羊の目

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163267401

感想・レビュー・書評

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  • 最近日本の小説をあまり読ま(め)なくなったのは、こういう美しい日本語、正しい日本語で書かれた日本文学としての芸術作品がもうほとんどでてこないから。物語としてのエンターテイメント性やリアリティを突き詰めていくのならばぶっちゃけ小説というメディアである必要のないものが数多あり、小説でなければならないものをこそ小説で読みたい自分のような人間にはどんどん選択肢がなくなってくる。
    この作品は文句なしで美しく、文章自体が輝いている。単純に品性の問題だが作品の崇高さで言えばここ数年で読了した中では一番だろう。
    10年後に読んでも50年後に読んでも変わらない感想/感動が出てくるに違いない。
    個人的に2010~2011年読了本のベスト①

  • なんて言えばいいのかわからない。
    これって、もしかしたらすごくつまらないのかもしれない。
    けれど間違いなく、これは大河ドラマです。
    すごく体力も精神力も必要だったけど、この本を読んだことに満足しています。

    一人の男の半生を、その男に関わる複数の人間の目で語っていくオムニバス形式の一冊。

  • 途中まで殺すの殺さないのってすごくはりつめていた空気が、主人公が過去を振り返ったり、恋を覚えたりするあたりからやわらかくなってきて、それになんだか心を打たれた。やはり人生には、色気とか、あわれとか情けとかが必要なのか…と思いました。

  • ある極道の一生を描いた作品。初めて伊集院静の作品を読んだ。
    始まりは、ある女からで、それが主人公の母親。
    主人公が生まれる前から話が始まっている。
    主人公のまわりの人物や関係するであろう人物などがとても丁寧に描かれていて長編になっている。
    一見、何の関係もなさそうなエピソードや出来事が後半に関係してきたりするなど
    緻密に描かれており、無駄なものが何一つない美しい作品としてまとまっている。
    さすが伊集院静といった感じ。
    エンターテイメント性はなく、文学として形になっている。

  •  読了。戦後、やくざとして生きざるを得なかった男の人生の舞台をワールドワイドに広げたという面白さ。そこに無理がないという凄さ。モチーフである宗教の救いのイメージも綺麗にはまります。タイトルは最後の一ページにて深く納得。そのための渡米と、米国での恋だったのかと。定型のイメージも、ここまで隙なく作ると、ほんと、魅力的だわという見本だと思いました。

  • 読んだ日 2008.3(借:大村市民図書館)(27/115)

  • 父が喧嘩で殺されたので、暮らせなくなり、潜りで夜鷹になった母。辰三に惚れる。辰三には惚れた女がいた。子供を女の家の前におき町を出る。
    辰三はやくざの組長になり抗争の最中。子供の様子を見たくて辰三に手紙を書く。事情を知らない辰三は女を抱いた後、自分を待ち伏せする罠と疑い女を
    拷問し、殺してしまう。子供は辰三のやくざになり、殺し屋になる。辰三は抗争に負け、やくさは追われる立場になる。
    戦争で、マフィアの男に手当てする。獅子の刺青をマフィアは覚えていた。日本人の兵士の死体を見るたびに獅子の刺青を探した。
    サンフランシスコの潜伏するやくざ。マフィアを返り討ちにする。獅子の刺青があるのを知るとマフィアはやくざを刑務所に隔離。25年後に出所し
    日本に戻る。片腕を失った辰三は年老いていたが、やくざを見ると暖かく迎えた。辰三が惨殺され放火される。手を切られた焼死体を運び出して
    やくざは失踪。敵の組に復習。小島に隠れ住む。刑務所で覚えた時計の修理。崖の上に教会(?)を作る。

    昭和8年。牡丹の彫物をもつ夜鷹の女は、後に日本の闇社会を震撼させるひとりの男児を産み落とした。児の名は神崎武美。浅草の侠客・浜嶋辰三に育てられた武美は、「親」を守るため幼くして殺しに手を染め、稀代の暗殺者へと成長していく。やがて対立する組織に追われ、ロスに潜伏した武美は、日本人街の母娘に導かれてキリスト教に接するのだが……。高潔で、寡黙で、神に祈りを捧げる殺人者。25年ぶりに日本に戻った武美が見たものとは──。稀代の暗殺者の生涯を描き、深い余韻を残す大河長篇。伊集院文学の最高峰!

  • 時空を超えるね。25年もたってるのに、親分もう止めましょうよ・・・・。とは言えないしね。つらいね。

  • 澄んだ目をした侠客の一代記。

    生い立ちから晩年までを、場面を変えて描き出している。タケミが父と慕う辰三の、晩年の衰えぶりが何とも言えない。

    若いボクサー和美を応援したい。

  • いつもササッと読んでしまう派(速読ではない)ですが、
    3週間くらいかけて通勤時で読破した。全390ページ。
    1ページずつ丁寧に読みたい!ラストまで読んでしまうのがもったいない、
    と思う本に出会ったのは久しぶり。

    神崎武美という、メチャクチャ強い浅草の侠客の生涯を語る物語。
    またいつか読みたい。

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著者プロフィール

1950年山口県生まれ。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞、’14年『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞する。’16年紫綬褒章を受章。著書に『三年坂』『白秋』『海峡』『春雷』『岬へ』『駅までの道をおしえて』『ぼくのボールが君に届けば』『いねむり先生』、『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』『いとまの雪 新説忠臣蔵・ひとりの家老の生涯』、エッセイ集『大人のカタチを語ろう』「大人の流儀」シリーズなどがある。

「2023年 『ミチクサ先生(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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