ミッドナイト・バス

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900063

感想・レビュー・書評

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  • 東京の仕事を辞め、故郷の新潟で長距離深夜バスの運転手に転職した利一。若い恋人を呼んで準備していたところに、息子が傷ついて帰ってきた。娘は婚約者との結婚に踏み出そうか迷っていた。どんな形でもいいからリイチさんの人生の隙間に居させてという恋人がいるのに、優しさのせいか元妻と揺れて優柔不断で嫌になった。途中の彩菜の仕事がほっこりしたのと人が怖いと言ってた怜司が「家族がいたんだ、守られていたんだ。その記憶ひとつで、僕はもう行けるよ」と前に進めたのと、まあリイチさんも仕方ないかシル・ブ・プレ。アリガト、アビヤント〜

  • 東京での過酷な仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている利一。
    ある夜、彼が運転するバスに乗ってきたのは、十六年前に別れた妻だった――。
    父親と同じく、東京での仕事を辞めて実家に戻ってきた長男の怜司。
    実現しそうな夢と、結婚の間で揺れる長女の彩菜。
    そして、再婚した夫の浮気と身体の不調に悩む元妻、美雪。
    突然の離婚で一度ばらばらになった家族は、
    今、それぞれが問題を抱えて故郷に集まってくる。
    全員がもう一度前に進むために、利一はどうすればいいのか。
    (アマゾンより引用)

  •  家族の絆。その大切さを痛いほど知っているのにうまく伝えられない。
     そんな人々が丁寧に描かれていた。

     ただ志穂についての描写が物足りなく思う。利一の人生後半の希望となる重要な役どころのはず。せめて、その存在感を際立たせるような一条の光を当ててしかるべきだと思った。

  • 読み応えがあった。
    家族だった人達がバラバラだったけど、またひとつになってそれぞれの生活に進んでいく。戻るではなくて、進んで行った。そこは決して楽しい幸せばかりが待っている世界ではなさそうだけど進んで行こうとしている。
    全体的に切なさが漂っていた。

  • 各々悩みを抱える乗客達を乗せた深夜バスは今宵も静かにひた走る。
    真っ暗闇の夜を通り越したら、みんなに等しく朝はやって来る。
    見て見ぬ振りをする煮え切らない父にも、都会に馴染めずストレスを抱え爆発寸前の兄にも、仕事と結婚の板挟みに悩む妹にも、夫の浮気と体の不調に悩む元妻にも。
    バラバラに散らばっていた不器用な家族は、やがて自分達のペースで人生を進み始める。
    ゆっくりと穏やかに。

    本編も良かったけれど、時折付けられるアナザーストーリーがとても好き。
    しんみり泣きそうになる話が多く、とても良かった。

    今、先の見えない暗がりの中でもがいていたとしても、明けない夜は決してない。
    その先には輝かしい朝日が待っている。
    じわりじわり元気をもらえた。

  • バブルの頃東京の不動産開発会社で働いていた高宮利一。
    会社の倒産により、故郷の綺麗な空気のなかで、自分一人の技量と
    裁量で稼げる職に就きたいと、大型免許を取得し、
    四十代の後半になった今は、新潟で高速バスの深夜便の運転手。
    ある時、乗車して来たのは十六年前に別れた妻だった…。


    何かの事情で仕事を辞め東京から故郷に舞い戻った息子・怜司
    ネットの世界で名前を知られてゆき、夢の実現と結婚に揺れる娘・彩菜
    東京で小さな定食屋を営む恋人・志穂
    父親の介護と再婚した夫の浮気や身体の不調に疲弊してる元妻・美雪
    娘の負担になっていると心を痛める元義父・敬三
    昔、一世を風靡したバンドのボーカル・江崎
    何かを抱えながら、もがきながら必死で生きている
    それぞれの人々が繋がっていく。

    一度壊れてしまった家族。
    子供を置いて家を出るしかなかった母親。
    妻を守る事が出来なかった父親。
    傷付きながらも父親の元に残った子供達。
    それぞれ、傷を抱えたまま離れ離れだった家族。
    ひとつのきっかけをもとにまた顔を合わせるようになる…。
    当時は気付く事すら出来なかった事実。
    幼くて伝えられなかった思い。
    深く深く心に刻まれたわだかまり。
    相手を想う気持ちで溢れているのに、
    それを上手く伝えられない不器用な人達。
    今だからこそ、時を経たからこそ解る事、伝えられる事がある。
    バラバラだった家族が少しずつ少しずつ歩み寄り、ほどけていく。
    そして、それぞれの新たな道に進んでいく。

    優しくて、穏やかな描写なのにグングン物語に引き込まれ
    言葉のひとつひとつが強く心に響きました。
    静かで暗くなりがちなのに、物語全体に漂う優しい空気が良かった。
    温かく優しい気持ちになれました。

  • 家族、家庭、仕事、結婚一人一人の事情に胸が締め付けられる場面がたくさんありました。
    人生うまくいかないことだってたくさんある。
    じゃぁどうやって乗り越えようか、
    いろんな思いが詰まったお話でした。

  • 2019/9/30
    これは寸止めの距離が結構遠い。
    もうちょっと教えて欲しかった。
    分かってるよ、利一が行って志穂さんは喜んでくれるやろう。
    怜司は海外でちょっと楽に生きていけるやろう。
    彩菜ちゃんは友達と事業を大きくしてくんやろう。
    みんな悩みながら進んでいくんだろう。
    でもそこもうちょっと見たいやん。
    みんな優しくてちょっとダメで愛おしいな。
    愛情じゃなくて愛惜だって。すごい。
    どっか行きたくなった。

  • 小説を興味を持って、面白いと感じる要素に共感と願望があると思う。主人公は40後半の男性、離婚経験はないものの、家族について悩み、後悔し、感じることに共感でき、今の自分自身にとってど真ん中ストライク。

    アマゾンの内容紹介から
    ーーーーーーーーーー
    東京での過酷な仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている利一。
    ある夜、彼が運転するバスに乗ってきたのは、十六年前に別れた妻だった――。

    父親と同じく、東京での仕事を辞めて実家に戻ってきた長男の怜司。実現しそうな夢と、結婚の間で揺れる長女の彩菜。そして、再婚した夫の浮気と身体の不調に悩む元妻、美雪。

    突然の離婚で一度ばらばらになった家族は、今、それぞれが問題を抱えて故郷に集まってくる。全員がもう一度前に進むために、利一はどうすればいいのか。

    家族の再生と再出発をおだやかな筆致で描く、伊吹有喜の新たな代表作!
    ーーーーーーーーーー

  • そう何作も読んでいませんけれども伊吹さんは暖かい作品を書かれますね。ずっと気になっていた一冊をやっと手に取りました。

    どの人物も良く描けているなとまず思いました。後半に主に登場してくる主人公の別れた妻の父の台詞の一つ一つが、心にずんずんと打ち込まれるかのようでした。
    こういう老人になりたいものだ、と思いました。

    途中途中の章立てに、言わば脇役である登場人物たちにクローズアップする章が差し込まれており、最初は「なんでここにわざわざ本筋に関係の薄い人の話を挿入するのか」と思いましたが、読み進めてゆくと舞台が「バス」であるからというのも理由の一つなんだな、と作者の意図は納得できました。それでも「この話いるかな」と思う章はありましたけれども…

    そうたくさんは読んでいませんが、まだまだポテンシャルがありそうな作家さんに感じられます。
    デビューされてからは大きな賞は候補止まりのようですが、これから年齢を重ねられたら大きな賞を受けられる時もあるかも、という気がします。
    注目の作家さんの一人です。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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