ファースト クラッシュ

著者 :
  • 文藝春秋
3.24
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911168

作品紹介・あらすじ

初恋、それは身も心も砕くもの。母を亡くし、高見澤家で暮らすことになった少年に、三姉妹はそれぞれに心を奪われていく。プリズムのように輝き、胸を焼く記憶の欠片たち。現代最高の女性作家が紡ぎだす、芳醇な恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 父の愛人の子(リキ)と一緒に暮らすことになった高見澤家。3姉妹、母親お手伝いさんまで心を掴んでゆくリキ。3姉妹の初恋・ファーストクラッシュの相手は揃ってリキだった、そのことを思い出しながら語る。
    ひゃー女たちの戦い。そして、年齢関係なく虜にしてしまうリキもすごい男の子だなって思った。3姉妹のそれぞれ実にストレートに瑞々しく描かれていて登場人物みんな素敵でした。姉はお嬢様風、次女は読書が好きで、ひねくれ者、三女はリキと犬のようにジャレあう明るい無垢な女の子。それぞれがそれぞれの方法でリキと接して引かれていくところ読んでで飲まれましたなあ。こんな風な初恋は私は残念ながら経験せず、いいね3姉妹。

  • 長女麗子、次女咲也、三女薫子の三姉妹の暮らす裕福な高見澤家に、父の愛人の連れ子である新堂力(リキ)が同居することになる。三姉妹はリキを見下し叩き壊したいと思いながらも惹かれてゆき、逆に粉々にクラッシュされる。更にリキは愛人の子を憎む母親の心までも溶かしてしまう。 

    突然、母がいきり立ったように叫んだ。
    「あなた、最初から大人だったわ。いっぱしにみんなの心をざわつかせて、ほんとに 嫌な大人子供! おばさん可哀相とか言って、私、忘れないわよ」「何よ何よ、みじめな子と思って同情してやってたらいい気になって......」
    昔の怒りを自ら蒸し返して腹を立てている母は、とてつもなく憐れに見えた。

  • 父の愛人の息子の新堂力が母親の死をきっかけに引き取られる事になった。裕福で優雅な高見澤家にとって関西から来た“異物”な彼にお姫様気質の麗子·斜に構えた咲也·ストレートな薫子と性格の違う三姉妹がどうしようもなく惹かれていく“初恋=ファーストクラッシュ”についてそれぞれの視点から語られる。愛人の息子に対する屈折を母からぶつけられるとか環境から大人にならざるを得なかった力から垣間見える魅力が絶妙で、思春期のエゴ満開な三姉妹が心掴まれる、或いは砕かれる瞬間が美しい。家政婦含め高見澤家の女達を翻弄してきた力の初恋の相手は…やはりあの人なんでしょうねー。

  • 姉妹の書き分け、その心理の微妙な機微、純文学だなぁと思いました。
    すごく山田詠美さんだなぁという作品。

    誰に共感しやすいか、というよりも誰にも共感しにくい話なのではないでしょうか。
    でもこういう特殊な状況や生い立ちは珍しくても心理としてはある、と思います。
    羨望や嫉妬や屈辱をぶつける対象であるとか、プライドを満たすための道具であるとか。
    それを表現するためのの仕掛けとしてこういう家族を作り出したのはさすがだなと思います。

    でもラスト、「そうくるのか」と思いましたね。それは想定外だった。誰かも書いてた気がしますが自分もちょっとがっかりでした。

  • 山田詠美さんらしいなぁ。ファーストクラッシュっていうんだ、初恋。ラブだと思ってたけど、クラッシュっていわれれば納得。孤児がやってきて、みんなそれぞれの姿で翻弄されてくさまが面白かった。

  • 山田詠美らしいちゃめっけ(死語だな)と毒のある文章にニヤニヤしながら読んでいたら、やられた。力のファーストクラッシュが、一番胸に刺さるじゃないか。

  • 片思いの基本は自己完結、そして自己自賛の為。
    そう思える相手がいるだけで実らなくても充分羨ましい

  • 読み終わったら、鳥肌がたちました。
    同情というスパイスで思春期の女を惑わせずとも惑わされてしまう力の魅力とは。

  • 高見澤三姉妹のファーストクラッシュ(初恋)は、父親の愛人の子、力だった。
    愛人が亡くなったため、父親は力を引き取って育てることにした。三姉妹は力をいじめたり、子分扱いしたり、犬のようにじゃれ合ったりして、それぞれのやり方で恋していく。
    いつの間にか三姉妹のみならず、母親もお手伝いさんもみんな力に惹かれていた。
    三姉妹が四十代になっても、初恋の思い出は消えない。

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    登場する女性たちは皆、力(りき)にメロメロ。少年誌に載ってるラブコメ漫画か、ギャルゲーみたいな設定。
    大人になった三女は今も力を想い続けていて、力もそれに応えるというラスト。なんだかとても感動してしまった。

    物語の冒頭、次女のモノローグに強く強く共感した。

    ”前向きに生きよう。未来を見詰めよう。きっと素晴らしいことが待っている。若い頃は、その種の明るい言葉に洗脳されがちだけど、そんなのは嘘っぱちだ。
    人間のすべては、過去にある。そして、過去が刻み続けて来た現在で、その人の歴史は止まっているのだ。そう思い始めてから、私は、後ろ向きで生きることに決めた。”(P10より引用)

    人は過去の積み重ねで出来ている。どれだけ未来を見ても、その人のことも、自分のことも見えるわけがない。過去だけが真実。
    過去に生きる毎日も、初恋を想う人生も、全然わるいものじゃない。

  • おー、これはまさに”嵐が丘”の設定ではないか!
    父親が連れてきたみなし子、新堂力。
    薄汚れた外見とは裏腹に女性を惹き付ける顔と性格。
    関西弁というのも魅力的。
    そのリッキーを(関心ある故に)いじめ抜く母親と三姉妹。
    長女、麗子は下僕のように扱い、次女、咲也は調子に乗らないよういつも監視し、冷たい態度と暴言でいじめ、三女の薫子はその無邪気さ故に自覚なく失礼なことを言ったり…。
    どんなラストになるのだろうとワクワクしながら読んだ。
    認知症になって施設に入った義母に力が寺山修司の詩を読んであげるシーンが美しかった。
    カオの初恋が中年になって実ってめでたしで良かったよ〜。
    タイトルのファースト・クラッシュとは初恋の意。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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