- Amazon.co.jp ・本 (543ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163570303
作品紹介・あらすじ
ベルリンの壁崩壊、昭和天皇死去、幼女連続誘拐殺人事件…酒鬼薔薇聖斗。この人類史の憂鬱な先端に向かって、世界はやがて殺到してくるだろう-。十年をかけ人間精神の恐るべき荒野を緻密に描きだした畢生の大作。
感想・レビュー・書評
-
森達也の「U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面」を読んでから、いつかは読まねばと思っていた。書店に行くたびに探していたけれどなかなか出会えず、地元の図書館でついに遭遇。
この本で触れられた事件について、ここまで掘り下げて考えていた人がいたとは。ある事象を一方向からだけ見るのではなくて、想像力を働かせることは心がけていきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2016年1月4日、読了。
-
03077
ベルリンの壁崩壊という一見無関係な風景を冒頭に据えたことで著者が宮崎事件を材料にバブル崩壊後の時代の全体像を描こうとする意気込みが伝わってくる。
3種類もの異なる結果が出た精神鑑定に疑問を投げかける著者は宮崎の内面理解に努めている。少年時代の宮崎の片手の障害のエピソードにやや感情移入しすぎの感はある。
宮崎の撮影したビデオに対する見解はそのまま、鑑定人たちの誠意式の違いだと看破するあたりは鋭い。宮崎事件で表面化した郊外の抱える問題は、その後の酒鬼薔薇事件につながっていく。 -
情感たっぷりな宮崎勤本
-
2009/2/25(〜p123),26(〜p286),27(〜p457),28(〜p543終)
友人が読んでいた時があり、気になっていたので読んでみました。
これは私が生まれる1年前の1988年に起きた事件の容疑者・宮崎勤の事件当時の彼の犯行状況や、そのときの精神状態、彼の過去の家庭状況などが詳しく書かれており、彼が犯行に至るまでの経緯、恐ろしき真相が書かれている。
彼は精神面に以上はないということで死刑判決を下された。
4人の幼女を殺害し、1人は食した。そんな彼の精神は"正常"だと言い切れるのだろうか。しかし逆に"異常"という言葉だけで片付けられるものなのだろうか。
読む前までの私の印象は「彼は幼女を殺す変態異常者だ」という感覚だった。残忍であり、殺されてしまった少女達への扱いは酷虐極まりなく、想像するだけで鳥肌が立つものである。しかし、読みすすみ、私たちが知らなかった真相を知ってしまった後は、私は彼に「彼は〜だ」と肯定することが出来なくなってしまった。
私には彼が"人"に見えなかった。"人"ではないほかのもののような気がしてならなかった。