月と蟹

著者 :
  • 文藝春秋
3.29
  • (118)
  • (449)
  • (625)
  • (192)
  • (43)
本棚登録 : 3430
感想 : 598
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163295602

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • やっぱこわい。
    子供×闇 ぞわぞわする。
    純粋だからこそのおぞましさ。

  • 昔読んだ太宰治のような少しずつ自分の世界が崩壊していく感じ。孤独感が増すにつれ、自分に中で嫌な感情が育ち、それが、ヤドカリの描写と相まって時にグロテスクに浮かび上がる。ただ本人が子供なので、どうにか踏みとどまるのではないかと祈りつづけながら読んだ。私はこの本好きです。

  • 青春はきらきら輝くだけのものじゃない。
    鈍い光。
    出口の見えない、どこに辿り着くかわからない時間。

  • 2011.5.23読了。
    ヤドカリをあぶり出して遊んでいた学校では友達がいない転校生の二人が、そのヤドカリを神としてヤドカミ様と言って、あまり表で言えない願い事をかけ始めて…という話。
    ヤドカリを炙ったり焼いたりちよっとグロ

  • ”ヤドカミ様”の儀式のグロテスクな描写、心の闇に嵌っていく少年の変化とともに、物語は中盤から純文学風に。虐待、いじめ、過去の事故、どれも描き方に読者を追い詰めていく感じが弱く、エンディングはやや予定調和か。しかし、そのぶん読みやすく楽しめました。

  • 二人の少年の岩山での秘密の遊び。秘密の儀式。
    それが少年たちのそれぞれの悲しみを癒し、
    支えとなっていく過程が丹念に描かれています。
    友人の少年の関西弁や祖父の、祖父らしい言葉遣いが
    暗い影を落とす物語に、柔らかさを添えていて救われます。
    道尾秀介さんの作品は苦手でしたが
    この物語は、少年の揺れる心理に視点を据えた点で、
    読み応えがありました。

    《第143回 直木賞受賞作》

  • 少年にとって大人はホラー。
    その秘密に出会ったとき
    少年はどう変えようとするのか。
    変わろうとするのか。
    成長の物語でもある。

    少年は海辺の町に母と祖父と住んでいた。

    仲良くなったもう一人の少年。
    そして、思いを寄せる少女。
    3人はいつしか秘密の儀式を行うようになっていく。
    ヤドカリをヤドカミ様として祀り
    殺すと願いが叶うという残酷な行為。

    そこに、現実の大人の世界への反発が投影されていったとき
    物語は思わぬ方向へと進み出す。

    少年の友と少女の距離が縮まり
    嫉妬する少年。

    母のつき合っている男が運転する車のトランクに潜み
    母と男の関係を知ろうとする場面は二重にスリリングだ。
    見つかりそうな恐怖、母の大人の秘密を知ってしまう畏怖。
    大人の世界はこうして少年にホラーとして立ち現れる。

    少年の友も父のDVに怯えている。

    そして、二人はヤドカミ様に
    お互いが邪魔に感じている
    大人の排除を願う。

    クライマックス。
    深夜の海辺を自転車で失踪する少年は
    何かを突き破ろうともがいている様にも見える。


    そして。
    少年少女は別れていく。それぞれの人生へ。
    大人へとまた一歩成長を遂げて。

    海辺の物語は
    私の心にコツンと石ころを投じた。
    その石ころはときおり
    私の中の少年を呼び起こす。

  • 父を亡くした少年、慎一。
    母と、祖父昭三と生活している。
    祖父は漁に出ていたときの事故で左足を失っていた。


    母をなくした少女、鳴海。
    鳴海の母は、昭三が足を失った事故で命を落とした。


    慎一は父の死後、母とともに祖父の下に身を寄せるが、転校先の小学校で鳴海と同じクラスになる。
    クラスの生徒は慎一と距離を置くが、一方で鳴海は積極的に慎一に話しかける。二人の間は一見良好な関係。


    慎一が唯一親しくつきあうのは、何かを背負っているような春也。
    春也もまた慎一と同じく転校生であるため、クラスから浮いた存在であった。


    そんな二人が秘密の場所で遊んでいるうちに、ヤドカリを「ヤドカミ様」としてあがめるようになる。
    ヤドカミ様にお願いをすると、願いがかなうのだ。
    ・・・どんなことでも??

    二人の遊びに鳴海が加わるようになったことで二人の間に不信感がわきおこり、
    そしてヤドカミ様への願いが大きなものになっていく。






    どうも私は道尾秀介作品とは相性が悪いようです。

    作品全体は暗いです。
    前半部分はあまり動きがなく、投げ出しそうになりました。
    また何度もでてくる場面なのですが、ヤドカリで慎一と春也が遊ぶ様子は不気味で、読み進めるのが苦痛でした。
    後半になってようやく物語が動きだして、こどもたちが精一杯の行動をとるところが、暗い前半に反して明るさが感じられて、いい意味で予想を裏切られました。

  • 情景が思い浮かぶ美しい文章。月と蟹と海と山と。ヤドカリのシーンが印象的だった。

  • 帯からあまり明るい展開でないことは予想していたけど、終盤の迫り来る閉塞感は予想以上でした。楽しい話ではないのにページを捲る手が止まらず。完全に救いのない話ではなくて良かった。最初に読んだ「向日葵の咲かない夏」で道尾作品には軽い苦手意識ができてしまったのですが、本作で少し払拭されました。

全598件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

道尾秀介の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
道尾 秀介
道尾 秀介
湊 かなえ
伊坂 幸太郎
道尾 秀介
伊坂 幸太郎
冲方 丁
東野 圭吾
伊坂 幸太郎
道尾秀介
道尾 秀介
道尾 秀介
高野 和明
東野 圭吾
貴志 祐介
伊坂 幸太郎
湊 かなえ
道尾 秀介
道尾 秀介
伊坂 幸太郎
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×