陰の季節

著者 :
  • 文藝春秋
3.46
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本棚登録 : 307
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163180809

作品紹介・あらすじ

息詰まる攻防。かつてこんな警察小説があっただろうか。警察一家の気配が描かれ、警察内の人事問題を真っ正面から扱った、第5回松本清張賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 表舞台にはあまり出てくることのない、人事等を担う警務部内の人間模様を描いた短編集。
    第一線で活躍する警察官たちの物語とは違い、犯罪者との華々しい攻防戦はないけれど、警察官たちの内面が丁寧に描かれてあり胸が締め付けられた。

    警察といえど体制は民間企業と同じ。時に人事異動に備えて大規模な人事パズルに頭を悩ませることも。地味な作業だけれど組織を創る上で決して欠かせない作業である。ここを疎かにすれば組織全体のバランスも崩れ業務にも支障をきたすだろう。
    縁の下の力持ち、という言葉がよく似合う今回の登場人物たちに共感を持った。

    表題作と『黒い線』が特に良かった。
    同僚たちから「陰の人事権者」と囁かれる警務課調査官のエリート警視・二渡真治が特に魅力的。いつも冷静で感も冴えていてクールな印象を持つ二渡が、同僚に対して時々見せる温かな眼差しに救われた。
    もっと二渡の物語が読んでみたくなる。

    それにしても、男社会の中に生きる少数派の婦警たちの苦労には胸が締め付けられる。
    鼻が利くとか絵が上手い等、仕事をする上での強みを持って男たちと対等に張り合おうとする婦警もいれば、敢えてマスコット的存在に甘んじて笑顔を振りまき男たちの間を無難に渡り歩く婦警もいる。
    どちらが正解かなんて野暮なことは言わないけれど、封建的で頭でっかちな男たちと共に仕事をすることは、特に日本国内ではどこの社会も大変なことだとつくづく思った。

    • mofuさん
      地球っこさん

      二渡さんのシリーズはこんなに続いているんですね♪
      人気がある証拠ですね。
      しかも仲村トオルに上川隆也と二人の俳優さんにも演じ...
      地球っこさん

      二渡さんのシリーズはこんなに続いているんですね♪
      人気がある証拠ですね。
      しかも仲村トオルに上川隆也と二人の俳優さんにも演じ分けられていて(//∇//)

      またこのシリーズは追いかけていきますね。
      たしか『顔FACE』は昔テレビドラマで見たような。。
      仲間由紀恵さんが主演だったかな?
      読んで確かめてみますね。
      ご紹介して頂いて、ありがとうございました(*^^*)
      2022/06/12
    • 地球っこさん
      mofuさん

      『顔』のドラマ、覚えておられましたか!
      私はあのドラマのオダギリジョーが大好きでした。
      ツンな感じもよかったけれど、最後の笑...
      mofuさん

      『顔』のドラマ、覚えておられましたか!
      私はあのドラマのオダギリジョーが大好きでした。
      ツンな感じもよかったけれど、最後の笑顔にやられました。
      でも、あのオダギリジョーが演じた刑事さんは小説にはいなくて、残念でした……

      mofuさん、私の書き方が悪かったのですが、二渡さんが主だって登場するのは、「陰の季節」と「刑事の勲章」だけだったと思います。
      あとの〈D県警シリーズ〉は、ほんのちょっとの脇役としての登場なんです。
      誤解させてしまったかも、ごめんなさい(^^;
      2022/06/12
    • mofuさん
      地球っこさん

      オダジョー!カッコよかったですよね〜♡
      朝ドラのほのぼのお父さんのオダジョーも良かったけど、刑事役もハマってますよね♪
      小説...
      地球っこさん

      オダジョー!カッコよかったですよね〜♡
      朝ドラのほのぼのお父さんのオダジョーも良かったけど、刑事役もハマってますよね♪
      小説の中には登場しないなんて…残念。
      でもあのドラマ好きだったので読むのが楽しみです。

      あと二渡さんは脇役でもいい味出してそうなので、シリーズを追いかけてみますね(^o^)
      2022/06/12
  • 半落ちや64は読んでいたのにデビュー作を読んでいなかったことに今更ながら気付いて読み終えました。

    警察組織の監察、鑑識、秘書課など今まであまり中心とされていなかった裏方の管理部門で起こった問題に焦点を当てた短編集。
    組織内の心理戦が多く謎が解明されても綺麗に終わることはなくどこかモヤっとしてしまうところもありましたが面白かったです。

  • 松本清張賞を受賞した表題作を含む、四編が収録された短編集。

    横山秀夫さんのデビュー作です。
    警察小説と銘打つ作品は数あれど、警務課、監察課、秘書課など、これまで取り上げられなかったと思われる部署にスポットを当てる、その着眼点が素晴らしいと思いました。

    殺人事件の捜査でなくとも、謎の提示から真相の解明に至る道筋は、ミステリそのものといった印象で、更に言うならこの作品集は、警察内部の日常の謎といった趣もあるのではないでしょうか。

    「新しい警察小説」という言葉にも納得の一冊です。

  • 警察の裏側を描いた話。
    内部の出世競争は激しく、みんなが人事に敏感だ。その人事権を握るエース。だけど、人間誰しも完璧ではない。出世ばかり気にして、友情も家庭も無くしてしまうのはあまりにも哀しい。

  • わけあり

  • 面白い推理小説ではある。読んでいて警察内部の組織の実情や登場人物の心情がよく描かれていて飽きない。しかし、陰の季節と地の声の2篇を読んで、残り2篇が読みたいとは思わなかった。推理に徹しまた描写が現実的であり、ユーモアや、ロマンスや、冒険、そういった楽しみごとがないせいだろうか。

  • (収録作品)陰の季節(松本清張賞(1998/5回))/地の声/黒い線/鞄

  • ⑧/101

  • これも横山特別基準で★4
    4.0点

  • 2015.1.24

  •  警察のなかの出世とか天下りとかのドロドロした所を中心に話が進む。読んでてすっきり感はない。短編だけれど、主人公はいろいろ。二渡さんを中心に話を進めてほしかったなあ。

  • 横山さんのD県警シリーズ第1作目の短編集。横山さんは僕の中では半落ちでブレイクした作家というイメージが強いのだが本作はそれより前の98年の作品で、第5回松本清張賞を受賞している。以下に詳しい感想があります。http://takeshi3017.chu.jp/file5/naiyou12505.html

  • 64(ロクヨン)を読んで、読友さんに「D県警シリーズ」を教えて頂きました。横山秀夫さんのデビュー作になるのですね。警務課調査官二渡が主人公で架空の警察本部D県警の管理部門人事責任者の物語。表題作「陰の季節」は、人事異動の内示発表の5日前、3年前に民間企業の産業廃棄物不法投棄監視センター専務理事に天下りしていた尾坂部道夫が、“3年で辞める”という暗黙の掟を破り、「辞めない」と言い出す。人事担当の調査官・二渡がその理由を調べ始めると……尾坂部が結婚間近の尾坂部の娘が被害にあった暴行事件を捜査していた。

  • 内容紹介
    天下りなどの人事問題に真っ正面から取り組んで、選考委員の激賞を浴びた松本清張賞受賞作ほかテレビドラマ化されたD県警シリーズ

  • 横山秀夫氏の作品は「半落ち」しか読んだことがありません。あまり感じるところがなかったんで、今回はと期待してみたのですが、やはり私には、ピンとくるものがなかったです。確かに警察内部の話って興味深いものではあるのですが。

  • 〈内容〉警察一家の要、人事を担当する二渡は、天下り先ポストに固執するOBの説得にあたるが……。警察小説の新たな地平を拓く話題作。

  • 流石 横山秀夫、流石 松本清張賞受賞作。
    派手さはないものの、それぞれの心情、葛藤、苦悩が綴られていき、ラストで布石が収斂していく様は、読んでいて「ふーっ」とため息を連発させられる。
    妙な「横山秀夫不足」を感じて久しぶりに2冊読んだ。
    やっぱりいいわ。

  • (2012-06-29L)

  • 横山作品。クオリティは相変わらず高い。警察小説は多いが、同じと感じさせない。

  • 馴染めなかったのは、どう足掻いても共感できない年齢の物語であるからかもしれないし、決して自分のものとして想像したくないしできない世界だからかもしれません(だってありふれ過ぎてるし)。現実のつまらなさなんて当然だし、敢えて読書でまで再確認したくもないのだ。
    そういう意味では、丁寧な描写力は卓越しているのかもしれない。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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