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- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163737300
感想・レビュー・書評
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過激なタイトルがつけられているが、本書はメディア史研究の大家である山本武利氏の「半世紀近い真摯な朝日研究の総決算」とも言える一冊である。上海という「魔都」に存在した大陸新報社という小さな(そして怪しい)新聞社を通じて、“権力”とメディア-特に朝日新聞との関係の実態を明らかにしている。
一つの会社を起点として中国市場の支配を狙った朝日新聞の「侵略」行為を明らかにする下りは、正に半世紀にわたって朝日を研究してきた著者の真骨頂とも言えよう。ただ、本書は朝日の「侵略」行為を批判するだけでなく、単なる「国策会社」という枠組みだけでは捉えきれない『大陸新報』というメディアの“魅力”も明らかにしている。
その一つに「人材」が挙げられる。大陸新報社では、二十代半ばの大陸浪人であった福家俊一社長の下に様々な社員が集まっていた。例えば、神兵隊事件の首謀者として有名な鈴木善一や人民戦線事件の被告となっていた美濃部亮吉、高橋正雄などである。このように、当時の大陸新報社には、左右問わず様々な人材が集結していた。本書は、主に経営面に焦点が当てられているが、これだけ稀有な人材を抱えていた同紙が、どのような言説を展開していったかを考察してみるのも面白いのではないかと思う。
本書から見えてくるのは、“権力“に対抗しながらも弾圧に屈した“悲劇”のメディアというお決まりの構図ではなく、むしろ、そうした“権力”と上手く渡り歩きながら自社の利益拡大を目論む“したたか”なメディアの姿である。権力とメディアの関係を考える上でも、非常に参考になる一冊である。