送り火

著者 :
  • 文藝春秋
3.40
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本棚登録 : 439
感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163223704

作品紹介・あらすじ

鉄道が街をつくり、街に人生が降り積もる。黙々と走る通勤電車が運ぶものは、人々の喜びと哀しみ、そして…。街と人が織りなす、不気味なのにあたたかな、著者初のアーバン・ホラー作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 富士山を望む私鉄沿線が舞台の短編集

    著者初のアーバン・ホラー作品集とのこと。ほんのり不気味だけど、どことなく暖かい。
    悩みは人それぞれ、折り合いをつけて前に進もう。そんな希望すら感じられる作品もあった。
    ホラーと銘打ってはありますが、重松氏のイメージを裏切らない内容だと思います。
    どうせなら震え上がるほど怖がらせて欲しかった気もしますね。

  • 私鉄「富士見」沿線で暮らす人々の短編集。
    毎日の生活のなかで、悩みは尽きない。苦しみは消えない。

    仕事をクビになり、妻と離婚して、生活が苦しい男性。
    記事のネタがなくてウソをついてしまった記者。
    亡くなってしまった息子を想う夫婦。
    公園デビューに苦しむ母親。
    駅のホームに飛び込もうとしてしまう人たちと駅員。
    昔の憧れにしがみついたままの人。
    団地とともに老いていく母親、それを想う娘。
    奥さんと仲がこじれて帰りたくないおじさん。
    生きているうちに墓を用意する家族たち。

    みんな生活で疲れてる。ストレスで消耗してる。

    短編の中に”頑張ろう、明るい未来へ!”みたいなメッセージはなかった。ただ、”わかってくれている”感覚があった。ポジティブな言葉より、寄り添ってくれることが大切なんだと思う。
    悩んでいるときに、その苦しさをわかってくれるひとがいるだけで救われるひとがたくさんいる。

    ---------------------------------

    大森靖子さんのライブへ向かう電車の中で読んだ。
    本の雰囲気と大森靖子さんのスタンスが似ているような気がして、我ながら良い本を選べたなと思う。大森さんも苦しみに寄り添ってくれるように歌う人だ。

    悩み疲れて、苦しんでいる人に対して、「頑張れ!」なんて言う必要はない。もう頑張ってきたわけだから。

  • 短編集ですが序盤の作品が重松氏の作品にしてはやや異質で好みではなかった。中盤以降はらしさが感じられましたが、全体的に気持ちの引っ掛かり、人の生き死にが関わってる少し息苦しい話が多いです。

  • 2017.04.08

  • 個人的に、最後の「もういくつ寝ると」がよかった。
    お墓、永代供養、先祖、本家、家族、個人、逆縁、死。
    などなど考える。

    自分にこだわりがなくても、そうはいかず、誰のための、何のための、と思ったり。

    最初の2編は別物っぽかった。

  • 新宿から出ている鉄道、富士見線。
    その鉄道沿線の街に住む人々の
    日常の喜びや哀しみ、人生の辛さを、
    重松さん独特の温かさと切なさで描いた短編集でした。

    ・身寄りのない老人の行く末を描いたホラー作品 『フジミ荘奇譚』
    ・女性のホームレスをネタにしたライターの話 『ハードラック・ウーマン』
    ・幼少期に亡くなった子供の姿を追い求める夫婦 『かげぜん』
    ・子どもの遊び場を探し求めるママの姿を描く 『漂流記』
    ・いじめに負けないでと願う駅員の話 『よーそろ』
    ・1970年代の終わりに活躍した
      ライターの行く末 『シド・ヴィシャスから遠く離れて』
    ・母子家庭で娘を育て上げたその後の母の姿を描く 『送り火』
    ・離婚寸前で別居中の夫には
      駅のホームで病死した男の幽霊が見えるという 『家路』
    ・家族が気に入るような墓地を購入する話 『もういくつ寝ると』

    平凡な家庭におけるさまざまな悩みや苦しみが書かれています。
    幽霊も出てくるし、謎の猫集団やお墓のはなしも。
    どれもちょっと気味が悪いのですが、切なくて・・・・
    都会の幽霊ってこんな感じで哀しい過去があるのでしょうね。
    こんな人生ホラーは
    ぜひ知っておくべきだと思う作品でした。

  • どうしてなのか、感情移入ができませんでした。56歳、父は亡くなり母も悲しいけれど、そんなに遠くなくいなくなってしまうだろう。独り者の私が天涯孤独になるのも遠くない。身につまされているから、敢えて感情を入れないようにしているのかもしれない。

  • 29/144

  • 面白かったが、重松氏の他の作品と比べるとグッとくるものがなかったように思う。
    忙しくて疲れてたのかな?

  • 「富士見」って地名ないよね、実際は?架空なんだろうけど、東京のどこかにありそうな、都心からすこしはなれたところにある「富士見」という町がキーになっている短編集。「フジミ荘奇譚」「ハードラック・ウーマン」「かげぜん」「漂流記」「よーそろ」「シド・ヴィシャスから遠く離れて」「送り火」「家路」「もういくつ寝ると」9編。家族がいて、親が老いてきて、、くらいの年代のひとがいちばん響くんじゃないかな。いやでも、ハードラック~は独身でがんばってるけど仕事に行き詰まりかけてる若い女性の話だし、漂流記はいわゆる公園デビューの話だし、そうともいえないか。生きていくうちに、だれでも少なからず抱えるような、重み、重石、みたいなものをうまく拾ってある。だから読後感もすこし重め、だけど、こういう、生き様を考えさせられる読後感、みたいなものこそが大事なんだとおもう。個人的にはいちばん心に残ったのはラストのもういくつ~かな。墓。死後。夫婦。親子。難しいよね。いろんな思いがあるし。残したくないもの、忘れてほしくないもの、我慢していること。いろいろ。深みのある1冊です。読んでよかった。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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