アンティキテラ古代ギリシアのコンピュータ

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163714301

作品紹介・あらすじ

発見された2000年前の沈没船、引き揚げられた奇妙な謎の機械、その機械の内部には、複雑な歯車の構造があった。歯車による入力と出力の自在な変換は、中世の時計の発明を待たねばならぬはずだった。それが蒸気機関と結びついた時、「産業革命」が興り、数字と結びついた時、コンピュータは生まれた。二〇〇〇年前のギリシア人がつくりあげたその機械-アンティキテラ。いったい誰が何のために創った機械だったのか?大興奮必至の科学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 「本物のオーパーツ」を真摯に科学的に分析していく過程は実に魅力的。イギリスあたりでドキュメンタリー番組になっていておかしくない。というかそんな感じのを見たい。

  • 地中海の沈没船から1900年頃に引き揚げられた
    謎に満ちた「精巧な歯車仕掛け」の壊れた機械パーツ。
    それがいったい何のためにつくられたのか、
    誰が作ったのか、いつ作られたのか…を、
    解き明かそうと人生をつぎ込んだ探究者たちの
    物語を時系列に綴ったストーリー。

    X線撮影装置や高性能コンピュータなど、テクノロジーが
    発展するにつれて、それまで不明だったことが
    非線形に、一気に判明していく、その繰り返しが
    大変興味深い。
    アンティキテラの機械の謎解きは、そのまま
    20世紀からの21世紀初頭における分析技術の進歩に
    リンクしている。

    最終的には、トニー・フリースやマイケル・ライトが
    「対立する研究成果と仮説」を並べながらも、
    だいたい何のための道具かは明らかになる。
    それは「天界の美を表現し、神々に近づく方法」の実践と
    いうべきものであった。

    p.124のアーサー・クラークの言葉が考えさせられる。
    それは、もしこの機械の知識が埋もれずに、
    知識の進歩が続いていれば、
    「今頃私たちは月あたりで足踏みしたりせずに、
     近くの星(太陽系以外、ということだろうか)に到達していただろう」
    というものだ。

    果たしてそうなのかどうか。
    もちろん、それは現在のわれわれの水準をはるかに上回るテクノロジーが
    実現しているというIFの世界の話で、
    まさにSFなのだが、
    そんな世界になったような気もするし、
    意外と、今の現実とあまり変わらないのではないかというような気もする。

    というのは、結局科学技術を高め、異次元に到達するというのは、
    歴史を見てみれば、経済発展と社会の安定が確立された文明環境があってこそ、
    というような気がするので、
    もしアンティキテラのテクノロジーが、文明を不安定にさせる方向に
    進んで歯止めが効かない事態が起こっていたら、
    それこそ今よりもっと「悲惨な」世界だったのかもしれない。
    すべては想像の世界の話であり、だからこそ夢想は尽きないのだが。

    本書は、
    科学、技術、歴史、そして人間の生々しい感情むきだしのドラマまで
    楽しめる、秀逸なノンフィクションである。
    筆者もまた、この機械をめぐるあれこれに魅了された情熱的人物なのだろう。

  • ギリシャの海の底に沈んでいたオーパーツを巡る、研究者たちの物語。天体を観測するための機械なんだけれど、古代にありながらほとんど現代的な機構で、これが古代のコンピューターであるのも頷ける。

    話としては順序立てて進んでいくのだけれど、これがあまり物語としての推進力を生み出していないような気がした。もう少し面白くなるような描き方があったと思うのだけれど、これは構成の練り込みが甘かったのかもしれない。

    アンティキテラの機械を最新の分析装置によって調べて、用途不明の歯車が天体観測の機械であることが分かるところはエキサイティングだった。これ、誰も興味を払わなければ、博物館の倉庫で眠ったままだったのかと思うと、偶然というのは価値があると思う。さらに、この装置の製作者を考察するところも面白かった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      文庫になったので購入しました。

      「偶然というのは価値があると思う。」
      興味深い対象にアレ?と思う好奇心があれば、幾らでも偶然と出会うコトが...
      文庫になったので購入しました。

      「偶然というのは価値があると思う。」
      興味深い対象にアレ?と思う好奇心があれば、幾らでも偶然と出会うコトが出来ると思う。
      もっと現在の常識を覆すような発見がこれからも出てきますように!
      2012/05/21
  • 2000年前の機械がどうこうよりも、アンティキテラの機械に魅せられた学者さん達のえげつないまでのイニシアチブの取り合いが香ばしい。
    人類の遺産の写真に(C)がついてるのが滑稽々々。

  • 古代の機械のお話。
    構造の説明が文章メインでわかりづらかった。
    もう少し挿絵があると助かる。

  • 2016.7.242016.8.9

  • 紀元前2世紀頃にギリシャで作られたアンティキティラの機械に関する本。
    当時の技術力では想像もできないほどの細かさで歯車が組み合わされており、天体の動きを精密に示しているようだ。
    こういう細かい物が既に2000年以上前にあった以上、現在考えられている古代の生活の様相は全然違ったものとなっているのかもしれないと思いを巡らすことが出来る。

  • かの有名なアンティキティラの機械に魅せられた奇人研究者と、その奇人の書いた論文に釘付けになってしまった学芸員、同じ論文に惹かれてしまった学者、そしてスポンサー集めの為に独自に研究に乗り出した会社経営者…この中で一体誰がこの得体の知れない機械を完全に復元できるのか。復元図も載っていて、なかなか想像をかきたてられます。

    何よりも翻訳本にありがちな、回りくどさ、読みにくさがこの本にはありません。最初から日本語で書かれたように読みやすくてオススメです。

  • オーパーツとして有名な「アンティキティラ島の機械」が
    いかに発見され、いかに復元されてきたかを扱った
    ドキュメンタリー。

    今となってはこれをオーパーツと言う人間はいないだろうが
    世界的に貴重な遺産であることは間違いない。復元過程は
    様々な発見が続き、きっとワクワクするお話なのだろうと
    思って読んだのだが、その実は複数の人間の、決して美しい
    とは言えない競走に終始していた。結局どの分野、どの世界
    においても物語の中心には人がいるということなのだろう。

  • かの有名ダメプリンターメーカーが出てきているところに
    ご注目。
    最後まである人との研究のデッドヒートを
    くりひろげます。

    海底から見つかった謎の機械は
    その時代にそぐわないものでした。
    どうして作られたのか、
    何をしようとしたのか…
    それに魅入られた者たちの物語です。

    ある男の記録は必読。
    人があまりによすぎたんだろうね…

  • 2009年刊。過日、ETV放映の「地球ドラマチック」で紹介されていた古代ギリシャの天体運行周期表及び食カレンダーの解明過程を描く。測定装置の発達が、新たな事実と内容を確定する。こういう研究史の面からも有益な書。また、結論は明快だが、数学的計算、アルゴリズムを複数の歯車にて行う実益、機械装置の発展への寄与(時計、動力装置)は忘れてはならない。さらに、この装置が、アラブと異なり、ローマにて保存・継承しなかった点は、ローマの軽視した科学技術、測定技術、それらを研究開発する人材、社会制度の重要性を物語っていよう。

  • -

  • 2000年前のギリシャ人が作った装置を発見から解明されて行く過程を興味深く記載した良書。youtube等の動画と合わせて観るととても興味深い。特にX線により解明された内部の歯車の構造はすばらしい
    Antikythera Mechanism Part 1: by Nature Video
    http://www.youtube.com/watch?v=DiQSHiAYt98

  • 自然現象を機械でシミュレートしようという試み、天体を歯車で再現しようとする過程から生まれた様々な歯車の機構は機械式計算機、やがて今のコンピュータへと繋がります。そういった発想と技術が古代ギリシア時代からあったとは驚きでした。

    機械を発掘する過程での潜水夫の話、また機械を解明しようとする人達の悲喜こもごもも面白いです。

  • 地中海の沈没船より引き上げられた異形の物体・・・オーパーツの謎をめぐって繰り広げられる一世紀にわたる科学者の戦い!
    医学生としては、潜水技術の進歩にて生じたベンズの危険を顧みず沈没船からの引き揚げ作業を行った序章から楽しめました!

  • このすごい機械?コンピュータ?を作ったのはいったい誰なのか。
    構造が解明された今でも知的好奇心をくすぐられます。

  • 面白い!世界ふしぎ発見、あるいはプロジェクトXのファンにお勧め。
    難破船から回収された古代の謎の機械、誰が、何のために作ったか?ハリウッド的設定だけどノンフィクション。わくわく一気読みした。ただしメカに弱すぎて読んだだけでは解明された構造を半分くらいしか理解できず。。手にとっていじれる復元モデル付録があったらよかったのに。アテネで本物が見たい。
    私は超高度な文明を、享受してはいるけど、生み出してはいないし、理解してもいない。急に心許ない気分になった。ロードス島だかシラクサだかの2000年前の技術者に、あんたすごいな!と言いたい。

  • アンティキテラの海底から引き揚げられたブロンズの塊の復元に情熱を傾けた人たちの話。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    発見された2000年前の沈没船、引き揚げられた奇妙な謎の機械、その機械の内部には、複雑な歯車の構造があった。歯車による入力と出力の自在な変換は、中世の時計の発明を待たねばならぬはずだった。それが蒸気機関と結びついた時、「産業革命」が興り、数字と結びついた時、コンピュータは生まれた。二〇〇〇年前のギリシア人がつくりあげたその機械―アンティキテラ。いったい誰が何のために創った機械だったのか?大興奮必至の科学ノンフィクション。

  • 1 海底より現れしもの
    2 ありえない
    3 「戦利品」
    4 科学史は塗りかえられた
    5 大胆な推理
    6 19世紀のコンピュータがふたりを結びつけた
    7 すべては解読の名誉のために
    8 最強の布陣
    9 みごとな設計
    10 アルキメデスの影

  • NDC:502
    古代ギリシア時代に作られたとされる謎の機械装置を解明していく。
    つい最近まで研究され続けていたことを考えると研究者たちの熱意に脱帽である。
    技術的な部分が多いのは仕方ないと思いつつも、やはりわかりにくい。
    しかし、内容としては面白かった。どう考えてもコンピュータだよな。

  • 2000年前の沈没船から出てきた謎の物体を解き明かそうとする研究家達の100年の物語。
    カンブリアの本を読んでいるような気分になりますね。
    研究書に近い内容であまり噛み砕かれた解説はありません。
    一時オーパーツとして名前が挙がっていたので聞いた事がありましたがこういうものとは・・・。
    この上なく重要な発見ですが、得たいの知れない物なので、
    合間合間でテキトーに放置されて劣化したり…というのが人間の悲しい歴史って感じがしますw

    SF作家のA・C・クラークが出てきてビックリです。

  • 執念みたいなものが 読ませる。。

  • 2011.11 文春文庫化。

  • こんな技術が今から2000年ほど前にあったことが驚き。まず高度な天文学に驚き、とてつもないほどの観測を繰り返したんだろうなと想像すると楽しい。そしてあの高度な歯車の構造を実現させる技術。半端じゃない。
    ただこの本を本当に楽しむためには歯車を中心とする機械部品の技術と天文学の知識が必要。
    まず歯車に関しては作動歯車と遊星歯車など歯車のバリエーションが出てくるし、そもそも基本的な歯車の使い方の具体例に習熟しておいた方がいい。
    天文学に関しては、もちろん専門的に学んでいる人から見ると初歩的なことだろうが確実に日常レベルの知識とはかけ離れている。特に地球、月の周期関係はほとんどの人が知らないことばかりだと思う。
    この本にはもっと図版が必要だと思う。原書にはない図版を増やしてくれたとあるけどもっと必要。
    この本に書かれている技術的な部分に関しての解説を期待して、この本を読んだと書かれてあるブログをちらっといくつか呼んだけどどれも歯車技術と天文学についての解説はなかった。
    しかし、これ読んでから歯車技術と地球・月の周期にすごく興味をもって調べるようになった。

  • 古代ギリシアの科学・技術のレベルの高さに驚かされます。
    ただ、アンティキテラという装置の謎を解く研究者たちのドラマがメインになっていて、メカニズムに関しては、あまり詳しくは語られていません。なんとなく、とても複雑な装置が存在したということはわかるのですが...
    大人の科学とかで、出してくれないかな...

  • 紀元前60年くらいに作られ、1901年にアンティキテラ島沖の沈没船から引き上げられた謎の機械の約1世紀にわたる解明の歴史を綴ったもの。たいへん面白い科学史の本である。はじめて、復元模型をつくったプライスは、中国科学史家のジョゼフ・ニーダムを師とし、SF作家アーサー・C・クラークの助言も受けていたそうで、大変興味深く読んだ。プライスの欠点を補い、ほぼ正しい模型をつくりあげたマイケル・ライトは、博物館の学芸員でありながら、余暇を利用し、機械の解明にうちこみ、離婚や離職の危機、仲間のプラウニーの裏切りなどに悩みながらも、地道なX線撮影をこなし、職人の目線から機械の解明を行い、遊星歯車をもつ惑星の位置を表示するプラネタリウムであるという説をたてた。CTやCGを使って解明に挑んだフリースもまた、面白い人物である。とにかく、30個ものギアを組み合わせ、5つの惑星の動き・月の速度変化まで反映し、食を予測するというような、天体を精緻にモデル化した機械が紀元前につくられていたという事実は、科学史を大きく塗り替える発見である。中国の技術が機械時計に流れこんだというニーダムの理論は修正をしなければならない。

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著者プロフィール

科学ジャーナリスト。生物学を学び、医療微生物学で博士号を取得。『ネイチャー』、『ニュー・サイエンティスト』などの一流科学誌で記者、編集者をつとめたのち、独立。『ガーディアン』や『エコノミスト』に寄稿。海洋考古学から遺伝子工学の未来まで、先端科学の専門家として執筆活動をおこなう。著書に『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』『ツタンカーメン 死後の奇妙な物語』(いずれも文藝春秋)がある。ロンドン在住。

「2016年 『「病は気から」を科学する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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