オールド・テロリスト

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 890
感想 : 119
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  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902395

感想・レビュー・書評

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  • 老人たちがテロを起こすという話。

    「コインロッカー・ベイビーズ」「愛と幻想のファシズム」「半島を出よ」のような村上龍得意のカタストロフィものといいましょうか。先に挙げた作品のように今回もすごいし、語り口や伝えようとしているメッセージはよりシャープになっているような気さえします。

    これだけ突拍子もない話を書くには、いろいろな意味でタフさが必要なはずですが、村上龍は年齢を取ってもそこは全く衰えていないなと思いました。突拍子もない話なんだけど、ものすごく現実味もあったりして。「コインロッカー・ベイビーズ」の衝撃を思い出しつつ、今だにこういう村上龍らしい小説を読めることの喜びを実感しながら読めた作品でございました。

  • いや~!!面白かった
    さすが師匠!!

  • NHKのロビーで火炎テロが発生、落ち目のフリージャーナリスト関口は、その場に居たため独占ルポを書くこととなる。しかしそれは偶然ではなく、とある人物に仕組まれたものだった。それは資本力も頭脳も実行力も持ち合わせた老人グループだ。
    その後も商店街や新宿の映画館での残虐なテロ現場に居合わせスクープをものにする。当然ながら、その老人グループの正体や動機の解明にあたるが、凄惨な事件の連続で心理的なダメージを受ける。それでも謎の心を病んでいる美女の助けもあり、徐々に真相に近付いて行き、更に大きなテロ計画を知る事となる。
    それはナチスドイツの88mm対戦車砲(射程距離10km)で原発を破壊する計画を世界に知らしめて、円を経済的に破壊するものであった。そしてそれは日本政府や米軍の知るところとなり、犯行グループは米軍と戦うこととなる・・・。
    老人グループの犯行動機や目的も結構真面目で違和感が無く面白い。
    読み始めから装丁のイメージが小説の感じと余りに違うので不思議だったが、その訳もラストには明らかとなる。
    細かいことを言えば内閣府と内閣官房を混同しているのでは無いかなと思った。読者に判り易い内閣府を使っただけなのかも知れないけど。

  • 戦争を生き抜いた老人たちは、今の日本をどう感じるのだろうか?
    命を賭して守った日本はこれでいいのだろうか考えさせられる。
    そういった先輩である老人を我々は邪魔者扱いしていないだろうか?

    ISやマスコミ・原発問題などを盛り込み、ページ数の割には展開が早く流れるようであった。
    しかし、その分キャラクターの書き込みが弱いように感じた。

  • 村上龍著『オールド・テロリスト』読了。
    装画からくる印象とは違い…重くそして楽しい!?戦争や食糧難、生き抜くことが大変な時代が日本にもあったのだ。そんな時代を生き抜いた老人達が…テロをやって歴史を変える!?何か今の若者に物足りない力を呼び覚ます作品かなぁ。奇しくも本書発行日に新幹線内で火災が起きた事件は未来予告的発想?偶然か!?必然なのであろうか?

  • 久しぶりに村上さん読みました。
    老人よ 何をしたいんだ。

  • 図書館で借りた本。
    大手出版社のフリーのライターとして、活躍していた関口は、出版業界の縮小とともに、仕事も次第に無くなって行き、とうとう奥さんも子供を連れて出ていってしまい、自暴自棄になっていた。
    そんなある日、大手出版社の元上司から「ルポを書いて欲しい」と依頼を受け、一時的に仕事を得る。
    しかし何故、自分に声がかかったのか、謎のまま予告されたテロの現場へと赴く。
    こうして、セキグチは巨大な陰謀に巻き込まれていった。

  • 表紙のイラストからコメディを想像してたら全く違った(¯―¯٥)
    序盤からえらいもん見ちゃったよ的な感じで、テロもどきでいっぱい人が死んじゃうし。。。。
    村上龍氏は反原発なのかなあ。
    読みにくくて時間がかかったがなんとか意地で読了した感じ(¯―¯٥)

  • 2015/09/06読了

  • 「年寄りは、静かに暮らし、あとはテロをやって歴史を変えればそれでいいんだ」

     この小説は「希望の国のエクソダス」と対をなす。現代システムの閉塞感をぶち破った若者たちの独立を描いた1o年後に村上龍が書いたのは、本気で怒る高齢者だった。


     勢いで壁を突破できる若者とは違い、高齢者には経験がある。何をどうすればどうなるかがわかっている。しかもそれが戦争を生き抜いた戦前の生き残りなら、なおさらだ。

     アル・カイダはアメーバ状の組織であるという。トップ不在、すべての工程が独立し、独立した個々は少人数、小組織がアメーバのように有機的につながるために一人を捕まえても全体がわからない。

     アメーバ状に組織された高齢者のテロ集団は簡単に全容をつかませない。

     
     フリージャーナリストのセキグチは極貧生活に喘いでいた。妻は子を連れてアメリカに渡り、捨てられて新大久保の四畳半に身を置いていた。

     始まりは一本の電話だった。元上司からかかってきた電話は、NHKでテロが起きるという予告が届いた。しかも、セキグチを指名して現場を取材させろというものだった。

     半信半疑で現場に出かけたセキグチだったが、予告通りにテロが起き、ロビーにいた数人が焼死した。

     さらに、セキグチを名指しする電話は続く。次に予告された池上商店街では草刈機で自転車に乗った人の首がはねられた。

     そして、第三のテロでは歌舞伎町のシネコンで毒物と爆薬により千人近くが死亡する大惨事になった。

     一連のテロの裏で暗躍していたのは、すでに引退して余生を過ごす高齢者たちだった。


     日本に住んでいるだけで、経済に政治に、何か大きいものに対する怒りは誰もが持っている。

     それを意識的せよ、無意識にせよ目をつぶってやり過ごしている。

     その怒りを発散させることにした。老い先短い老人たちの反逆劇。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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