「エイジフリー」の罠 いつでもクビ切り社会 (文春新書 693)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166606931

作品紹介・あらすじ

米国発「年齢差別から能力本位へ」の美名の下、議論なきまま「定年制廃止」が進む。日本型雇用がどう変わるか。どう備えるべきか。

感想・レビュー・書評

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    エイジフリー 日本マクドナルド(2006年に定年制の廃止を行った) 楽天イーグルス(2005年に44歳のチアガールを採用した) 渋谷のセンター街で石を投げれば高齢者に当たる時代(おそらく清家篤教授の発言) 第九次雇用対策基本計画(エイジフリーが最初に明言された) 75歳現役社会論(和田秀樹が主張) 雇用における年齢差別禁止法(アメリカで1967年に制定) 秋北バス事件(定年制の合理性を示した。後のアール・エフ・ラジオ日本事件も同様) 高齢者雇用確保措置(定年年齢の引き上げ、定年後の継続雇用、定年制の廃止のいずれかを行うこと) 役職定年制 エヴェレット汽船事件 改正雇用対策法10条(雇用時に年齢制限を設けることを実質的に禁止した) アメリカ:年齢差別禁止法 グレイ・ロビー(全米退職者協会を始めとする高齢者の団体) ハッピーリタイアメント US:早期引退者優遇制度(メディケアの優遇などをエサにしている) 随意的雇用原則 解雇権濫用法理 

  • 2014 09 3

  • エイジフリーになったとしても、現行の労働法のなかでは、「いつでもクビ切り社会」にはならないだろう。雇用期間の定めのない正社員に、定年があり、それを基本に社会保障制度が動いている。現実的な政策を積み上げいくしかないと思う。

  • コインの表裏というのでしょうか、物事には捉え方によって異なって解釈されることがあります。その良い例が、この本のタイトルにある「いつでもクビ切り社会」でしょう。

    年齢にとらわれること無く(定年制を廃止して)能力があればいつまでも働ける社会というのは、一見して良い響きに聞こえますが、裏をかえせば、能力がなければ若しくは収入に応じた実績が残せなければクビにすることができるという社会です。

    会社においてはその候補者をいつでもリストアップできるように成果主義を導入するなど社員をいつも序列付けする必要も生じてくる、というのがこの本に書かれていることです。

    人の能力に関わらずアルコールや運転免許、選挙権が与えられるように、人が働くことに対しても期限があっても良いのではとこの本を読んで感じたことでした。この本を読んでいて特に参考になったのは、難しい条文の内容を平易な(とてもくだけた)表現で解説してある(例:p73等)点でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・エイジフリー社会になる理由として、1)少子高齢化の進展、2)国際的なトレンド、3)社会における人権意識のこだわり、4)高齢者の政治力が増す、である(p22)

    ・アメリカでは年齢制限をつけることは違法(連邦法)で、この法律の対象者は40歳以上、州法により全年齢を対象とするところもある(p31)

    ・2008年現在では、法律上の義務でないにもかかわらず、日本のほとんどの会社で定年制が実施されている(p38)

    ・1980年後半には、当時定年といえば55歳であった時、厚生年金の支給開始年齢(男性)は、1974年から60歳であった(p43)

    ・1986年成立の高年齢者雇用安定法により、定年を定める場合には60歳以上とする努力義務が課せられた、1994年改正により義務規定(施行は1998年4月)となった(p43)

    ・2006年4月以降、65歳未満の定年年齢を決めている企業は、65歳までの「高年齢者雇用確保措置」を講ずる必要が生じた、1)定年年齢の引き上げ、2)継続雇用制度導入、3)定年制の廃止(p46)

    ・経過措置として、2013年4月にかけて65歳に引き上げ(2009年現在では63歳)、2009年までは対象者を企業側が決めることが可能(中小企業は2011年)である(p48)

    ・整理解雇の用件は、1)人員削減の必要性、2)解雇回避努力の有無、3)解雇基準の妥当性、4)手続きの妥当性、である(p52)

    ・アメリカにて1976年法制定時には、40歳以上65歳未満が対象であった(公的年金の支給開始が65歳)が、1978年改正において70歳に引き上げられ、1986年改正で撤廃された(p89)

    ・アメリカで差別が禁止されるのは、個人の能力を見ないで、その人が属する集団だけをみてその集団の固定的なイメージだけに基づく判断を行うこと(p118)

    ・エイジフリー社会は、能力主義的な人事管理制度へと以降していくことであり、同時に、上司の気まぐれに左右される「能力主義」のもとで働くことを意味する(p136)

    ・能力によってクビになった場合には、「まだ能力がある」と抗議することができるが、年齢が理由の定年制の場合には、抗議ができない違いがある(p166)

    ・エイジフリー対策のあり方を考えることは、現在の雇用慣行や労働法制のあり方を考えること、派遣切り・内定取り消しは、それにより生じた歪みである(p215)

    2010/10/17作成

  • [ 内容 ]
    米国発「年齢差別から能力本位へ」の美名の下、議論なきまま「定年制廃止」が進む。
    日本型雇用がどう変わるか。
    どう備えるべきか。

    [ 目次 ]
    第1章 エイジフリー社会がやってくる
    第2章 定年制とエイジフリー
    第3章 募集・採用とエイジフリー
    第4章 諸外国のエイジフリー政策
    第5章 「いつでもクビ切り社会」でよいのか
    第6章 「いつでも無礼講社会」でよいのか
    第7章 エイジフリー政策のあり方
    第8章 エイジフリー社会に備える

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    [ 参考となる書評 ]

  • 2010/06/28、Nから

  • ゼミで必修なので早めに読んでみた。


    経済が成長し続ける時代が終わった今、資本主義にどんどん対応していくためには
    この傾向というか流れ?は仕方ないことなのだと思うけれども、
    書いてあるように現在の日本社会には即してないなぁ。

    自分がいかに対応していかなければいけないかというのを考えさせられます。

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著者プロフィール

慶應義塾大学教授

「2015年 『ケースブック労働法〔第4版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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