- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163912875
作品紹介・あらすじ
江戸に生きる人々が織りなす鮮やかな人生。
“青山流時代小説”の真骨頂!
旗本の次男坊で部屋住みの俺は、武家であらねばならぬ、などとは思っていない。堅物の兄が下女に好意を寄せているのを見て取って、わざと下女にちょっかいを出そうとするが、気づくと女は身籠っていた。しかも父親は、隠居の祖父だという。六十九歳の老人に女で負けた俺がとった行動は――。
直木賞受賞作『つまをめとらば』に連なる傑作短編集。全7編収録。
感想・レビュー・書評
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オール讀物2019年3・4月号つぎつぎ小袖、6月号町になかったもの、12月号剣士、2018年9月号いたずら書き、2020年3・4月号江戸染まぬ、2019年9・10月号日和山、2020年6月号台、の7つの短編を2020年11月文藝春秋から刊行。出来事を追うのではなく、気持ちを追うストーリー仕立てになっていて、他の青山作品とは趣きが少し異なり、江戸に生きる人々の心根、心意気、想いを描く短編集になっている。つぎつぎ小袖、町になかったもの、が心に残る。ユニークな視点で、江戸に生きる人を語っているのが、興味深い。
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2020/11/05初版。図書館本としては異例の速さで読了しました。
今私にとって、現役の時代小説作家の中で一番と思っている青山さんなのですが。。。
この作品~短編集~はなんだか色んな「?」が浮かんでしまいます。
従来青山さんは「何かを極める」と言ったテーマが多かったのですが、今回は何か話が柔らかい。その為なのか文体も「語り」的になっていて、いつもの研ぎ澄まされた緊張感が薄れた気がします。さらに思考が飛躍して、それに付いて行けないのです。必然性を感じず「なんでそっちに行くの?」と思うようなストーリーが多く。。。
出版されたばかりで、他の人のレビューもほとんど無く、単に私の勘違いなのかもしれませんが。。。。
最後の「台」は突き詰めて行く感じが良い短編でした。 -
できれば幸せな結末が好みなので
ちょっと哀しいなぁという話も多かったけど
そういう物語でも
途中の展開はしみじみするものがあって
なんとも言えない余韻が残りました。
いちばん好きなのは『町になかったもの』
大店が開店したちいさな町の話。
お殿様の素顔が見える『いたずら書き』も
「ロバの耳」っぽくて楽しかったな。 -
江戸に「染まる」ことのなかった男。地方から出てきて武家の下男として働いていた。染まらぬその気持ちのまま地元に戻ることになるが…。
時代短編集。江戸の街に生きる武家の人々をさらりと描いている。 -
短編集つぎつぎ小袖(恋する生真面目な夫に借金をしてまで読みたい本を買った妻)、町になかったもの(江戸に目安を出しに行き書肆に「経典余師」を見つけ自分の町に書肆を始めた!、剣士(厄介叔父が終わりを剣に求めた!、いたずら書き(藩主が他藩の藩主を誹謗する文を託された!いたずら書きとして焚き火に)、江戸染まぬ(若いご老公の子をなした下女の芳を実家に送っていく途中)、日和山(隠居した父が貸本屋の写本で一家は追放に、最初は中間にその後剣を腰にと用心棒に、その時黒船が)、台(部屋住みでも女に持てていた、下女の清に振られ、その清が祖父の子を胎んだ!気持ちを入れ替え学問に励み開国に当たる。祖父が祖母の手水を助けるために台を作った!俺はあの台を己の裡に棲まわすと思った!)
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七編からなる短編集。
江戸に生きる一本筋が通った人々の心意気。
兄の代になれば、次男は実家に居座り無駄飯を食い続けることになる。
厄介者(自身)の始末の手立てを思案する耕造と慶之助。
「剣士」が秀逸。 -
七作の短編による、人間模様・・かな。
江戸者と出てくるので、江戸の時代なのかと思いますが、特にこれという設定はないようで、日々生きている、人の心のさりげないうちを描いている・・といった風でしょうか。
現代のこの生活の中でも、そんなことあるあるな、4コマ漫画的な話に感じられました。
作者の意図が読み込めなかったのが残念です。 -
青山文平の時代小説は、舞台設定が江戸時代だというだけで、現代に置き換えてもまったく問題ない普遍的な人間心理を描いている。そりゃあもう怖いほどに。
大切な大切な愛娘のために病封じの小袖を縫う手伝いを親戚にたびたび頼んでいる貧乏旗本の妻。今回もそうしたいけれど頼みにくいのは、親戚からの借金を断ってしまったから。断った理由は、夫が欲しがっていた本をこっそり買ってプレゼントしたのでお金が手元不如意になってしまったから。でも夫が喜ぶ顔を見られたんだから、仕方ない、仕方ないではないか。「つぎつぎ小袖」 -
何というか,深いというか,正直よくわからないところがあって...
最後の編ですが,「台」
清の子の父親が主人公の祖父って本当なのかな.祖母の態度だけでなく、時間的にも不自然な気がする.もし、清が訳ありで、祖父母が清を守ろうとしたなら、祖父の子ということにするのが一番波風の立たない方法で,祖母の振る舞いや,後々まで清が実家のように慕うのも納得できる.だって,「台」を作るような人ですよ,お祖父様は.
戻って,
「江戸染まぬ」
なんでこういう結末になるの.助からないよね、ふたりとも.
「剣士」も,同じような印象.
「つぎつぎ小袖」「町になかったもの」
これは,明るい終わり方.共通のキーコンセプトは「漢文を返り点なしで読み下せる能力」.もしかして,「町になかったもの」の高井蘭山(実在の人らしいけど)って,「つぎつぎ小袖」の主人公の良人?と妄想してしまった(番方だし).もしそうなら、借金作って漢籍を購った甲斐があったってことだよね.
「いたずら書き」
これは,一番読後感がよかった.
「日和山」
ぶった切ったような終わり方で,どう考えたらいいのか.でも,時代は幕末だし,彼のような人にはかえって未来があるのでは,と想像をたくましくする.
以上,順不同でした.