くちなし

著者 :
  • 文藝春秋
3.44
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本棚登録 : 820
感想 : 134
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907390

感想・レビュー・書評

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  • 短編集でどの作品も素晴らしいってすごい。非日常を日常的に書かれてて、いま生きてるこの世界とは別次元で本当に存在してるんじゃないかと思った。けだものたちはクリープハイプの「けだものだもの」の元になったお話。

  • 奇妙な世界観の愛にまつわる短編集。
    「くちなし」…愛している人との別れで身体のどこかをもらえるんだとしたら、どこをもらいたいかな…
    「花虫」…運命で結ばれた恋人同士に見える幻の花。人間の体内にもぐりこんだ羽虫のせいだとしてその愛情は偽物って言いきれるのか…
    「愛のスカート」…純粋に、報われないけど素敵な話だと思った
    「けだものたち」…ある意味食べるのは究極の愛のカタチ?
    「薄布」…気持ちよくなる遊び方とは?
    「茄子とゴーヤ」…私も髪を茄子色に染めたくなった。
    「山の同窓会」…私の存在価値って?

  • 読んだことのないタイプの小説。

    体の一部を相手にプレゼントするとか、運命の相手とだけ見える花だとか、人形と称して子どもを買う話とか…。
    二篇はそうした幻想的な要素は少ない話なのですが、奇妙な世界観にぐっと惹きつけられました。

    こうした奇怪な世界観を持つ物語は、奇抜性だけが全面に出ることが多いと思います。
    けれど、この本の場合、どのストーリーも登場人物の気持ちや考えは共感できる点が多く、それが幻想的な世界観にリアリティを生み出しています。

    耽美的なストーリーもあれば、報われないけれども思うだけの愛を描いた作品もある。女性の欲望を描いた作品もある。7つの作品はどれも奇妙で、個性的。
    読んだ後の感触もどの作品も違っています。

    個人的には、「花虫」と「愛のスカート」が印象に残った。
    「花虫」は、真実が必ずしも人を幸せにはしないのだなと、ありきたりな感想ではあるけれど、考えさせられた。

  • 愛のスカートがとても好きだった。

    あとはところどころ気持ちにぎゅっとなったりしてどれも本当素敵だった。
    のだけれど、ところどころ、なんかこう、もう少しほしい…て感じが残ってしまった。

  • なんとも不思議な話が多い。背景は恒川光太郎さんの作品に似ている部分もある気もするが、恒川さんはどちらかというとたんぱくな表現が多い中で、綾瀬さんの作品は、人、特に女性心理の美醜をがっつり表現されている感じ。
    「愛のスカート」「山の同窓会」「けだものたち」が特に印象に残った。

  • 幻想・奇想的な恋愛掌編7編を収録した短編集。直木賞候補だったが、どっちかというと純文学っぽくないか?

    左手引っこ抜いたり、愛しい男を喰ったり、幻想作品みたいな作品群の中で、数少ない現実的な「愛のスカート」が一番好きかな。なんともつまんない読者だけど、アパレルデザインの社長が愛する人のために日常使い用のスカートを作ることで「モノヅクリ」の喜びに目覚める作品が、この本の中に混ざっていることが、なんとも奇跡のように思えたのだ。

  • 短編集。直木賞候補だったらしい。この世ではありえないファンタジーなはなし。表題作は妖しく美しい。

  • 初 彩瀬まる
    なかなか独特の世界だった。

    短編の一話ずつ それぞれが異次元で、主人公は人間の様なのに、その中に生きる人達の生活はなんか違う。

    愛しい人に腕をあげる。虫が体に寄生してつがいを探す。産卵をする女性、海獣となるクラスメート、昼と夜を住み分けている男と女・・・・

    普通に人としての会話をしてる登場人物が 説明もなくその世界の人として生きている様子に読んでる方はどぎまぎとして、その世界に引きずり込まれる。
    いろんな生き方や愛し方を見せられて、切ない。

    美しい描写がより その世界を浮かび上がらせているようだ。
    ちょっとグロめのファンタジーでした。

  • 人も人でない生き物も同じ感情を持っている。
    それが信じられれば、素晴らしい愛の世界が広がる。
    この短編集は考えさせられるところが多かった。
    表題作の「くちなし」はインパクトが強かった。
    「愛のスカート」はじれったいながらも共感できる物語でした。
    作者の感性に感謝したいです。

  • 10年間の愛人関係にピリオドを打った時、彼が最後の贈り物に選んだのは自身の左腕だった―――。

    こんな衝撃的な展開で始まる本作は、奇想の色合いが濃いファンタジックな短編集です。
    自身の体の一部をパーツのごとく外すことができる表題作「くちなし」を始め、カマキリのように女が夫を食べてしまう「けだものたち」、ウミガメをモチーフにしたと思われる海獣変身譚の「山の同窓会」など、多くの作品でちょっと不思議な世界を体験することができます。
    個人的に一番好きなのは、体内に侵入した虫が人間の恋愛感情を操る世界を描いた「花虫」ですね。

    私自身、こういう作品はこれまであまり読んでこなかったのですが、結構楽しめました。
    例えば川上弘美さんもかつて蛇が変身する話を書いていましたが、あれよりはエンタメ寄りで分かりやすいです。
    最近であれば三崎亜紀さんあたりが描きそうな世界ですかね。

    このようなファンタジックな話で纏めた一冊なのかと思いきや、「愛のスカート」「茄子とゴーヤ」は普通のリアリズム小説でした。
    これは本作があくまで「愛」について描いた作品集であり、ファンタジー的な設定は手段であって目的ではないのだという作者の意思表示と読み取りましたが、私にはバランスが悪いように思えました。
    この2本の出来が悪いということではないのですが、やっぱり全部奇想小説で揃えたほうが良かったのではないかと。

    とはいえ、予想以上に面白かったので、彩瀬さんの他の作品も読んでみたいと思います。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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