- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163280806
作品紹介・あらすじ
帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー…。良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和十一年二月、雪の朝、運命の響きが耳を撃つ-。
感想・レビュー・書評
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昭和初期の良家のお嬢様、高校生の英子の高貴な生活の中で軽いお戯れの謎解きか。
いわゆる爵位のついた良家では、高校生といえど自分専用の運転手つきのフォードで移動するようなお金をかけた生活をしてたんだなぁと〜呑気でいいなぁなどと思って読んでいた。
ラスト〜英子の運転手のベッキーさんと若い軍人さんとのやりとり、英子が心を寄せる軍人さんとのやりとりが2.26事件に繋がっていて…ずっとほんわかした流れだったので、急にピリッと驚きました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ベッキーさんシリーズはこれで終わりなのかな。続きが読みたい…!!昭和9年~11年。英国での女性参政権への活動や少しずつ忍び寄る戦争の気配など世情を通して北村薫さんの真摯なメッセージが伝わってくる。お兄様の肩肘張らないユーモラスさもいい味を出しているし、お嬢様方のお付き合い、言葉のやりとりも面白い。恋の想いがほのかに香るようなところもあり。たくさんの魅力がつまっています。
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昭和初期の令嬢とお手伝いのベッキーさんが活躍する作者得意の日常の謎。読み始めてから、あれこれもしかしてシリーズもんじゃないか?という疑問に打ち当たりますが、気にせず読めます。教文館や服部時計店(和光?)など銀座の描写が結構多く、風俗的な部分はとても楽しめる。小説としての良さは言うまでもないが、結構謎の導入部などはミステリしているのだが、解決が拍子抜けなのは残念。もっと面白くなりそうなのに。
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2016.5.9読了。三部作を一気に読み終えた。時代と上流社会のディレッタントな豊かさともの哀しい気持ちと。もっと読みたいけれど、この後は哀しいではすまない時代の暗さが迫ってくるだろう。でも、その中で英子さんとベッキーさんがどう生きたかも聞かせてほしい。
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読み終えても世界から抜け出せない。
残るのは、切ない余韻。
軽く読める読み物、けれど知性を感じる前の2冊。
奥深さを感じながら読みすすめていくなか、その頃から如々に曇天へ向かっていく気配はあった。
その行き着く先も透けて見えてはいたけれど・・・。
表紙をなでるごとに、最後の場面がこれからも何度も浮かび上がるのだろう。
読み応えという面では欠けると感じた1作目、けれどそれは2作目、3作目への布石だった。
読み物として完成された2作目で、3作目への期待は逆に薄まった。けれど。
すべてがこの作品へつながっていた。飛び立った鳥が降り立つ場所。それがなんとも哀しい。
1作目から読んで欲しい。この本だけでは伝わらない。
そして誰かと話したくなる、そんな作品。 -
北村薫、久しぶりに読みました。
直木賞受賞作ということもあり、気になっていた作品でした。
お嬢様とベッキ—さんの謎解き。
そして昔の日本の社会情勢も少しにおわせる作品となっています。 -
昭和11年初頭で雪とくれば、当然2.26事件。前2作の流れを受けて、よりダイレクトに世相の暗部に切り込んでいく展開になるかと思いきや、のほほんとした上流家庭のお嬢様の周辺で起きる小さな事件を連ねていく構成は変わらず。この心地よい世界をやがて一変させる巨大な機械が暴走をはじめるきっかけとなる事件の一端に、主人公がそうとしらず手を触れる一瞬で幕を落とし、余韻をのこす。
手だれた技、ではあるが、これが直木賞をとるべき作品だったのか・・・というか、ベッキーさんシリーズの最後の作品として、これで落とし前をつけたといえるのだろうか。もちろん2.26の「核心」ばかりが時代の描き方でないことはわかる。しかし、ベッキーさんと英子の周囲の男たちが、「能く破るる者は滅びず」を拠り所に行動するというのなら、この2人の賢い女性の、来る時代における身の処し方は、いかなるものでありうるのだろうか。
ベッキーさんの、「自分には何もできない、明日を生きるあなたこそ何でもできるのだ」という発言は、うつくしいけれど真実の一部しか語っていないと私には思える。2.26前夜のように虚ろに明るい時代を生きるわれわれに、こんな言葉だけを残してベッキーさんを去らせてしまうのは、きれいにまとめすぎというものだ。私利私欲を追って大きな流れに身をまかすことと、不滅を描いて「能く破るる」ことの間に、かならず違う道はあるはず。この制約の多い時代にこれほど賢いヒロインを生み出した作家は、ほんとに始末をつける作品を最後に書くべきだと私は思う。 -
再読。
シリーズ3作目。直木賞受賞作。
1作目から全編に渡って散りばめられた布石が、最終話「鷺と雪」で見事に集約される。
『騒擾ゆき』の暗示。
鷺の舞の表すもの。
巨大なうねりに巻かれ為す術もないと悟ったとき、人は何を想うのだろう。
日本という国の歩みに対しての祈りにも似た叫びが聞こえるようです。
物語の閉じ方が余りにも見事で秀逸。
改めて北村氏の筆の力を感じます。
1作目の巻末インタビューの「その時代の人には結局"今"は見えないもの」という記述が心に甦ります。
読むのではなく感じる。
正に心で感じる本当に素晴らしい作品。 -
後書きを見て知ったけど、実話を元に書かれたらしい。それを知ってからの方が面白かったかも。
話しとしてはそんなに大どんでん返しもないので。
ただ、都市伝説とか逸話とかに加えて東京(銀座周辺)の地名が多く出てくるので、現地を知っている人には「おおあそこか!」と楽しめるかも知れない。
最後の、現実のあの事件に繋がる感じを匂わせる終わり方が好き。 -
戦前の、ごく一部の富裕階層という場面設定がアウトです。読みながら「お前ら何サマだ」と どうしても思ってしまう小市民。