宇宙から帰ってきた日本人 日本人宇宙飛行士全12人の証言

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911076

作品紹介・あらすじ

人はなぜ宇宙へ行くのか。 立花隆『宇宙からの帰還』が出版されて30年以上が経つ。同書で紹介された宇宙飛行士たちの「神秘体験」「宗教的体験」は、当時も今も大きなインパクトを読者に与えている。同書により、宇宙というのは特別な場所であり、そこに行くことは人知を超えた体験をもたらすのだというイメージを我々が共有することになったと言えるだろう。宇宙飛行士の野口聡一氏も高校生の時にこの本に感銘を受けたことが、宇宙飛行士を目指した動機の一つだと語っている。 本書は、歴代の日本人宇宙飛行士全12人に取材を行った史上初の書籍となる。宇宙に行った彼らがどのようなことを感じ、考えたか。問いかけの下敷きになっているのは立花隆の前掲書であり、「神秘体験」の有無、地球がどのように見えたかなど、実存的、哲学的な領域を中心としている。 日本人宇宙飛行士も“神”を感じたのか? 彼らが自らの体験を振り返ったときの違いは、どのような点から生じているのだろうか?〈本書のおもな内容〉CHAPTER1 この宇宙で最も美しい夜明け――秋山豊寛の見た「危機に瀕する地球」CHAPTER2 圧倒的な断絶――向井千秋の「重力文化圏」、金井宣茂と古川聡の「新世代」宇宙体験CHAPTER3 地球は生きている――山崎直子と毛利衛が語る全地球という惑星観CHAPTER4 地球上空400キロメートル――大西卓哉と「90分・地球一周の旅」CHAPTER5 「国民国家」から「惑星地球」へ――油井亀美也が考える「人類が地球へ行く意味」CHAPTER6 EVA:船外活動体験――星出彰彦と野口聡一の見た「底のない闇」CHAPTER7 宇宙・生命・無限――土井隆雄の「有人宇宙学」エピローグ 宇宙に四度行った男・若田光一かく語りき

感想・レビュー・書評

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  • 『タネの未来』を読んだとき、著者の小林さんが次の氷河期を考えて行動していることがすごいと思ったが、若田さんは地球がなくなった後のことを考えている。凄すぎる。50億年後だよ!?私は、私の孫(まだいないが)くらいの先までの地球しか考えたことがないよ。
    正直言って宇宙開発なんて、科学技術を試したいだけじゃないの?月とかに資源が眠っているかもしれないから、それを早い者勝ちで押さえようとアメリカとロシアが鎬を削ってるんでしょ?イーロン・マスクとかベゾスが出てくるところからして金が絡んでない訳が無い、くらいのことしか考えていなかったのだが、宇宙飛行士は皆さん子どもの頃から宇宙に憧れ、健康な身体と落ち着いた精神と優れた頭脳を持っているから、そういう下衆な考えはないんだなあ。
    この本は立花隆の『宇宙からの帰還』に触発されて、日本人飛行士にインタビューして書かれている。『宇宙からの帰還』を読んでいないので推測で申し訳ないが、脂の乗っていた頃の立花隆にはものすごい力があったので、(この本で立花隆のインタビューを受けた唯一の飛行士秋山豊寛が温泉宿に三日間缶詰めにされ、立花から「最後の一滴まで絞り尽くされた」というんだから凄まじい。)それと比べると見劣りするかもしれない。しかし、日本人飛行士全員にインタビューした本はないので、価値あるものだと思う。

    宇宙から地球を見た感想は意外に違うが、全員地球を大切にしなければいけないと感じている。戦争したり環境を破壊してはいけないというのを深いところで実感したというのだから、金持ちが大金払って宇宙に行くのも、それなりに意味のあることかもしれないな、と思った。広い宇宙に地球と似た星はあるかもしれないが、そこに人類が行くのはかなり難しいだろうから、地球が50億年後には無くなるとしても、その前に人間が地球を死の星にしてはいけない。
    宇宙に行かなくても改めてそんな気持ちになったのだから読んで良かった。

    追記
    『人類が生まれるための12の偶然』(眞淳平著、岩波ジュニア新書)を読んだら、地球がなくなるのは50億年後だけど、10億年後には住めなくなるらしい。それでも長いけど。
    あとベゾスやイーロン・マスクは宇宙から地球を観察して様々な変化を先に知って、誰よりも速やかに商売に繋げるために宇宙開発に関わってるそうです。これは新聞で読んだ。そこまでして商売をデカくしようという野望もまた凄まじい。

  • 宇宙へ行って人生観が変わった人も変わらなかった人もいる。
    自分の夢を叶えに行った人もいれば、地球からの"出張"として、普段の仕事の延長で宇宙へ行った人もいる。
    地球は大きかったと言う人と、小さかったと言う人がいる。
    未知の場所へ行くという同じ体験をしても、当たり前だが誰一人として同じ感じ方をしていなかった。
    いつの時代に、どんな背景をもち、社会状況がどうかによって宇宙体験の受け止め方がそれぞれ違っていて面白かった。

    宇宙から見た地球は、地球上には水も緑もたったのこれしか資源が残っていないのかと言っていた人がいた。
    それなのに大切にするどころか破壊し続けている私達は本当に愚かだなと思う。

    今後気軽に宇宙に行けるようになった暁には、言語化に優れている作家や芸術家、優れた想像力や感受性を持つ人々に行ってもらいたい。
    そこでどんなことを感じたのか是非教えてほしい。  

  • 宇宙から見た「地球」の感想を読むのが特に好きだ。
    ある時、もちろん僕は地球上にいてのことだが、
    地球は巨大な一個の「生命体」だと思い至ったことがあった。
    この本でも、地球を生命体として感じたと、複数の宇宙飛行士が語っている。
    宇宙飛行士の体験談を引き続き読んでいくことにする。

  • 『宇宙からの帰還』を読んでいた人として、日本の宇宙飛行士がどう感じたのかを取材してくれたことがありがたい本だった。土井さんの捉え方が一番腑に落ちた。

  • 1990年に秋山豊寛氏が日本人で初めて宇宙へ行って以来、本書が出版された2019年の時点で宇宙に行った日本人は12人。その全員にインタビューを行った本書。宇宙に行くという貴重な体験をした彼らは、宇宙で一体何を感じたのか・・・。『宇宙からの帰還』(立花隆/著)に大きな影響を受けた著者が、日本人宇宙飛行士たちが体験した、貴重な宇宙での体験をまとめた一冊となっています。

  • 宇宙から帰ってきた日本人
    日本人宇宙飛行士全12人の証言

    著者:稲泉 連
    発行:2019.11.15
    文芸春秋

    年の締めくくりにとても面白い本が読めた。

    宇宙へ行った日本人12人のうち、何人思い浮かぶか?
    TBSの秋山さんと最初に選ばれた3人(毛利、向井(内藤)、土井)は別として、あとは、若田光一、山崎直子、野口聡一の各氏あたりだろうか。古川聡さんも思い出せるが、僕の場合、他は顔も名前も記憶にあるかないかだった。この中では、日本人初の国際宇宙ステーション(ISS)コマンダーを務めた若田光一氏が最も実績があるけど、実は2020年、野口氏と星出彰彦氏がISSに長期滞在する。両者とも3度目で、しかも星出は日本人2人目のコマンダーとなるらしい。

    最年長は秋山氏で1942年生まれ、毛利氏は1948年生まれの団塊の世代。一方、一番若いのが1976年生まれの金井宣茂氏。海上自衛隊所属の外科医で潜水医官上がりだ。34年の年齢幅、とても興味深かったのが、地球を見た時の感想だ。
    秋山氏や毛利氏は、地球の姿に圧倒され、毛利氏に至っては、地球は一つの生命体だと感じ、全ては連続した全体の一部であるという「ユニバソロジ」なる概念も生み出した。
    一方、金井宣茂氏や1975年生まれの大西卓哉(ANA副操縦士出身)氏という「新世代宇宙飛行士」は、そこまでの深い感動はなく、「宇宙体験は、自分にとってはあくまでもキャリアの中での一つのイベントに過ぎない(金井)」、「仕事であって、自分の興味を満たすために宇宙に来たわけではない(大西)」という気持ちだったとのこと。最近の大学生は、自分を試したいという感覚より、早く社会に貢献したい、と考える人が多いと聞くが、どこか通じるものを感じる。

    もちろん、みんな共通して感じることも多い。初めて船外活動した時の独特の恐怖感もその一つ。落ちてしまうのではないか、宇宙に漂ってしまうのではないか、など、頼るところのない不安感を訴えている。

    なお、日本人宇宙飛行士が必ず読んでいると言っていい本は、80年代初頭に書かれた立花隆著「宇宙からの帰還」だそうで、若田氏や野口氏はISSにも持ち込んだそうである。


    ******(メモ)******

    船内の無重力環境に慣れて地球に帰ると、下に何もないところに行っても自分が浮いていられる感覚になる。とても危険で、崖のような場所にはなるべく近づかないようにした。(古川聡)

    宇宙に行くときはJAXAに「出張届」を出す。普段の出張時と同じフォーマットの書類に、「地球周回 低軌道」と書く。ただし、あご足がついているので、出張手当はつかない。(山崎、金井、古川)

    スペースシャトルとISSのドッキング時、本来はスペースシャトルのレーダーで距離とスピードを測りながら近づくが、レーダーが故障したため星の位置を頼りにドッキングした。(山崎)

    ソユーズで行く飛行士たちは、ホテルからバスで発車台へと向かう途中、ゲン担ぎで立小便をする。そこはガガーリンが人類初の宇宙飛行前にしたところ。(大西)

    航空自衛隊のパイロット(防衛大卒)だった油井亀美也氏(1970年生まれ)は、「自分の仕事にとって大事なのはアメリカとの関係で、これがすべてだった。だから、ソユーズに乗るための訓練にロシアへ行くたびにかなりの警戒感を抱いていた。敵だと思っていた国だから。しかし、ロシア人を含む様々な国の人たちと働いていると、知らないことがたくさんあることに気づいた。彼は戦争の専門家として歴史を勉強してきたが、自分がいかに片方の目で見た歴史しか知らなかったか、それに気づかされた。

    重力のない宇宙では、ひしゃげた状態の眼球が丸くなり近視が治る。だから、2度目の船外活動では眼鏡を外した。(土井)

    船外に出る宇宙服は100パーセントの酸素と3分の1気圧が維持される。気圧を3分の1にすると、血液中の窒素が気泡となって潜水病になるため、前日からスペースシャトルの気圧を下げておき、飛行士は純粋酸素を吸って体内から窒素を抜いていく。宇宙服を着てからも2時間ほど酸素を吸い続け、気圧を3分の1に下げて、外に出る。

  • 野口聡一さんと矢野顕子さんの本を読みちょっとした宇宙ブーム到来。そこから調べて行きつき図書館で借りた。
    この本、買おうかな。

    そしてこの本で言及されている本、みんな読みたい。

    野口聡一さんの本を読んでいる時は宇宙に行くのはわたしには絶対無理、と思っていたけれど、12人の話を読んでいるうちに私も行きたいかも…と思えてくる。

    無重力への順応、そのあとまた重力のある環境への順応の話。
    宇宙飛行士がほぼ皆環境問題に関心を寄せるというのも興味深い。
    宇宙は、もはや人類の活動範囲の中にあり、これから人類は宇宙に進出していくのだな、と納得してしまった。

    宇宙飛行士選抜試験の本、何年も前に読んでとても面白かった記憶がある(たぶんブクログに残してる)。そこで選ばれた方がもう宇宙に行っていたのか、となんだか感慨深いような気持ちになった。
    私は普段は宇宙にあまり興味がないので、選抜試験の本を読んだあとはすっかり宇宙のことなんか忘れていて、子供も生まれ、色々あって、でもその間にもずーっとISSには人がいたんだな。

  • 日本人が初めて宇宙に行ったのは1990年。それ以降12人が宇宙に足を踏み入れた。
    本書では12人へインタビューを行い自身の体験を語ってもらう。自分のような一般人がもつぼんやりとした宇宙観を持つしかないが、それが実際に経験した宇宙飛行士によって言語化されて伝わるのはありがたい。
    個人的には毛利衛氏が作り出した「ユニバソロジ」という概念に興味を持った。これは人間中心の考え方から脱却し生命のつながりを意識するための概念。生命は挑戦→適応→多様化を繰り返すことで、生き延びてきた。人類が宇宙へ行くことも、そうした生命のつながりの先に起こっている出来事だと説く。
    地球を外から見たことで得た各人の哲学は示唆に富む。

  • タイトルにあるように、宇宙に行ったことのある日本人「全」員に対してインタビューを行われています。著者が影響を受けた、立花隆さんの「宇宙からの帰還」の現在版といえるもので、2017年~2019年の間にインタビューをされています。宇宙飛行士という職業に対しての想いなどについては、個々人それぞれの考え方があり、それは仕事というものに対する日本人それぞれの考え方と同じだなとも思いました。その日本人飛行士が、宇宙から地球を見たとき、一様に同じように、地球に対する感動というものを、やはり感じていたということ。この実際に宇宙に行った者にしか分からない感覚を、インタビューという形で知ることができるということ。知り得た気付きは、ありきたりなのですが、彼らの言葉だからこそ、その言葉の中でこそ、その重要さを感じることが出来ると思います。

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著者プロフィール

稲泉 連(いないずみ・れん):1979年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』(中公文庫)で大宅賞を受賞。主な著書に『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)、『アナザー1964――パラリンピック序章』(小学館)、『復興の書店』(小学館文庫)、『サーカスの子』(講談社)などがある。

「2023年 『日本人宇宙飛行士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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