インフルエンス

著者 :
  • 文藝春秋
3.45
  • (46)
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  • (27)
  • (4)
本棚登録 : 1177
感想 : 177
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907581

作品紹介・あらすじ

大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨(ゆり)はある時、かつての親友・里子(さとこ)が無邪気に語っていた言葉の意味に気付き、衝撃を受ける。胸に重いものを抱えたまま中学生になった友梨。憧れの存在だった真帆(まほ)と友達になれて喜んだのも束の間、暴漢に襲われそうになった真帆を助けようとして男をナイフで刺してしまう。だが、翌日、警察に逮捕されたのは何故か里子だった――幼い頃のわずかな違和感が、次第に人生を侵食し、かたちを決めていく。深い孤独に陥らざるをえなかった女性が、二十年後に決断したこととは何だったのか?社会に満ちる見えない罪、からまった謎、緻密な心理サスペンス。「読者を引っ張らずにおかない独特の謎」「行間からにじみ出る緊張感がすごい」「自分にもなじみのあるこの関係性と舞台に引き込まれた」雑誌連載中から反響続々。「サクリファイス」の著者が女たちの焦燥と決意を描く、傑作長編!!

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの近藤作品でした。
    ここでもやはり不穏な空気感が最初から漂う幕開けだった笑

    前回読んだ「凍える島」よりも上手くなっていて一気読みさせられる作品でした♪

    なにも悲惨だったりグロだったりしないのだけれど、ずっと何か少し嫌なモノがすぐ傍に居るような気持ちになりましたけど、まさに作者の思うツボになっていたのかも知れませんね笑

    うまい具合にやられた と言う巧みさを感じる作品でした♪

  • ★3.5

    大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨はある時
    かつての親友・里子が無邪気に語っていた言葉の意味に気付き、衝撃を受ける。
    胸に重いものを抱えたまま中学生になった友梨。
    憧れの存在だった真帆と友達になれて喜んだのも束の間、
    暴漢に襲われそうになった真帆を助けようとして男をナイフで刺してしまう。
    だが、翌日、警察に逮捕されたのは何故か里子だった――
    幼い頃のわずかな違和感が、次第に人生を侵食し、かたちを決めていく。
    深い孤独に陥らざるをえなかった女性が、二十年後に決断したこととは何だったのか?

    作家である「わたし」は、興味を引く話があるので会って話を聞いて欲しいとの手紙を受け取る。
    その話とは、手紙を出した人物とその友人二人の関係らしい。
    一旦は無視しようと思ったが、引っかかるものがあり、会って話を聞く事にした。
    それは、幼い4歳の頃から約40年にも渡る、三人の女性の物語だった

    近藤さんらしく、読み始めからずっとずっと不穏な空気感を漂わせていた。
    小説家である私が女性達の40年に渡るお話を聞いて行くという形式だった。
    友梨・里子・真帆の3人の回想シーンが主体だった。
    小・中学生の頃の学校の閉塞感。
    少女達の友情という名の束縛や独占欲や関係性や葛藤が
    とっても息苦しく、緻密に描かれていた。
    幼児虐待・虐め・校内暴力・レイプ・DV・殺人…。
    色んな社会問題が含まれていた。提起されていた。
    とても読み易い文章で彼女達の先が知りたくて一気読みしました。
    こんな殺人まで含んだ友情?愛情?
    繋がり切れない絆…。
    とんでもないって思いながらも、友情ってあっけなく切れちゃったりするので
    どこか羨ましい様な感情が変だけどチラリと心の何処かにありました。
    友情の在り方には考えさせられました。

    緻密な心理描写にやられたー。
    優しい人は踏みつぶされる。
    扱いにくい人間だと思われている方が快適に日常生活を送る事ができる
    という言葉になるほどなぁって凄く感じました。

  • 近藤先生は「食事描写がとてもうまい作家さん(ビストロ・パ・マルシリーズの印象)」というイメージだったが、それ抜きでもどえらい作品を書くのか…とびっくりした。
    終始淡々とした書き味なのに飽きが来ない文章力で、一気に読んだ。
    レベルが違うが、小学生の頃の苦い思い出が蘇ってきて、自分にもダメージが来たりした。

  • 一気読み!!
    夜更かししてひと晩で読んじゃった。
    話の流れも内容も、すらーっと読みやすくてわかりやすくて、おもしろかった。
    私の中で、ちょうどいいサスペンス。

  • 女性の方なら
    「あの子って友達?」
    と聞かれたときに
    「ああ・・・・知り合いかなぁ」と
    濁してしまうこの微妙さが
    分かるんじゃないかなぁ
    事件によって より誰にも語れない
    強固な秘密になっていきます
    親友というよりは
    共犯者となっていくんですね
    そこには 不思議な信頼関係が
    あったと思います

  • ある作家に友人二人とのことを書いて欲しいと女が現れるが…少女三人の知られてはいけない物語。団地の世界、自分と関係のないものに目をそらすこと、友情、表紙の写真のように不穏な感じでよく書かれていた。読みやすく、一気に読んでしまった。しかし、少々浅いかな。それと、殺人のとこ、そう簡単にいくかしらと。こんなに周りの人が死ぬなんて、おかしいでしょうし。三人はじわじわインフルエンスされてこうなってしまったのね。

  • 面白かった。子供の頃の親とか周りの大人や同じクラスの生徒とかに感じた思いがよみがえってきた。あぁそうだったな~と思いながら、あっという間に読み終えた。

  • 読書備忘録698号。
    ★★★☆。

    ロードバイクレースシリーズで大ファンになった作家さんです。

    表題のインフルエンス。インフルエンサーという言葉の基本形の単語ですが、なるほど。読後にこの影響・影響力という言葉の力をまざまざと見せつけられました。

    物語の冒頭。
    ある作家のところに、自分と2人の女性の稀有な物語を小説にしないかという手紙が届く。そして作家は、手紙を出した本人と会うことにした・・・。
    興味を唆る出だしです!
    そして場面は変わり、大阪の所謂ニュータウンの巨大な団地群。どうやら持ち込まれた物語の内容が語られる構成で進む。

    団地で育った少女、戸塚友梨と日野里子。仲良しだった2人は、里子が発した言葉がきっかけでぎくしゃくしてしまう。
    それは、里子が祖父と一緒の布団で寝ているということ。それが普通だと思っていたこと。要するに幼女に対する家庭内の性悪戯であった。
    里子が晒されている事実から救ってあげられなかった、という気持ちで負い目を感じながら友梨と里子は中学生に。そして、東京からの美女転校生坂崎真帆が登場。
    あか抜けた真帆と友達になれて友梨は有頂天になるが、真帆の母親は選民意識が強く、友梨との友達関係を良く思っていなかった。
    一方、里子は不良中学生の細尾歩とつるんで学校崩壊の元凶となっていた。
    細尾は、友梨が仲良くしていたダウン症の少女を面白半分の暴力で殺害してしまった。そんな様子を里子は笑いながら見ていたことから、友梨は里子と更に距離を置く。そんな時、真帆が団地内で変質者に襲われ、それを助けようとした友梨は変質者を包丁で刺し殺してしまった。しかし、翌日警察に自首したのは里子であった。
    なぜ、里子は友梨の身代わりになったのか?
    少年院から出てきた里子は友梨に自分の祖父を殺してくれ、と脅迫する。
    因果応報。里子が祖父に悪戯されていたことを救えなかった後ろめたさ、変質者を殺したのは自分だと自首できなかった後ろめたさから、友梨は殺害を引き受ける。
    決行の日、里子の祖父をベランダから突き落とし殺したのはなんと真帆だった・・・。しかし、転落事故として処理される。
    時は流れ、東京に就職した友梨の元に真帆から連絡がくる。
    結婚して一女を授かったが、夫からDVを働かれていると。その夫を殺してくれと迫られる友梨。やはり友梨は、里子の祖父の殺害を肩代わりしてくれた後ろめたさから、殺害依頼を引き受ける。そして殺害を実行。
    しかし、友梨が殺したのは、里子と結婚して夫となっていた細尾歩であった。
    なぜ真帆は、里子の夫を自分の夫と偽って殺害を依頼したのか?
    謎が謎を呼ぶ・・・。
    そして、物語の最終局面、ちょっとしたどんでん返しの結末。

    少女特有の、友情の名の元に行われる束縛、友達の独占、独りぼっちなることに対する脅迫的なまでの恐怖心・・・、すごく息苦しかったです。

    終始、陽がささない陰湿で淀んだ空気で満ちる荒廃した団地の描写が気持ちを暗くし、楽しくない読後感でした。笑

  •  なかなか引き込まれる話だった。

     ある女作家に私たちのことを小説にしてほしいと手紙が来た。なんとなく引っかかった作家は、その手紙の女性と会うことに。そこで彼女の過去が語られていくのだが・・・。

     訥々と語られる内容が実に面白く、それでそれで?と気になり一気に読んでしまった。
     でもでも、殺しがあまりにも簡単に起きてしまうし、その辺の葛藤などもほとんどなく、深みがなかったかな。それでも、ちょっとしたどんでん返しが用意されたりしていて満足できる作品でした。
     それにしても女同士の関係って複雑だなぁ。

  • 友情って何なんだろう?
    読み終わった後の率直な感想は、その一言に尽きる。
    3人の少女の決して幸福とは言えない半生を、同い年の女性作家に小説にしてもらおうと、当事者の1人の独白形式で物語は進む。
    決して、誰から見ても仲が良かったとは思えない友梨、里子、真帆。しかし3人の人生は30過ぎまで絡み合う。
    最近はライトな作品が続いた作者が、久しぶりに女性の怖い部分を描いた作品。読後感はあまり良くないけど、いろいろ考えさせられた。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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