悪の教典

著者 :
  • 文藝春秋
3.72
  • (180)
  • (310)
  • (240)
  • (56)
  • (18)
本棚登録 : 1831
感想 : 364
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (669ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163809809

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2012/08/05読了。町田市の私立高校を舞台にした、学園ドラマのようなサイコホラー。このミス1位らしいけど、全体通すとホラーかなと思う。怖面白い!一気読みです。まばたきも忘れるほど集中して読んでしまいました。


    担任クラスに問題児をわざと抱えながら、テキパキと学校の問題を解決していく蓮見先生。最初は正義のみかた、完璧なヒーローと思えましたが・・・、カラス(フギン)を仕留めたあたりで「ん!?」と引っ掛かる。それを皮切りに蓮見先生の本性と過去が次々に明らかにされ、じわじわ、ぞくぞく、とくる怖さ。この感じたまらない!!貴志ワールド!!
    犯人目線で進行するのがいいですね。自分がやったと発覚しないように用意周到に準備するあたりは、「青の炎」を思い出しますが、背景にある意思はまったく別物・・・。悪意たっぷり。心理学を絡めながらの進行も面白い。


    わたしとしては圭介が消されたあたりが怖さのピークでした。そこから、いきあたりばったりで簡単に人が殺されていくようになってしまい、バトルロワイヤル的なクライマックスへ・・・。そこも周りの音が耳に入らないくらいに集中しててドキドキしたんだけど、中盤までの背筋が凍るような怖さが好きだったので、それに比べると物足りない感じはありました。でも最後はこんな感じにならないと幕引くのも難しいし、しょうがないのかなぁ?


    もっと釣井先生のとことか、憂実や美彌を殺そうとしたときになぜ手が止まってしまったのか、っていうのを掘り下げてほしかったなぁ。あとカラスも。最後、蓮実が犯人だというのがAEDで発覚するってのも避難訓練のときの伏線が生きて、ウマイっ!て思ったんだけど、カラス(ムニン)によってなんらかの証拠が発覚して、フギンの仇をとるっていうのもいいな~とか、勝手にアナザーエンディングを考えております。映画化も楽しみ!


    文庫化をまちきれずノベルズ版を買ってしまったのですが、ショッキングピンクの表紙は一番好きです。

  • 生徒からも同僚教師からも絶大な人気を誇る理想の教師・蓮実。
    ハスミンという愛称も相まってこんな教師がいたらなぁと思わせる。
    しかし彼は人を殺めることに何の感情も抱かないサイコパスだった。
    俗に言うシリアルキラーとマス・マーダラー。
    蓮実聖司という男はどちらに当てはまるか。

    前半は蓮実聖司という理想の教師像をとことん見せられる。
    蓮実のその実直なスタイルにいつしか読み手側は
    蓮実聖司という男の魅力に引き込まれてしまう。
    所々で見せる殺戮者としての顔も、一つの彼の魅力と見てしまう。
    しかし、後半に進むに連れ、この殺戮者の顔が前面に出てきて
    初めて我々は彼の真の姿に恐怖する。まさに彼の教え子たちの様に。

    確かに後半になるに連れ、無理な設定やお粗末な展開もある。
    しかし、だからといってこの作品の品位を損なうものではない。
    これほどまでに、創作の中の登場人物に恐怖したことはない。

  • 最近ハマり気味の貴志祐介作品なのだけど、ハマる前からずっと気になっていた本。
    いくつかの販売形態があって、最初は上下巻のハードカバー、次に上下巻を1冊に
    まとめたハードカバー、そして最近上下巻で文庫化されたもの。文庫版は電子書籍化
    もなされていて、僕の読んだのは紀伊國屋書店Kinoppyで購入した電子書籍版。
    気になっていたのに手を出さなかったのは、この本があまりに厚かったから(^^;)。
    電子書籍化、非常にありがたい!

    有能・イケメン・人気者の高校教師、実は最悪のサイコパス。
    狂気の天才が造り上げる非情過ぎる連続殺戮劇が、これでもか!という程に起こり続
    ける。一部で大問題になったらしいが、それも当然。ひさびさに凄い作品に当たっち
    ゃった感じ。

    ・・・さすがに文章量は尋常でなく、読むのに丸2日を擁す。しかし、読んでいる最中に
    退屈は一切無く、全ての場面がスリリング。ちょっと間違うとグロさと不快感しか残
    らない作品になってもおかしく無いのだけど、どこか不思議な美しさまで感じさせて
    くれるのが見事。細かな心情描写、説得力たっぷりの台詞回しももちろん健在。いく
    つかの設定に若干の無理があるのは否めないが、そんな小さいことに突っ込む気すら
    なくなる大迫力。ここまで読んだ貴志祐介作品ではやはりいちばんの内容だと思う。

    そしてこの作品、なんと映画化される!
    主演は伊藤英明。いやぁ、ナイスキャスティング! これ、絶対に劇場行くな、きっと。

  • 好悪はともかくもいきいきと闊歩するサイコパスキャラの造型が素晴らしい(やってることが素晴らしいのではなく・・・)。40人近くの生徒ひとりひとりの性格や考え方の描きわけ、一筋縄ではいかない同僚教師たち脇役のキャラにも惹かれる。事件が起こる前のエピソードのくだりでもグイグイ読ませるストーリーテリングはさすが。文句なしに面白い。好悪はともかく・・・。

  • グロい、吐き気がする

    でも、それを感じさせる描写、展開見事…

    胸糞な内容なのに読み始めたら止まらなかった
    作者は天才

  • 2012/7/16一気に読み切った。面白い。★5

  • 怖かった、怖かった、怖かった~!!

    映画の予告を見たことがあるので、なんとなくわかってはいたのよ。
    若くて子どもたちに人気のある爽やかな青年教師が、学校を舞台に大量殺人をする…らしい話であることは。
    だから何となく、行き過ぎた正義感が先生を豹変させたとかなんとか、そんな話かと思っていたら、全然違いました。

    読み始めこそ爽やかが溢れていましたが、第一章を読み終わることにはすでに「この先生おかしい」と思う。
    まあ、この学校の先生達はそろいもそろって変な人ばっかりなんですけどね。

    先生が大量殺人をする理由。
    これが実に自分勝手。
    自分の思うとおりにならないことは排除していく。

    常識的に考えても能力的に考えてもこんな極端なことはできないけれど、自分が絶対で、他人を思いやることがなく、排他的で攻撃的な人って割といる。
    どんなに言葉を尽くして話しても伝わらない人っている。
    徹底的で圧倒的な断絶。

    たぶん作者が書きたかったのはそういう恐怖だと思うんだけど。
    私も途中まではそれが怖くてしょうがなかったんだけど。

    今日の昼休みに残り200ページくらいのところから読み始めたのね。
    大量殺人が始まるところ。
    あくまでも先生を信じる生徒たち、先生の恐ろしさを知って何とか生き延びようとする生徒たち。
    友だちの仇を取る。好きな子を守る。ヒーローになる。
    そんな子どもたちをあざ笑うかのように淡々と自分のクラスの生徒たちを殺していく先生。
    怖い。怖すぎる。

    ホラーもスプラッターも苦手なんです。
    怖くて怖くて、読むのが止められない。こんなに怖いところで中断なんてできないもの。
    でも早く終わりにしたくて、1時間の昼休みで100ページ読んだ。
    早く!早く!早く!

    誰か、なんとか先生の裏をかいて!
    そしてこの物語を早くおしまいにして!

    心臓が痛いほどドキドキして、いま恐怖のあまり死んでしまったとしたら、多分第三者的には私の死因はパンをのどに詰まらせて窒息。的なことになるんだろうなあと思いながらページをめくる。めくる。

    最後の100ページは帰宅ラッシュで賑わう駅の構内で読んだ。
    続きを早く読み終えたかったからというのと、静かなところで読みたくなかったからという理由で。
    もう、本当に怖かった。
    本屋大賞にホラーとスプラッターをノミネートするの、やめてよぅ。(T_T)

  • *高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇なく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。戦慄のサイコホラー傑作*

    とにかく続きが気になって一気読み!
    長編なだけに登場人物も多いが、ひと癖もふた癖もあるキャラクターばかりで飽きないし、次々に起こる事件からも目が離せない。もちろん「共感能力の欠如」を知識と学習によってカバーする蓮実のキャラクターも、悪役ながら徹底していて魅力的。
    救いようのない、そこはかとない恐怖を秘めたラストも秀逸。

  • 『つまり、感情の動きには、論理と同様に、法則性があるということだ。

    人間の感情は、他人から認められたい、とか、求められたい、というような、基本的な欲求が、その根底をなしており、軽んじられたり攻撃されたと思えば、防衛反応がはたらいて攻撃的になる。その逆に、相手の好意を感じたときは、こちらも好意的になる。

    要するに、まったく感情というものが欠落している人間がいたとしても、きわめて高い論理的能力を持ち合わせていれば、感情を模倣することは可能だということだ。』

    新年早々、強烈な一作。めちゃくちゃ面白かった。サイコパス怖いなぁ〜。
    他者への共感能力が著しく低いおいらからすると他人事ではないなぁ〜。

  • 蓮見先生の心情描写がとても細やかでハラハラ具合がとても伝わった。二回読むことは多分ないけど、読んだ時のハラハラドキドキ感は忘れないと思う作品。

著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

貴志祐介の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
高野 和明
伊坂 幸太郎
貴志 祐介
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×