きな旅行カバンだったら、必需品以外も入れることができ、お土産用のスペースができるかもしれない。これがスラック。
    トンネリングとは、トンネルに入ると抜けた出口から入る光が見え、それ以外は真っ暗で見えない。人は予定が詰まっている時、急用に追われている時、目の前のタスクにしか目にいかず、他の要素は見えなくなる。この状況をトンネリングと呼ぶ。
    ジャグリングは忙しい人は一つタスクが完了したとしても、すぐ次の急を要するにタスクを処理しなければならず、急用の連鎖を意味する。
    
    どんな人も逼迫する状況では、トンネリングが発生する。重要な要件があっても先延ばししていると、目の前のタスクが終わったら、その重要な案件の締め切りが来る。ジャグリングが発生する。
    これを防ぐためにはスラックが重要である。
    
    スラックを作ることで効率的になった事例、研究結果がとても面白かった。

  • 最低限の生活必需品を手にするのに絶えず悪戦苦闘しなくてはならないと思うと、将来を考える意欲はいっさいわかず、努力する意欲を奪われるばかりだ。

  • 「写真を撮るというのはフレームに入れるということで、フレームに入れるということは締め出すということだ」

    欠乏が及ぼす効果について書かれている本。時間が足りないという人は、時間を手に入れても結局時間が足りないという。欠乏状態では集中力が高まる。しかし、それ以外のものが見えない。そして、短期的なものしか見えず、将来のコストは無視される。よって、欠乏のスパイラルにはまってしまう。お金がない人は、保険が必要でも入らない。そして、保険がないためにさらなる出費が必要になる。ここで、保険に入る費用はさらに捻出されなくなる。

    本書では、足りない状態にいる人々が負の連鎖にはまる姿が多く紹介されている。

  • おすすめ。「欠乏」という状態について「トンネリング」「ジャグリング」「スラック」などをキーワードを基に、どのようにして起こり、どんな負の影響があるかを解説。スラックの重要性がよく分かる内容。汎用性のある内容で、一度は読む価値は間違いなくある

  • 「時間がない」「お金がない」などの欠乏(◯◯が足りない)とその影響を解説した本。貧困の解説が多い。欠乏によって頭の中がいつもその事にとらわれ処理能力が低下し、肝心の欠乏を引き起こしている原因を解決するのが難しくなる負のループに入ることが解説されている。時間がない場合は最悪すべてのスケジュールをドタキャンして断ってしまうこともできるが、貧困でお金がない場合は何も手放すことができない。そのため貧困の欠乏の負のループは脱出が難しいという。

    欠乏とそれによる処理能力の低下は新しい視点でとても参考になった。豊かな内に欠乏状態にならないように対処することと、処理能力は筋肉のように疲れると落ちるものであるという点はこれからの生活ですぐに役立てられるところ。

  • 初級者向き

  • 橘玲の推薦本。
    読んで改めて、余裕(ゆとり)が大事だと思った。

    常に忙しく、コップの水がいっぱいの場合は新しい水を入れることが出来ず、入っている水を捨ててから入れるしかない。
    切羽詰まった状況だと目先のことしか見えず、大切なことを見落としてしまう可能性がある。

    心に余裕をもつ生活が大切だと思った

全57件中 1 - 10件を表示

センディル・ムッライナタンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
瀧本 哲史
シーナ・アイエン...
リチャード・セイ...
J・モーティマー...
ジェームス W....
ジャレド・ダイア...
佐々木 圭一
リンダ グラット...
トマ・ピケティ
クリス・アンダー...
ベン・ホロウィッ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×