デッドエンドの思い出

  • 文藝春秋
3.59
  • (277)
  • (370)
  • (764)
  • (43)
  • (8)
本棚登録 : 2637
感想 : 457
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163220109

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いい本です。
    今、苦しさの只中にいて、「頑張れ、頑張れ」と力強く励まされるよりは
    隣にすわって肩をぽんぽん、と静かにたたいてほしい人。
    ビュービュー空気をかき回すハイテクエアコンの温風ではなくて
    小さなろうそくに灯った炎で、ゆっくり心をあたためたい人に。

    目次の隣の頁に、ドラえもんの腕時計の写真が載っているのですが
    私は幼いころ、同じ年頃のお友達ほど、ドラえもんが好きではありませんでした。
    『赤毛のアン』とか『若草物語』が大好きな、西洋かぶれの女の子だったからかもしれません。
    でも、大人になって、今、この本を読んだあとに
    ふすまの前で寛ぐドラえもんとのび太を見ると、なんだかしみじみと涙がこぼれます。
    ささやかな普通の暮らしの中で、寄り添って生きる幸せが溢れるようで。

    収録された5つの短編を、よしもとばななさんはあとがきで
    「どうして自分は今、自分のいちばん苦手でつらいことを書いているのだろう?」
    と思いながら書いた、つらく切ないラブストーリーばかりです、と綴っているけれど
    私には、包み込まれるような、温かい印象が残りました。
    つらい出来事が起こっても、そっと傍に来て思い遣りに満ちた言葉をくれる人がいて
    沈み込みそうになる主人公の心を揺るぎない日常に引き戻そうと
    突拍子もない行動に出る人がいて。
    男とか女とか、大人とか子供とか、そんなことは関係なく
    大切な誰かと、ただ寄り添ってこつこつと生きるのが、どんなに尊いことか。

    出産を控えての執筆だったというよしもとばななさん。
    新しい命を迎えるために、つらい記憶を物語の世界に解き放ち
    空いたところにきれいな空気をいっしょうけんめい吸い込もうとしているような一冊です。

    • まろんさん
      円軌道の外さん☆

      アンソロジーの中にあった『あったかくなんかない』があまりに素晴らしくて
      この短編が収められた本は絶対読まなきゃ!と思って...
      円軌道の外さん☆

      アンソロジーの中にあった『あったかくなんかない』があまりに素晴らしくて
      この短編が収められた本は絶対読まなきゃ!と思って借りてきたんです。
      もう、紹介してくれたアンソロジー、ありがとうー!!!
      と声を大にして叫びたくなるような本でした。

      ばななさんは、ずうっと前に『キッチン』と『つぐみ』を読んだきりだったんですが
      円軌道の外さんが最も影響を受けた作家さんとあらば、より張り切って読まなければ!
      薦めてくださった本、図書館で探してみますね(*'-')フフ♪
      2013/04/16
    • ニノミィさん
      こんばんは(^-^)/ ニノミィです。フォロバありがとうございました。本の感想を語り合いたくてブクログを始めたので、私のつたない感想を読んで...
      こんばんは(^-^)/ ニノミィです。フォロバありがとうございました。本の感想を語り合いたくてブクログを始めたので、私のつたない感想を読んで、自分もその本を読んでみたいと思ったと言っていただけて、とても嬉しかったです。益田ミリさん、本当にオススメです。よしもとばななさんなら『哀しい予感』をオススメします。こちらもつらいお話のようで、どこかに希望を感じれる作品だと思います。初期の作品ですが、今でも一番好きな作品です。

      こちらこそ、これからよろしくお願いします(^O^)
      2013/04/17
    • まろんさん
      ニノミィさん☆

      おお!本の感想を語り合いたくて、ブクログにいらっしゃったんですね。
      私も、同じ気持ちで去年の3月にブクログを始めたので、と...
      ニノミィさん☆

      おお!本の感想を語り合いたくて、ブクログにいらっしゃったんですね。
      私も、同じ気持ちで去年の3月にブクログを始めたので、とてもうれしいです♪
      益田ミリさんも、よしもとばななさんも、ニノミィさんの本棚やレビューを参考に
      わくわくしながら開拓していこうと思っています。

      本のことでおしゃべりしたくてたまらなくなったら
      ぜひまた声をかけてください!
      私もニノミィさんの本棚に、せっせとおじゃましようと思っているので(*'-')フフ♪
      2013/04/18
  • たまにこういう小説に出会えるから、読書っていいよなあって思われせてくれる本。
    どれも切ない話だけど、小さな救いがあって、僅かに希望を感じられるところが、今生きてる日常にマッチしてて良かった。

    2020.9.20

  • 「キッチン」や「TUGUMI」の揺るぎもすごく好きなんだけど、この痛みは女性ならきっと知り得るもの。明らかな状況を重ねて共感するんじゃないのに泣けてしまう。ばななさんはそれぞれ女性の持つ心の襞を知っている。恋人を取られました、捨てられました、大切な人が死にました、どれだけ傷付けられても他人と離れることはできなくて、他人の力で回復していくしかない。

  • どのお話も切なくて、あたたかい気持ちになれる短編集。
    冒頭の『幽霊の家』が特に好きでした。
    時間を置いて読み返したい素敵な小説でした。

  • 「幽霊の家」と「デッドエンドの思い出」が特に好き。じわじわあったかくなれる一冊。

  • 胸に抱いていたもやもやが読んでいくうちにほぐれていって、じんと染み入るようだった。特に最後のデッドエンドの思い出には、自分は自分でいいんだと思える、心に刺さる台詞がいくつもあった。
    情景の描写も美しく、この世界にずっと浸っていたいと思うほど。

  • 24/100冊目
    .
    キッチンは設定が好きになれなかったけど、この本はすごくありそうな日常を掻い摘んだ話ばかりで引き込まれた。
    よしもとばななさんの描写も好きだなって思った。
    悲しいエピソードもふわっと丸く包み込んで消化させちゃう感じ。
    自分たちは貧しさを感じずに生計を立てられる、結構相対的に見たら幸せな場所にいることを自覚していて、でもそれは恥ずかしいことじゃないよ、って、受けとめてくれる優しさがある。
    人それぞれの感性に寄り添ってくれる、そんな本。

  • ただただ途方もなく限りなく、
    未来へ続く、幸福で満ち満ちている本

    幸せとは何か、幸せをひとつの形として認識できる本。

    短編集ですが、
    「デットエンドの思い出」
    「おかさーん」
    が好きです。

    穏やかで静かで幸福でイチョウの木なのです。

  • 五つの話

  • 再読。
    表紙の強い印象と各話のなかで描写される銀杏の紅葉がリンクして、この季節には読み返したくなる。
    特に表題作は自分にとってとても大切な作品。
    自分の背骨のような、人生で大切にしていることだけれど、
    たまに「これでいいのかな?」と迷った時に「いいんだよ」と肯いてもらえるような。
    他人から見たら小さな世界で同じことを繰り返す日常でも、心は無限なんだよ・・・というような。

著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

よしもとばななの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
綿矢 りさ
よしもと ばなな
瀬尾 まいこ
吉本 ばなな
よしもと ばなな
よしもと ばなな
吉本ばなな
吉本 ばなな
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×