荒野

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163270401

作品紹介・あらすじ

恋愛小説家の父をもつ山野内荒野。ようやく恋のしっぽをつかまえた。人がやってきては去っていき、またやってくる鎌倉の家。うつろい行く季節の中で、少女は大人になっていく。

感想・レビュー・書評

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  • わたしの好きな本を好きな方がおすすめしていたので読んでみました。
    ちょっと期待値が高かったので、そこを超えられなかったけど、かわいい愛らしいお話でした。

    パパはかなりどうしようもなく、まわりの女の人たちもなかなかのものですが
    黒猫ちゃん荒野がほのぼのしてかわいいわー。
    少女が心も身体も少しだけ女になっていく過程が、さなぎから出てくる蝶のようで瑞々しい。
    ゆらゆらとまだ青春の一歩手前の感じが微笑ましいです。
    鎌倉の雰囲気が、荒野の古風なイメージとあってまたいいよね。

    エリカや麻美の話も読んでみたいな、奈々子や蓉子さんの胸のうちも聞いてみたい。
    悠也との恋バナが物足りず、もっと読みたかったなぁ。

  •  複雑な家族関係なのに、みずみずしく描かれた荒野のおかげで
    その複雑さにマイナスなことを思わず読んだ。
     マイペースで心のかわいい荒野。こんな女の子はいない、と思いながらも
    中学入学から高校までの荒野を遠く感じなかったのは
    夢中になって読んだ証拠だろうか。

  • ドロドロしてない、少女漫画みたいな展開でさらっと読めた。

  • すごくよかった。泪目になっているくらい。荒野が色々とうらやましい。もうわたしは何もないまま卒業の目の前に来ているから、くやしい。戻りたい。やり直したい。戻れないのに。

  • 「私の男」の印象が強かったので、こんなにマイルドなのも書くんだーと驚きました。ヤングアダルト小説なのかな。もっと現実はドロドロしてそうですが、きれいにまとまっていました。
    初出は2005年の本でだいぶ前ですが、台所の女とか、20歳を越えるとおばさんとか、女の子だからそんなにがんばらなくてもいい等の台詞が気になりました。

  • 乱暴しようとする少年。やんわりと押さえつけようとする義理の母親。話のアクセントとして登場する(ように読めてしまう)同性愛者の少女。
    その全てが苦しい。なぜ読んでいてこんなに苦しいのだろうか。
    多くの人が読んでいても通り過ぎてしまう部分で、う、となってしまう。

    桜庭一樹は、少女が"女"になるために乗り越えなければならない成長痛のようなものをきっちりと書く。
    読んでいてしんどいのは、きっと自分が大人になりきれていないからだろう。
    読み手の未熟さを抉り出す、ナイフのような小説。

  • うさまん美味しそうだなっていっつも思います。
    「誰かに褒めてほしい料理は、おいしくても、どこか苦い」が印象に残ってます。

  • 自分の思春期を思い出してしまった。
    全部が初めてだったあの新鮮な気持ちはもう人生で味わえないんだと思うと切なくなる。

    あと主人公があの家庭環境であんなに純粋に育つってすごいと思う。根本的に周りの人から愛されててそれを素直に感じられる荒野の性格のせいなのかな、どうかこのまま荒野と悠也の関係は変わらずにいてほしい。

  • 青春です。さまざまなものが交差していき、だんだんと複雑になっていく少女の人生を生き生きと描かれています。個人的には第一章目の吊り橋効果のお話が好きです。

  • 女たらしの父と、彼をとりまく女たちに翻弄されながら、自身も少しずつ女になっていく、荒野という名に不似合いな瑞々しい少女のはなし。

    桜庭さんが描く少年少女物はハズレがない、と思います。少年少女の、刹那性と不安定性をこんなに鮮やかに読ませてくれる作家さんを他に知りません。

  • 荒野とそんなに年は離れていないはずなのに、
    なぜか遠い昔を眺めているような気持ちになった。

    読みながら、荒野が、どれだけ「女」になることや時間の流れを敏感に感じ取っていたのかに気づき、驚いた。

    自分が中学、高校のときは、それこそ未来なんて何も思い描いてなかったし、日々の、自分や周囲の変化にも気がついていなかった。

    ずっと無意識に日々を積み重ねて、気がついたら今にたどり着いていた感覚。

    だから、荒野がどんどん変化していくのを眺めながら、自分もこうだったんだなぁと思い出していた。
    特に、中学のときはクッキリ別れた敵同士だった男女が、高校では溶け合う部分に、そうだったよなぁと共感した。

    今を離れて、昔に引き戻してくれる本。
    匂いや雰囲気の描写が丁寧で読みやすい。

  • 表紙の グリーンに鳥がちょこんとのっているのが 素敵。
    マンガを先に読んだから ちょっとそのイメージがあったけど。
    成長期の 体と心の変化の話。


    本の方が 荒野が感じる匂いの描写、
    というか 直感やその場の空気みたいなものかもだけど、
    その描写が細かいな。 あと表情や目の描写。
    触られるのが苦手だったぶん、気配に敏感だったのかな。

    吊り橋効果のような、 右・左に揺れているや かたむくって
    表現がよく出る気がする。

    作家の父親と関係のある おんなたち。
    こどもだから 何も知らず、教えられないから気づかなかった
    家の中で起こっていたこと。それがわかるようになった荒野。


    こどもから 大人へ。思春期。
    ・無邪気に話をしていた頃から 親にいうのは気恥ずかしいという心理変化。
    ・男子は男子、女子は女子という結界があった時期から、
    恋人ができ男女がゆるやかに認め合い、溶け合う教室。
    ・平日は友達、休日は恋人という暗黙のルール。
    ・親が選んだものではなく、自分で選んだ服で満たされていく箪笥。
    ・鏡の前で 自分の顔を見つめる時間が長くなったり。
    ・こどもじゃないとふくれる こども時代。
    こどもじゃないという覚悟の 大人への階段。

    本を読みながら、つられて自分のことを振り返ってしまうね。


    好きなとこ。
    ・おいしいけど小さすぎるお菓子をかじるときのよう。
    もったいないから、ゆっくり。すこしずつ。 願わくば、もっとゆっくり。
    ・優しい心は、気づいた人をせつなくさせる。
    ・愛しさは、さびしさ。
    時が流れて。振り返るとあの季節は、あっというま。
    瞬きするほどの一瞬の日々。
    ・おんなのこころ、はとても薄情で、愛していない男の言葉なんかで
    傷つかないのだ。少女のすごろくはまた一つ、ころんと音を立てて転がり、女に近づく。
    ・好き、という気持ちはないしょの宝物を敷き詰めたような愛しさ。

  • 鎌倉を舞台に、一人の中学生、荒野(こうや)が少女から大人になっていく物語。

    思春期の間は、自分の身体・恋愛・家族の中での自分の位置付けなんかが
    いちいち気になって、いちいち翻弄され騒いでいたなぁと
    思い出しました。おとなになるとすっかり忘れてしまうものなんですね。

    荒野もそんなごく普通の少女ですが、そんないろいろな思春期の「ゆらぎ」に
    背伸びもせず、背きもせず、丁寧に、大切におとなの階段をのぼってゆきます。

    すでにおとなになってしまった自身にとって、この本は正直、
    過ぎ去りし若かりし頃を甘酸っぱくありありと思い出すもの、
    これから思春期の女の子がいたらぜひ手渡したいなぁと思うもので、
    それ以上でも、それ以下でもありません。

    ですがやはり桜庭さんの書く、大人になる前の少女は、誰よりも
    リアルで、可愛くて、切なくて、危なげで、いいです。
    レモンの匂いが香ってくるよう。若返る感じがします(笑)

    そして荒野の父親の
    「日々、ときめくというのは素敵なことなんだ、
    大人という生き物は、そう、ときめかないし、そうなってからのほうが
    人生は長い」という言葉に、なんとなくハッとさせられました。

  • やはり良い。
    女の濃密な匂いの中に育った荒野。
    ずっと、むわあっとこゆくて甘ったるい匂いがしているような小説だった。それは「パパの女の人」たちで奈々子さんで蓉子さんで、江利華で麻子。でもあまり荒野の「おんな」の匂いはしなかった。
    荒野はおとなと言ったけれど確かに緩やかに変化するけれど、確かにおとなにはなったのだけれど、やっぱり変わらないものは変わらなくて、それがたまらなくいじらしくあいらしい。
    おんなのにおいがしないのはきっと「おとな」になったばかりだからかなあと思う。

    個人的には阿木くんとの一件がすき。砂糖菓子の人魚と男の子の話を思い出した。青春時代の、暗く鬱々と、ある意味おんなと同じようにねっとりとした少年の熱が胸をぐしゃぐしゃにする。

  • 主人公の荒野が可愛いなぁ。
    荒野がだんだんと大人になってく過程が、自分もかつて少女だった頃を思い出させる。瑞々しくて、読みやすかった。
    でも、ちくちくするような切ない気持ちにもさせてくれた。

  • 女はいつ「女」になるのか。なりたくないのに。波のように押し寄せてくる「女」にどう乗ったらいいのかわからなかった。待つよりも冒険する方の性でいたかったし、見られる側ではなくて見る側の性でいたかった。そんなこんなで、ぐるぐると何周もして、今ようやくどうでもいいくらい自由。桜庭一樹が描く女の子はいつもどこか、暗闇を背負っていて危なかっしいけど、この女の子は瑞々しかった。最近そんな話をしたからか、パウロ・コエーリョの「アルケミスト」思い出した。好きな本のひとつ。読んだ後、仕事辞めたよね…。

  • 僅か数時間の読書が、私を学生時代にいざなった。
    そして、ふりかえれば 其処に
    私の時間が始まる ...
    竹内マリア
    それと、I need to be in love 青春の輝
    カーペンターズ
    ポケベル 携帯 スマホもなかった時代がよみがえる。
    当時 モラトリアムの真っ只中にいた。

  • 誰もが持っていたであろう些細な不安定さを繊細に描いていて、青春に戻りたくなる。

  • 桜庭一樹の小説にしては素直でストレートな本。衒いなく15〜16歳の頃が懐かしい。

  • 中学1年生の女の子が周囲の変化に対応しながら成長していく話だが、家庭環境が変わりすぎていて現実感がない。
    主人公が素直すぎて、そんなわけあるか、と思う部分もあるし、そういうものかな、と思う部分もある。
    ただ、登場人物のキャラクターがそれぞれしっかりしているので、わかりやすいし面白い。
    特に、荒野の継母である蓉子さんが非常に魅力的な存在だった。

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著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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