僕が死んだあの森

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913773

作品紹介・あらすじ

『その女アレックス』で世界中を驚愕させた鬼才ルメートル、
 まさに極上の心理サスペンス。

 あの日、あの森で少年は死んだ。
 ――僕が殺した。

 母とともに小さな村に暮らす十二歳の少年アントワーヌは、隣家の六歳の男の子を殺した。森の中にアントワーヌが作ったツリーハウスの下で。殺すつもりなんてなかった。いつも一緒に遊んでいた犬が死んでしまったことと、心の中に積み重なってきた孤独と失望とが、一瞬の激情になっただけだった。でも幼い子供は死んでしまった。
 死体を隠して家に戻ったアントワーヌ。だが子供の失踪に村は揺れる。警察もメディアもやってくる。やがてあの森の捜索がはじまるだろう。そしてアントワーヌは気づいた。いつも身につけていた腕時計がなくなっていることに。もしあれが死体とともに見つかってしまったら……。
 じわりじわりとアントワーヌに恐怖が迫る。十二歳の利発な少年による完全犯罪は成るのか? 殺人の朝から、村に嵐がやってくるまでの三日間――その代償がアントワーヌの人生を狂わせる。『その女アレックス』『監禁面接』などのミステリーで世界的人気を誇り、フランス最大の文学賞ゴンクール賞を受賞した鬼才が、罪と罰と恐怖で一人の少年を追いつめる。先読み不可能、鋭すぎる筆致で描く犯罪文学の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 「その女アレックス」シリーズのような、大胆な展開の謎解き小説ではありませんが、とにかく読ませます。
    少年が犯した罪は明るみに出るのか、淡々とした文章なのに、主人公の緊迫感が伝わってきて、寝る前に読んだら、眠れなくなりました…やれやれ。

  • うーんなるほどねー

    12歳の少年が隣に住む6歳の子を誤って殺してしまい死体を森の中に隠す
    というところから始まり、その心理描写を重ねて行くことで少年の人生を形付けていくというお話なんだけど
    あまりピンとこなかったな
    12歳の少年がそんなふうに考えるかな?って思う描写が多すぎてね
    フランス人はそうなんかもしれないけど

    ルメートルならではの破滅的な残虐性みたいなは少し垣間見えた気もしたけど

    とにかく自分はもっと分かりやすい話が好きなのだとあらためて思ったりしました

  • #読了 #僕が死んだあの森 #ピエール・ルメートル
    12歳の少年アントワーヌは、隣家の6歳の男の子を殺してしまった。そんなつもりじゃなかった…
    田舎の小さな村は警察やメディアで騒がしくなり誰もが疑心暗鬼。その時から彼は焦りと恐怖に支配される。完全犯罪になるのかどきどきしながら読みました。

  • 12歳で、隣の家の子どもを殺してしまった少年。
    彼にぴったりと張りつくようにして心理が描かれる。
    捕まるのではないかと怯える彼に感情移入してしまったら、随分とハラハラする読書になっただろう。
    しかし、訳者あとがきにもあったが、ルメートルは主人公との間に距離を置いて書いている。
    おろおろする彼の様子は哀れでもあるが、滑稽でもあるシビアさ。
    原題を聞いてなるほどと思ったが、邦題も良い改題だと思う。

  • 森にはなにかいる。

    平原は弱者も強者も等しく露わにするが、森は等しく隠す。
    だからやってくるものは突然で、それまでの長い時間は不安のみまとわりつく。

    誰にでも罪悪感がある。
    時は解決してはくれない。ただオブラートに包んで隠しているだけ……。

    そんな話の本だった。

  •  原題は『三日間、そして一つの人生』という意味である。このスリリングで圧倒的な物語を読み終わった時点で、敢えて意訳すると『三日間が決めてしまった人生』あるいは『あの三日間から逃げられないでいる人生』『人生のすべてはあの三日間だった』などなど。

     少年の物語は夢多くあれ、と思うのだが、本書は少年の物語でありながら作者がピエール・ルメートルだから、スリリングでミステリアスで皮肉に満ちた物語にしかなり得ないだろう。そんな想像力で、淡々と書き綴られるこの少年の物語を読んでゆくと、まさにスリリングでミステリアスで皮肉に満ちた物語として本書を楽しんでしまったのである。やっぱり、だ。

     第一部、1999年、ボーヴァル村。少年アントワーヌ、12歳。隣家の少年レミ 6歳。前者は後者を殺し、死体を森の中にぽっかりあいた穴に投げ入れてしまう。一瞬の憎しみの原因になったのは、前日に起こった隣家の犬の死。レミの父が轢かれてしまった犬を銃で撃ち殺してしまったのだ。レミの父への怒りをその息子への責めと暴力で果たしてしまったことにより、少年はこの時から殺人者となった。

     レミは失踪事件として捜索されるが、村は大洪水の災害に襲われる。

     第二部、2011年、アントワーヌ、24歳。帰郷。

     第三部、2015年、アントワーヌ、28歳。罪と罰の結末。思わぬ結末。

     第一部が、三日間の出来事で作品の流さで言えば三分の一を占める。三日間が濃縮され煮詰まったスープのようにアントワーヌの人生を決定づけているかに見える。
      
     ルメートルと言えば、奇をてらった意想外のミステリーの書き手という印象が強いが、本書はフレンチ・ノワールを少年小説のオブラートで包んだことで、より人生の深みや皮肉への到達度が深い味わいをもたらしているように見える。

     ミステリーとしては地味ながら、人間の罪と罰、自然災害のスケールを物語のクライマックスのように持ち出して、人間生活のちっぽけさを浮き出させて見せる。隣人や家族の人間関係と、男女の恋愛や青春を、不安定な秘密生活の上に乗せて見せる。

     上っ面と真実。笑顔と恐怖。それらの二律背反を配置して、人間心理の暗黒を垣間見せる描写に長けるこの作家の面目躍如といったところか。

     さらにこのフレンチ・ノワールならではの心理サスペンスの果てには、驚くべき結末が待っている。最後のどんでん返し。仕掛けと物語力に満ちた、実に上手い小説が一丁上がりというわけだ。

     気になることに本年の新作がルメートル自身最後のミステリーとなると宣言しているそうである。この作家のミステリー・エンタメ作品。一字一句を胸に刻むように読んでゆかねばならないのかもしれない。

  • 図書室で見つけたら必ず借りると決めているルメートル。不穏な題名の通り、書き出しからいきなり6歳の子の行方不明事件が出て来るのですが、その事件がなぜ起きたかというとある犬が車に轢かれたことがそもそもの始まりであり、変わり者の母親のことを理解しているけれど不幸である12歳の少年が家庭で得られない親密さや安らぎを感じ大事に想っていたよその飼い犬が死んでしまって絶望したからである、ということを、神のような絶対的な視点から淡々と冷徹な筆致で書いてくれて、いきなりグイグイ引き込まれました。自分が12歳で父親とは離れて暮らしていて母親のことはある意味諦めていて、学校の子達とのつきあいも微妙で、でも子供だからこの町から出られないという辛い状況に置かれているかのような気持ちになりながら読みました。あまり分厚い本ではなく、事件が起きた年の数日間と12年後、そしてその数年後という構成になっていて、途中で死んだりはしなさそうという安心感はありつつもずっと不安な気持ちのまま、という、下にネットはあるけどずっと綱渡りをしているみたいな読書体験でした。これどうやって終わるのかしら、と不思議に思っていたら、まるでホグワーツのセブルス・スネイプ先生のような展開でビックリ。でも驚いたのは一瞬だけで、思い返してみればなるほどね、、、と至極納得。やはりこの作家さんはすごいです。訳者あとがきも読みごたえあり良かったです。今後も読めるだけ読みたい作家さんです。

  • 12歳の少年が犯してしまった殺人。彼が味わう罪の意識と、苦しい日常が描かれる。一気に読ませる犯罪小説。

  • 鬼才ピエール・ルメートルの新作は、「恐れ」が主題。

    本作は、静かに物語が進んでいく。
    しかし、淡々としていながら、ずっとざわめいている、そんな進み方だ。
    胸騒ぎ、あるいは、ジャパニーズホラーのような、見えないのに何かがいる、というような、静かな恐ろしさだ。
    ホラーではないのだが、怪談が好きなら楽しめる筈だ。

    さて、物語は12歳の中学生(日本の小6)、アントワーヌが可愛がっていた犬を隣家の男に殺されたことから始まる。
    その怒りが、その男の息子に向かう。
    「そんなつもりはなかったのに」。
    人を殺めてしまったアントワーヌ。
    この秘密を彼は抱えたままどうなるのか…

    物語の結末は、さまざまなことを予感させる。
    もしかして、と初めから読み返してみたくなる。
    終始アントワーヌの視点で物語が進んでいたのだが、それに読者は踊らされていたと知る。

    わかりにくい結末、見方によっては確かにそうかもしれない。
    だがこの余韻こそ、読書の楽しみで、考察の余地があることこそやるせなさや人の心の複雑さを表してはいまいか。

    著者の作品としては短めなので著者作品が初めての人にもおすすめ。
    スプラッタが苦手な人にも◯。

  • 極上の心理サスペンス!
    加害者が精神的に追い詰められていく様子がリアルでした。
    途中から主人公に感情移入し、だんだん鼓動は早くなり...そして最後。見事な伏線回収に、思わず唸りました。

    北欧ミステリー好きな読書仲間さんがオススメしてくださったのですが、そうでなければ手に取らなかったかもしれない一冊。
    また面白い本を紹介してくださいね。

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ピエール・ルメートルの作品

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