- Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163822402
作品紹介・あらすじ
不思議で切ない「三島屋」シリーズ、待望の第三巻江戸は神田。叔父の三島屋へ行儀見習いとして身を寄せるおちかは、叔父の提案で百物語を聞き集めるが。人気時代小説、待望の第三巻。
感想・レビュー・書評
-
三島屋変調百物語の第三弾です。変わり百物語として、不思議な話を聞くことになったおちか。全部で6篇の話で、今回は、ほかの百物語に呼ばれて話を聞く会もあります。
話の種類は、バラエティーにとんでいて、いろんな意味での怪異譚の集まりとなっている。怨恨もあれば、心温まるような話もある。こころがざわつくような話ばかりではないところはいいし、怖い話は、心がざわつくような嫌な感じをさせる話になっているのもすごい。
「くりから御殿」は、初出が2011年7月であり、震災をイメージさせる話になっている。震災に遭い、被害を受けて生きていく人達へのメッセージが暖かい。
「泣き童子」は、ゾワっとくる怖さで、1巻目の曼珠沙華の話をなんとなく思い出した。最後に、一気に畳み掛けるようにくる怖さと、最後の子供の一言に鳥肌のたつ思いがする。
「まぐる笛」は、またこれまでとは、まったく違う怖い話。「荒神」を思わせると書いてしまうと概要がわかってしなうかもしれないが、こう言う話を怖く書けるのも宮部みゆきの凄いところかと思ってしまう。怪異の痕跡描写などは、スプラッター系かと言う感じもあり、改めて色々な引き出しがあると。
「節気顔」は、後々に繋がりそうな話でもあり、独特な雰囲気の話。怖さと言うより不思議さがメインであるが、その中に身近な人を亡くした人の心模様がそれぞれに描かれているところが、よく、それを受け止めると言うことをしていく男の感情も切ないものがある。
安定したストーリー展開で、どの話も楽しく読めるが、その中で、随所に現れる表現に、ハッとするものがあり、このシリーズを読みたいと思うところがある。話の最中での黒白の間の雰囲気を表す表現や語っている人の描写で、話の奥行きが出たりとホントにうまいなぁと思うことが多い。気になったのは、フレーズに書き留めるようにしているが、このシリーズは結構量が多くなるので、それも楽しみである。後、ホントは季節や風俗を表す言葉も全部理解していればとおもうのだけれど、こちらはなかなかいつかずと言う感じです。
そして、今更ながらに奥付でびっくり。題字 京極夏彦。もちろん同じ事務所とかは知ってますが、改めてこんなこともできるのか、この人、とびっくりです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ三巻目。
このシリーズは巻を追うごとにまた一つ好きになっていく、そんな気がするからたまらない。
今作は怖さと哀しさと温かさが絶妙だった。どの語りも甲乙つけがたいぐらい良かったけれど、最近、何度も胸が痛んだ自然災害。
それを絡めた「くりから御殿」が一番印象に残った。
ずっと負い目を感じ生きることのつらさや哀しみ、その哀しみを一気に希望へと包み込む温かさに涙した。
毎回、選びに選んだ言葉をかける おちかの姿も良かったな。
お勝さんの存在感も良い意味で増してきた。
シリーズ追いかけていこう。-
こんにちは(^-^)/
どんどんよくなっているんだ!
私も次に進みたい…けど、なかなかねぇ。
1で止まったままだよ(〃∀〃)ゞ
...こんにちは(^-^)/
どんどんよくなっているんだ!
私も次に進みたい…けど、なかなかねぇ。
1で止まったままだよ(〃∀〃)ゞ
お勝さんは奥さまだったっけ?2019/11/14 -
けいたん♪こんにちは♪そうそう、深みを増してきたよ♪
また第六巻が来月出るから読み進めてるよ♪
お勝さんは前回登場して、三島屋メンバーに...けいたん♪こんにちは♪そうそう、深みを増してきたよ♪
また第六巻が来月出るから読み進めてるよ♪
お勝さんは前回登場して、三島屋メンバーになった方なの♪
良い人だわ♪
シリーズものってタイミングが難しいよね。
続けて読むと飽きるし(笑)2019/11/14
-
-
「おそろし」、「あんじゅう」に続く三島屋変調百物語の3作目。
楽しみにしていました。
輪郭がくっきりした話が多い印象。
神田の袋物屋、三島屋では、不可思議な話を集めている。
黒白の間という座敷で、話すのは一度に一人だけ、くわしく聞くのは姪のおちかという娘一人。
語って語り捨て、聞いて聞き捨て。それだけが約定。
事情があって実家を離れ、叔父夫婦の三島屋で働いているおちかです。
「魂取の池」
神無月の炬燵開きの日、若い娘が訪れた。
祖母の育った村に村にあった不思議な池とは。
「くりから御殿」
白粉問屋の夫婦が訪れる。
病を得た主人は、漁師町の出。
四十年前、子供の頃に、山津波で大勢の村人や友達が亡くなった。そのとき、不思議な夢を見るたびに‥
心配して隣室に控えていた妻は、生き残ったことを悔いる夫の気持ちを知っていた‥
震災で生き残った人に寄せる、作者の思いが感じられます。
「泣き童子」
霜月のねずみ祭りの日。商家にとっては大事な風習なのだ。
やつれきった男性が訪れ、幼い子の話をする。
なぜか言葉が遅く、泣き出したら泣きやまない。
後ろ暗いことのある人に気づくと、泣き出すのだ‥
「小雪舞う日の怪談語り」
冬奉公といって農村から出稼ぎに来る女手が増える時期。幼いおえいという女の子も三島屋にやってきた。
珍しく、おちかが振袖を着てお出かけする楽しい趣向。
青野利一郎とも、このときに久しぶりに会うことに。
札差の井筒屋の肝いりで、「年の瀬に心のすす払いをする」という怪談語りの会に誘われたのだ。「怪談を聞くと、人の心は神妙になる」と。
この中に四つ話が入ってます。
普請道楽の父が建てた家の怪異。橋から異界にさまよいこむ話。片目で病を見抜く母の話。岡っ引きの半吉が若い頃、看取った男のもとに夜ごと現れた怪異。
おちかが両国橋で出会った微笑ましいことも。
「まぐる笛」
若い侍が話す故郷の話。
いつ現れるかわからない怪物「まぐる」が村に現れた日。
侍の母は、「まぐる」を抑える役をになう女性だったのだ。
「節気顔」
年あけて、おちかも18に。
春分の日に聞いた話。
放蕩者の長兄が改心して戻ってきた。
離れに隠れ住むようにして、二十四節気の日には一日出かけている。
姪が見てしまった秘密とは‥
大人になった姪が、死んだ人に会いたいという気持ちを理解した様子に、どこか心揺り動かされます。
三島屋の人々の暖かさ。
女中のお勝は疱瘡の跡があり、<禍払い>という役目も持っていた。
おちかが聞く話は、若い娘が一人で聞くには重すぎるような場合もあるけれど、尋常でない経験をした身には、そうでもしなければ救われないものがあるのでしょう。
「お嬢さんはもう、去年(こぞ)のお嬢さんではありませんからね」というお勝の言葉が心強い。
江戸情緒ゆたかに、静かに流れる日々。
おちかが幸せになることを祈ります。 -
三島屋変調百物語3巻目。
読んだ後にほっこりとなる話や、あんた、来るところ間違えてるよ!と言いたくなる話がありました。
そして、要所要所でお勝さんの存在がいい感じです。 -
三島屋変調百物語の第三弾。
六篇の短編。表題作の泣き童子が怖いです。 -
神田三島町の袋物屋三島屋に身を寄せているおちかが『黒白の間』で変わり百物語の聞き役になってお客から聞くシリーズもの第三弾。第二弾が図書館になかったのでこの巻を先に読んだ。
以下ネタバレバレ。
魂取の池
主人公は語り手お文の祖母。故郷岩槻に魂取りの池という猪の女神が住む池があり、若い男と女が一緒にその池に行くと、必ず男が他の女を作って別れてしまうという言い伝えがあった。祖母は試しに許婚と池に行ったら、相手は駆け落ちして逃げてしまった。親はものを言うのは金だからと次に金持ちの男と縁組させる。再度池に行ったら、今度は家と店がみんな家事で焼けてしまった。
と言う話。目先のことにおろおろせず、繋がっている縁を大事にしろ、ということか。
くりから御殿
語り手は白粉問屋「大坂屋」の主長次郎。子供の時、大雨で山津波が起き、家々が皆流されてしまい、両親を失う。網元の別宅に孤児は送られたが、夢に仲良しだった3人の友達が一人づつ出て来てかくれんぼうすると、必ず翌朝その子の遺体が発見される。
自分だけ残されて40年、目の前が真っ暗になって今度は亡くなった子たちが自分を探している。早く見つけて欲しいと大声を出しても、こんなん急や、おかみさんが気の毒や、いっぺんお帰り、といって結局息を吹き返してしまう。一緒に連れて行って欲しいと思ったことを妻に話せなくて、おちかのところに話に来たという話。
泣き童子
瀕死の状態で店先で倒れた家守の老人甚兵衛が語り手。捨て子の末吉を看板屋に預けたら、2年経っても言葉を喋らず、ところがどんなに宥めても泣き止まない時がある。原因を探ると、住込みの職人の一人と一緒になると泣き出すことがわかる。一晩末吉を預かるが、その間に看板屋に押し込み強盗が入り一家皆殺し、口利きをしたのがその職人だったことがわかる。その後、引き取り手のない中、娘のおもんが遅くまで外出して帰った途端末吉が泣き出す。おもんには片恋の相手、紙問屋の若旦那がいたがその男は遊び人で、その日池之端の茶屋の一室で手切れを言い出され、思わず火箸で首を突き刺したのだ。そして泣き止まない末吉をおもんは階段から突き落として殺す。殺しの下手人は上がらなかった。6年後、おもんは嫁ぐが、生まれてきた孫は末吉のように口をきかない。おとといの晩、紙問屋の若旦那を殺した同じ日に孫は突然泣き出し、おもんは二階から飛び降りて死んだ。甚兵衛に孫は「じじい、おれがこわいか」という。甚兵衛は孫の首を絞めて殺す。そのまま死のうとするが死に切れず、おちかのところに打ち明けにきた、という話。おどろおどろしく怖い話だった。
小雪舞う日の怪談話
珍しく舞台を黒白の場から井筒屋七郎右衛門の怪談語りの会に移し、おちかが好きな青野利一郎、半吉親分らと出かける話。建て増しの家の騒動、橋で転んではいけない、転んだ時誰かの腕にすがったらいけないと言われながらすがってしまった女の話、人の病を見破る千里眼を持った母が、二人の郡奉行のどちらにつけば出世するか予想するが外れ、人の病は見えても人の運命や心の向きまでは見えないと抗弁した話、半吉が深川十万坪の先の小原村に、危篤の病人を看取りに行くが、その相手は極悪非道の十手持ち、与之助であったという話。一話に4つ話が入っていて得した気分。
まぐる笛
第三シリーズで一番怖かったのはまぐる笛。語り手は方言丸出しの侍赤城信右衛門(一郎太)。国許の尼木村は檜の産地。ある日一郎太はいじめに苦しみ家出を試みるが道に迷い、まぐるという獣が人を喰べた跡を見つける。人を喰う獣、まぐるの怖さ!それを退治できるのは男ではなく、村に代々伝承されるまぐる笛を吹くことのできるたった一人の女性、一郎太の母だった。笛の音に乗せられ、まぐるは自身で自分を食べることで初めて退治されたのであった。
節気顔
小間物屋、丸天のお末が語り手。三男坊の父の長兄春一は飲む打つ買うの放蕩もので勘当されたが、ある日戻ってきて一年だけ置いてくれと裏の物置に住みだす。24節気の日だけは朝から一日何処かに出かけていく。それ以外は奉公人のように働いた。ある日節気の日にお末が物置に行くと春一とは違う顔をした男が血だらけに怪我をしていた。
実は春一は運気が落ち博打への執着も薄れ、死に場所を探すうちに見知らぬ商人を名乗る男に3両渡され、その日以来、節気の日一日、顔が死者の顔に変わり、その顔を知る人を訪ねる仕事をしていた。怪我をしたのもその顔の男を殺した蕎麦屋の包丁人を訪ねたからだった。春一は肺病にかかっており、一年間仕事をするうちにだんだん影が薄くなり、ついには顔も変わらなくなり、年季が明けたと商人に言われ、息を引き取った。
この商人は第一シリーズで登場したあの世とこの世をつなぐ仲介屋だと直ぐ分かった。
三島屋変調百物語はまだまだ続く。この先が楽しみだ。
-
《三島屋変調百物語》シリーズ第三作。
久しぶりの再読。
これまでに比べると短め、アッサリとした作品が多かった。
表題作の「泣き童子」、一体何のために生まれたのか、何のために生きているのか。
終盤の「まぐる笛」に出てくる『まぐる』の方がまだ解る気がする。
かつて「凶宅」でおちかを散々翻弄した『商人』が最終話の「節気顔」に出てくる。彼もまた何のために現れるのか。
この話の場合はそう悪い話でもなさそうだが、こうやって人々を翻弄することが目的なのか。
シリーズとしては、この時点ではまだおちかと青野先生は縁がありそうな描き方をされている。ということは次の第四作で動きがあるのか。 -
三島屋の変わり百物語、まだまだ続きます。
宮部みゆきの時代ものではいちばん好きかも。ぼんくらシリーズも捨てがたいが。
今回がいちばん百物語らしい感じでした。
噂を聞きつけ黒白の間を訪れた人々が、不思議で面妖な身の上話や打ち明け話をしていく。
聞き手は、三島屋主人の姪おちか。
彼女自身も幼馴染の許婚を別の幼馴染に殺されてしまうという不幸にあい
そこから立ち直るために始めたのが、この変わり百物語。
カップルで姿を映すと、男のほうが心変わりしてしまう魂取の池。
亡くなった友達の声は聞こえるが姿は見えないからくりの力のある御殿。
言葉を失い、後ろ暗い人の前で火のついたように泣く童子。
選ばれた女性が受け継ぐ、人を食う獣であるまぐるを倒す笛を吹く力。
二十四節季毎に死者に顔を貸す男。
くりから御殿はほろりと泣けた。
泣き童子はぞっと怖い。
そして小休止的に入る、青野先生とのデート話。
といっても甘い感じは全くなく、怪談百物語を聞きに行くのですが。
怪談語りが心の煤払いとは、言い得て妙ですな。
深く沈んで固まっていたおちかちゃんの心が
不可思議語りを聞くたびに、少しずつ動いて開いていって
季節も冬を越して年が改まり、春を迎える。
ほんとに100まで書いてくれるのかな。
おちかちゃん、先はまだまだ長いけど時間をかけてゆっくり傷を癒していこう。 -
三島屋シリーズの第三弾です。
三島屋の白黒の間で不思議物語を聞く、娘・おちか。
「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」
すべて、白黒の間だけの秘密語り。
どんな不思議な話も、真摯に聞いてくれるおちかのもとに、今回も様々な話が寄せられます。
いつも思うのですが、どんなおどろおどろしい妖がでようと、そのものは怖くないのです。
その妖を作り出してしまうのが人であるということ。
人の心に巣くう闇の部分が、浄化されず増幅されてしまう怖さ。
特に、表題作の泣き童子は、切なくて苦しくなります。
漱石の「夢十夜」を思い出しました。
おちかが、少しずつ強くなっていくのも頼もしいです。