人類はなぜ〈神〉を生み出したのか?

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911694

作品紹介・あらすじ

4万年前、人類は洞窟の奥に祭壇と壁画を残した。サピエンスと〈神〉の歴史は、そこからはじまる。「宗教を知れば世界が見える。宗教を知る一つの方法になるこの書は、知的興奮に満ちています」池上彰(解説より)人類と〈神〉との出会いから数万年。われわれの知る〈神〉はいかにして生まれたのか。カリスマ宗教学者が、認知科学、考古学、歴史学の最新知見を総動員して、サピエンスと〈神〉の歴史をあざやかに紐解いてみせる。太古のサピエンスが洞窟の奥深くに残した壁画。それが宗教の始まりだった。そこには描かれているのは獣と人間を結合させた架空の動物。エジプトの神々も動物の頭部を持つなど多様な姿を持つ抽象的な存在だった。それはなぜ今あるような〈神〉になったのか。ネアンデルタールの祭壇、初期サピエンスの壁画、メソポタミアでの文字の発明。エジプトとギリシャの神々を経て、ユダヤ教、イスラム教、そしてキリスト教へ――。〈神〉の姿はサピエンスの歴史とともに変化する、人類の政治や社会の写し絵でもあった!全米に衝撃をもたらし、日本でも話題となった前作『イエス・キリストは実在したのか?』で、「人間としてのイエス」の実像を鮮やかに描き出したレザー・アスランが、膨大な文献資料の分析から、ついにキリスト教以前のユダヤ教やイスラム教までも取り込み、〈神〉のサピエンス史を解明する。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史学、考古学等の最新の知見から(神〉とは何なのかに迫る本書。〈神〉という概念が誕生した1万年以上前に遡り、認知科学のHADDや「心の理論」から、神とは人間の脳が生み出した「副産物」であると著者アスランは述べる。自身ムスリムであるアスランがそう述べるところに凄みがある。そして、人格化された神の系譜を、時系列に沿って丁寧に洗い出していく中で、神のあり方が人間の現実世界と合わせ鏡のようになっていることが明らかになっていく。
    微妙な邦題から宗教的な匂いを嗅ぎつけて敬遠してしまうのはもったいない。本書の半分以上を占める膨大な注釈と参考文献リストからも分かるように、知的興奮に満ちた科学読物である。べらぼうに面白かった。
    最終的に、アスランは〈神〉との向き合い方について、一つの結論を出す。その結論は、「なにごとのおはしますかは知らねども」の宗教観を持つ日本人なら共感するものではないかと思う。

  • 時間の流れが壮大な本だった。アダムとイブ、そしてバビロニアや古代エジプト。話のメインはイエスが誕生するよりはるか昔になる。<神>の本質は1万年前の石器時代から感じ取られていたのではないか。

    結局、汎神論に帰着するけれども本質を考えたらそうなると思う。ギリシャのような信じられないことをする神々より、森羅万象に存在する神の方が受け入れられやすい。それは八百万の神を信じる日本人だからか。

  • ”神”は結局人間の産物だから、外観も人間の形に近いし考え方、感情も人間であると。想像の範疇で生み出したのだなと言った所に納得。

  • 最初は専門的な言葉やいろんな人物の名前が出てきて理解に苦しみ難しい本だなあ、、と思いながら頑張って読んでいましたが、今起こっているガザでの紛争にも話が繋がっているんだなと気付いて以降は興味を持って読むことができました。

  • 神の人格化と人間の神格化は同じコインの裏表、冷酷ないやハウウェイと優しく慈悲深いイエス、

    地上の人間の支配の性質が変われば、天界の神々の支配もまた、それに合うように変化した。現世政治の神格化が起こった。
    ユダヤ人の間に一神教を導入したのは、換言すれば、バビロニア人の手によるイスラエルの悲惨な敗北を合理化するためだった。これが私たちの知っているユダヤ教の誕生である。バビロン補修以降台頭した神は人間的な感情と長所、善と悪を余すところなく発揮する永遠にして不可分の神。わずか500年後には、自分たち自身をキリスト者と呼び世の終わりを憂うユダヤ人の新興宗派によって、それは覆されることになる。

  • メソポタミア、エジプト、ギリシャ、ローマ、そしてイスラム。多元神から二元神、そして、一元神へ。世界宗教の流れを知ることが出来た。それぞれの生成過程がある種ナラティブに分かりやすく。

  • 前回、世界遺産の興味から、世界宗教史を学び、その中から疑問として感じていた、宗教の敬う対象としての神という考え方が一体、どのように、どうやって生まれてきたのか。そして、なぜ、地球上のいろいろなところで、似たような神の存在を信じていたのか、といったことへのヒントになると思い、読んでみました。
    本書は、太古の昔から人間の宗教感情が覚醒して行くプロセスを、認知科学、考古学、宗教史などの比較的近年の資料をもとに、描かれています。著者自身の信仰の歴史も紹介し、世界の宗教史を踏まえながら展開していきます。
    まずは、人間の宗教感情の目覚めを、肉体は死んでも、魂は生き続ける、という信じようとする本能的性向があったところから述べています。埋葬した跡が発見された時代から、宗教の始まりととらえ、

    ・来世があると確信しているから、埋葬を行う
    ・肉体とは別の霊魂(たましい)としか言いようのないものは消えずに残っていると直感的に知っていた
    ・霊魂が肉体から離れたものであれば、肉体より長生きできるはず
    ・目に見える世界は、死んだ人の魂でいっぱいになり、いろいろなものに宿ることができる精霊になる
    ・やがて、こうした精霊が人格化され、超自然的な存在に変容する神話が生まれ、神々として崇拝され、祈りを捧げられるようになる

    という展開を序盤で語っています。
    魂への意識の後、祖霊崇拝、諸霊の想像、神々と万神とのの創生、寺院や神殿の建設、神話や儀式の制定という過程を経て、数十万年かけてたどり、現代の信仰につながっていったということであり、宗教の歴史だけでなく、進化、思想、哲学、政治などの社会情勢などが複雑に絡み合っていきます。

    内容としては、専門的な部分も多く、理解できないところもあると同時に、キリスト教・イスラム教という一神教へとつながる宗教史になっていますので、もう少し、他の地域の事例などもあるとよかったかなとも思います。
    もう少し、基本的な勉強をしてから、再度手に取ってみたいと思います。



    ▼人間であろうとなかろうと、あらゆる事物に“霊魂”は宿る-これこそ心の世界の本質の特性である-と信じることをアニミズムと呼ぶ。それはおそらく、人類最古の宗教と呼べそうな発想であった可能性が高い。
    ▼宗教は、人類の進化の過程で、答えることのできない疑問に答え、初期の人間にとって脅威で、予想不可能な世界に対処する助けとなるものとして勃興したという想定である。それは今日もなお、宗教的経験として多くの人々に語り継がれている。
    ▼宗教は一種の社会の接着剤、原始的社会の中に一体性を助長し、連帯感を維持する手段として生じたというデュルケームの理論は、宗教感情の目覚めの起源としてもっとも広く保持されてきた説明である。進化論的に言えば、共通の一連のシンボルを中心にまとまり、共通の儀式的な行事に参加することによって、私たちの太古の祖先たちは集団としての生存能力を強化し、それによって、過酷で競争の激しい世界で生き延びるチャンスを大きくすることができたと想定するのはある程度うなずける。
    ▼宗教は進化の過程でそれが有利に働くためのものではなく、何か他の既存の進化的適応のために偶然に生じた副産物である
    ▼魂の存在を信じるのは人間の最初の信仰の可能性があるということである。実際、認知宗教学理論が正しいとすれば、魂の存在を信じることは<神>への信仰につながる。換言すれば、宗教感情の目覚めの起源は、未知なるものの意味の探求や恐怖心に根ざしたものではない。それは、自然界に対する私たちの無意識な反応から生まれたものでもない。私たちの脳の複雑な働きによる偶然な結果でもない。もっと重要な、説明するのがむずかしい何かの結果、私たちの中に埋め込まれた、生得的な、完全に経験から引き出された、「私たちはだれでも伏在する魂(こころ)を持っている」という信仰である。
    ▼人間の姿をした神々を創造し、自分たちがその神々自身と同じ身体的、心理的資質を共有していると主張することによって、人類を自然界のその他のものとは異なる存在と見るようになった。人類の進化の過程で初めて、私たちは宇宙の一部ではなく、その中心であると想定し始めたのである。

    <目次>
    序章 <神>の似姿を求めて
    第Ⅰ部 伏在する魂(こころ)
     第1章 エデンの園のアダムとイヴ
     第2章 獣たちの王
     第3章 樹幹に見える顔
    第Ⅱ部 人格化された<神>
     第4章 狩猟民から農耕民へ
     第5章 高位の神々
     第6章 神々の中の最高神
    第Ⅲ部 <神>とは何か?
     第7章 一神教の<神>
     第8章 三位一体の<神>
     第9章 すべてに遍在する<神>
    終章 万物の創造を司る「一(いつ)なるもの」


  • 丁寧に書かれてて面白かった。

    冒頭で著者が自身が昔思い描いていた<神>のイメージを綴っていたので、自分でも「私が想像する神は〜」と紙に書き出してみたら、まさに人格化された神像が浮かんでいたので本文読みながら納得した。

  • ・神、の人類史といえる本,かと思ったが,東アジアの儒教や仏教,神道,その他未開の地の独特な信仰体系等は触れられておらず,古代狩猟採取の超自然的な概念の誕生から最終的にユダヤ・キリスト・イスラムへの経路を辿るのみ.

    ・古代の狩猟採取の時代から,物や人には魂が宿るという考えやその発端が人が夢を見ることや現実世界で不可解な現象に説明をつけたかったからではという説が印象.
     
    ・神とそれに付随する宗教,古代文明や帝国の歴史,それらの推移といった,個人的に手が出しづらいところも知ることができて面白い.

    ・ユダヤ教,キリスト教,イスラム教あたりの話からは興味が持てなかった.
     主教や神そのものではなく,それによってその時代の人や社会の生活や生存にどう結びついていたのかという結果論的実利に興味があるんだろうな.

    ・「神」はやはり人間が生み出した虚構.時代に,人間のニーズに応じて応じてあらゆる姿形,教義が生まれては消え,統廃合されている.

    ・ユダヤ教,キリスト教,イスラム教といったよく知る宗教の前身を辿ると狩猟採取の時代まで遡れるんだなー

    ・で,「なぜ人類は神を生み出したのか」.やっぱりこれは理解できないものを理解可能なものにこじつける向け先が欲しかったんだろうと思う.(死んだらどうなるの?とか)


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    古代の狩猟採取民が残した洞窟壁画に始まり、ホモサピエンスをはじめとする人類が持っていた超自然的な物を崇拝する宗教感情の歴史を紐解く。

    宗教感情の目覚めに関する仮説
    ・タイラー:睡眠中に見る夢、死者との度合いをはじめとした超自然的な現象、それを説明するための肉体とは分離可能な魂という概念
    ・現実世界での理解不能な現象(太陽が昇っては沈むなどむ )

    →説明できないことを説明してくれる概念としての神

    資本主義社会や貨幣、企業や個人が売り出す製品やサービスも神

    宗教は共同社会の構成と維持に役立ったことで進化圧を生んだといえる。そういう意味で法、行動規範、秩序をもたらす宗教は超自然的なものなんかではない、現実に根差した実用的な概念

    "宗教は一種の社会の接着剤"

    マルクス「宗教は民衆のアヘン」

    認知学的アプローチ:予期していなかった出来事に人間的な動作主や動機の存在を感じ取る。
    石を熊と誤認する方が、熊を石と誤認するよりも生存しやすかった
    シミュラクラ現象

    「神話の重要性は、それが真実を物語っているかではなく。この世界についてのある特定の認識を伝える力にある。」→一つの広告も神話なんだなあ(そしてお金を使わせる )

    定住と農耕は定住が先、
    狩猟採取から農耕畜産へのシフトに宗教が大きな役割を果たした可能性

    人間化が進みギリシャの神々は姿形が人間そっくりなゼウスやアテナ,ヘラといったギリシャ神話の神々が登場する
    しかしあまりに人間化を押し進めた結果,神々が情事に耽る始末になり,姿形もない,非人格的な唯一神を求める思想家が増えた

    唯一神を崇める試みはいくつかあり,その一つとして有名なものが二元論的世界観を持つザラシュストラのゾロアスター教であったが,一神教の排他性は万人受けするものではなく,その野望は失敗に終わった.
    天国と地獄という概念もザラシュストラ発の概念

    折衷案的に生まれたのが単一神教,多数の神々の存在を認めた上で,最高位の単一の神を崇める教義

    ”シヴァは創造者で破壊者,神霊治療者で疫病神k,禁欲主義者で快楽主義者,嵐の神であるとともに踊りの王としても知られている”神としての序列が上がることで,追い抜いた神々の特徴を取り込んだ結果,シヴァは何でもアリになった.


    エデンの園,アダムとイブ,悪賢い蛇,善悪の分別が身に付く禁断の果実
    →自分が本を読むことで知見を得て,自分の中で凝り固まっていた観念を取り除き,分別つける視点を得ることに似ている.

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