- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163820101
作品紹介・あらすじ
短編の名手、"日本のブラッドベリ"こと朱川湊人が、お贈りする「家族」と「写真」にまつわるちょっぴり不思議で哀しい物語。
感想・レビュー・書評
-
素敵なタイトルとやわらかな色あいの表紙に
勝手にほのぼのした読後感を期待して読み始めて。。。
一篇めの表題作で、血の気がひいてパニックに!
まるで、ルスツリゾートで、優雅に空中散歩を楽しむアトラクションだと思い込んで
娘と一緒にブランコっぽい乗り物に乗ったら、
いきなり上下左右360°ぐるんぐるん回り始めて顔面蒼白になった、あの時のような。
痛ましすぎる物語でした。
昭和のこどもの世界を、写真をモチーフに描いた短編集。
切なさを通り越して悲痛なお話、背筋がざわっとするような味わいのお話が続いて
「ああ、久しぶりに☆3つをつけなきゃいけないの?!」と涙目になり
やっとたどり着いた最終話の『スズメ鈴松』。
無骨な手でわしわしと握ったいびつなおにぎりのような
汗と埃で汚れた肩にひょいと乗っけて、思いがけずしてくれた肩車のような
父親の不器用な愛情に救われます。
このお話を最後にもってきてくれてありがとう!と
編集さんと本の神様に感謝を捧げてしまいました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
実際にはその写真はないにもかかわらず、記憶の中にくっきり残っている画像が私にはいくつかある。幼稚園のジャングルジムの上から園庭を見下ろしているショット。夜明け前の暗い街を、歩道橋の上から見下ろしているショット。小学3年のときに担任の先生の家を訪ねて道に迷ったときのショット。中学の卒業式のあと、ふと振り返って目に入ったあの人とあの子のツーショット。高校の卒業間近のある日の教室でのワンシーン。
どれもみな、カメラで撮ったわけでもないのに、くっきりと記憶の中に残っている。
もちろん、本当に撮った写真の記憶も残っている。
表題作の「サクラ秘密基地」を読んでそんなことを思い出した。
「飛行物体ルルー」は、ちょっとSFがかったお話なのかと思いながら読み始めたが、途中からもしやこれは、と思った。ある種の神秘体験が扱われているのだが、そこからの展開はやはりと思わされるものだった。佐野洋さんはラストの7行で衝撃を受けたと評したそうだが、私は「やっぱり」と思った。なるべくしてなった結末で、主人公の思考の変遷が悲しかった。
すばらしい小説というのは、人間のいろんな側面を教えてくれる。ちょっとした出来事がその後の人生に及ぼす影響とか、ついうっかり見逃してしまって後から悔やむ人生のある瞬間、ある人の思いもかけない一面など、フィクションだからこそくっきりと切り取って、見せることができるのだ。
朱川さんの作品は、ちょっと不思議な出来事がうまく織り込まれていて、「ああ、もしかしたら私にもこんなことが起きるかもしれない」と思わせてくれるものがある。だからどの作品も心にしみてくる。
「泣ける」というよりは、人の世のままならなさ、無常感、無力感などで、じんわりと切なくなってくるのだ。
読後感はひたすら「哀しい」のだけれど、その「哀しさ」はとても豊かで、いろんなことを考えさせてくれる。充実の読書体験であった。 -
地元図書館で借りた本。
とりあえず夏休み中に朱川さんの本が読みたくて借りた。
朱川さんは『かたみ歌』のイメージが強いが本作は『かたみ歌』ほど強烈に心が揺さぶられ悲しくなったり切なくなったりはしなかったが、別次元の位置にあるのだろう。
心の揺さぶれ方は違ったけどこっちの方がいいとかあっちのほうがいいとかではない。
朱川さんはなぜこうも人の死を扱うのだろう。
朱川さんの文体はすっきりしてて、変に技巧的でなくとても読むのが楽だ。
あと途中で読むのを中断してもそれが困らない。中断する前と同じ状態で読める。
それが今回改めて感じた。
読むと引き込まれて、で、続きどうなるの?どうなるのと読まずにはいられない。
話の途中からもしかしてと思うことが的中したり外れたりどんでん返しがあったり。
それの最たるものが「飛行物体ルルー」
「そうきたか!」と驚いた。啓子がマリちゃんに勧誘しているこのがなまなましくって、実際もこうだったのかしらと怖くなった。
啓子とマリちゃんの人生はこれから一生交わることがないんだね。
ルルーが啓子とマリの仲を壊したと啓子は言ってるけどマリは仲直りさせるために来たと言っていることが対照的。視点が違うと意味もだいぶ異なる。だけど啓子はルルーを見たからその道へ行ってしまった。
ルルーは何のために地球にきたとか目的は持っていないと思うけど結果的にいろんなことを引き起こした。
「月光シスターズ」は山岸涼子の作品のような妖しさがあった。
彼女がこの作品を漫画化しても違和感ないなあ。
そういえば道をはずれる女の子がまるで一種の典型的パターンのように頻出していたなあ。 -
☆ 4つ
朱川湊人の作品には独特の雰囲気がある。
これわ一般的に言うと「ホラー小説」というカテゴリーに入ってしまう雰囲気なのだろうけど、わたしは一般的ホラー小説というものをほとんど読んだことが無いので朱川湊人特有の雰囲気なのだなぁ、と思っている。
一言で言うと、やはり暗い。でもその暗さの中に、なぁんだか分からないけど、こう仄仄(ほのぼの)とする様なところが有るのです。
そりゃただ暗くて怖いだけぢゃ面白くもなんともないのでして、それでは直木賞などは獲れない。今時わあんまり直木賞なんてものに大切な意味は無いと思うけど、まあそれなりに贔屓の作家さんを見つけるのには役立つのだろう。
そこへいくと「本屋大賞」ってのは商業的に大成功をおさめてしまってるね。
大賞に輝いた作品はあっ!という間に増刷が掛かって何万部も売れるのだものね。でも今年の本屋大賞ノミネート作品は「おいおいそんなに沢山の冊数では読むのがとっても大変ではないかい」と思わづ文句言いたくなるくらい、上/下巻だの1,2,3巻で1ノミネートってのが多かったね。
これは少し冷静になって考えると、どうせ売れるのなら1冊売れるより複数冊売れたほうが、作家/出版/取次/書店 とまあこれだけの従業員の人達が嬉しい思いをするわけだからそうしようそうしよう、と示し合わせた結果(こう言うを「談合」という・・・のか?)の様な気配が、決して濃厚激辛ではないが中辛くらいにはするのだ!
いや冗談でんがな。すまんこってす。すごすこ。 -
子どもの親を想う気持ちに泣いて、怪しいと思ってた人がぐるっと反転してぞわっとして、うーん…?となって、うんうんとなって。ほんとにこの人の短編は多種多様でどれも面白い。
-
良い話と良くない話の差が激しい。それだけバラエティに富んでるのかもしれないけど。
良かったのは「コスモス書簡」と「スズメ鈴松」。
特に鈴松の話は素直に良い。
良くなかったのは「飛行物体ルルー」と「黄昏アルバム」。
特に黄昏アルバムの主人公が嫌。 -
日本中がオカルトや心霊などに夢中だった昭和のあの時代の記憶が甦ってきます。
怖いけれど懐かしい、ぞくっとするけど温かい。
いつもの朱川ワールドです。
「サクラ秘密基地」現実にも同じような事件は何故繰り返されるのだろう。子供にとって親は唯一無二の自分を守り愛してくれる存在なのに。哀しくて胸が詰まる思いがします。
でも「スズメ鈴松」で子を愛しく思う父の姿に胸を打たれ、心が温かくなりました。 -
タイトルを見てホッコリした話しだと思って読んでしまったから、毎話ひゃー!ってなってしまった(笑)
最後の話しは本当にしんみりホッコリでした。
2018.2.17 読了