名文どろぼう (文春新書 745)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166607457

作品紹介・あらすじ

人の心を打つ名文を書くには、名文を盗むことから始めよう。当代随一の名文家が、小林秀雄からスティーヴン・キング、落語、六法全書まで、秘密のネタ帳から古今東西の「名文」を絶妙に引用して綴る人生の四季。名文の芳香に浸る至福のひととき。

感想・レビュー・書評

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  • 珠玉の名文集。肩肘張らない、ダメな自分をそうそう分かるよと包み込んでくれるような、決して押し売りではない優しさを感じました。お気に入りを備忘録代わりに。

    P28人はしばしば結婚してから失恋するものである。結婚とは恋愛が美しい誤解であったことへの惨憺たる理解である。結婚は恋愛への刑罰である。しかし、すべての人間が受けなければならない刑罰であるから、これに耐えることが必要である。

    P31 ネクタイを上手に締める猿を飼う

    だめだ、バランスをとるためこちらの一句も載せておきます。
    P29 「痛い」すきになる ということは 心を ちぎってあげるのか だから こんなにいたいのか

    P80老いてなほ艶とよぶべきものもありや 花は始めも終りもよろし

    P83そりゃ、若い女と遊ぶことだ。だけど、年を取って若い女に触ったらヤケドをするから、ストーブにあたるように(手をかざせ)

    P107誰でも、生れた時から五つの年齢までの、あの可愛らしさで、たっぷり一生分の親孝行はすんでいるのさ、五つまでの可愛さでな。
    これは昔母親から聞いたことがある、この名言をどこかで知っていたのか、ここで出会うのは巡り合わせでしょうか。

    P189「いいお酒ですな」と人に感心されるようなのみかたが、あんがい静かな絶望の表現であったりする。

    P191世の中には醜女はいない。ウォッカが足りないだけだ。
    これは夜な夜な使えそうな名言ですな、拝借。

    P197隣室に書よむ子らの声きけば心に沁みて生きたかりけり

    P210武者小路実篤は、七十年間にわたって、毎日のように書を書き絵を描いたが、ついに書も絵も上達することがなかった。『新潮日本文学アルバム』に掲載されている昭和二十五年に描いたヌードなどは悲惨くらいに下手だ(中略)
    しかし、私にとって「勉強すれば偉くなる」とか「勉強すれば上達する」ということよりも「いくら勉強しても上手にならない人もいる」ということのほうが、遥かに勇気をあたえてくれる。
    努力は必ず報われるとは、報われた人の詭弁、とまでいうと角が立つが、ここまでやれるだけやってそれでも極められないこともあるという現実が、寧ろプレッシャーを緩和させてくれて努力にひた走る活力を与えてくれる。とても感じるところのある、名文です。

    まだまだ、手に取るそれぞれの人の琴線に触れる名言がきっとあるはず。厚かましくはなく、そっと心に寄り添ってくれる出会いがあると思いますよ。

  • 盗む中にもしっかり個性が入っているので損した気分にはならなかった。

  • 独り占めしたい「名文どろぼう」からのお恵み《赤松正雄の読書録ブログ》

     鼠小僧次郎吉が本を出したのではないかと思うが如き凄い本に出会った。読売新聞編集手帳の筆者・竹内政明氏による『名文どろぼう』がそれ。大金持ちから盗んだ金を恵まれない人たちに惜しげもなく分け与えたどろぼう・鼠小僧は、まさに正義の味方。昔から庶民に圧倒的な人気がある。“竹内次郎吉”も名文に飢える世の貧しき人々に、一気に名文家から盗んだものをばらまく。しかもひとつひとつの引用文を、ユーモアや季節感溢れる包装紙に包んで。

     スティーヴン・キングから始まって小林秀雄や宮部みゆき、果ては落語、論語、六法全書に至るまで、これまで蓄積してきた名文の数々を引っ張り出してきて絶妙の文章展開で鮮やかに見せ、読むものをつかの間の興奮に巻き込む。数多のジョーク集を手にしてきたが、“竹内次郎吉”はそれさえも盗む。どろぼうのうわまえを掠め取るかのように。

     著者は新聞記者として30年―「しゃれた言葉や気の利いた言い回し、味のある文章を半分は仕事の必要から半分は道楽で採集してきた」という。同じ記者経験を持つとはいえ、いろいろ読んでも採集もせず、蓄えもない私など恥ずかしい限り。

     これを手にすれば、様々な機会のスピーチで笑いをとるのに困らないはず。尤も、これがベストセラーになると、世の中に知れ渡るわけで、面白さも半減する。あまり売れてほしくないなどと思うのは、どういう心理だろうか。どろぼうの恩恵を受けるのは少なければ少ないほどいいなどというのは、いかにもけちな根性に違いない。

     ここで、いかにこの本が面白いか、幾つかの例をあげてお見せするのが筋だろうが、やめておく。けちと言われようと、何といわれようとも、自分だけで密かに楽しみたい。

  • 池上彰さんの本のなかで紹介されていた一冊。
    著者は読売新聞「編集手帳」の執筆者。
    古今東西、今昔さまざまな名文が独自の視点で切り取られていて、とても面白い。

  • .日本語の美しさに気付かされる本です。

  • 気軽に心あたたまる話が読める。

  • 私にとって名文って何だろう、どんなものだろう。
    本書において、くすっと笑えたり、なるほどと思う文はあったけれど、おお…名文と思う感じは受けなかった。
    一方で、日本語って美しいと言ったらありきたりな言い方だけど、濁点があるかないかで、意味が変わる、 おもしろいものだなと感じた。
    電報は結婚式で披露されるもの程度で、今はメールや電話、コミュニケーションアプリで連絡が取れてしまうから、文章の勘違いは減ったかもしれない。おもしろみが減ってしまったのかもしれない。
    いろんな文章も、その人のフィルターを通せば、共通点が出てきて、分類ができて、考察ができて、深みが出る。違った一面が見える。本の発想としてはおもしろい1冊と思われました。
    だった1文でも人を惹きつけられる、キャッチコピーほどではなくても、そんな文章が生み出せたら素敵。

  • 「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」で紹介されていたので、購入。
    正直、紹介されていた「名文」が頂点かな、という感じで、基本的にはシャレの効いた言葉が並んでいる。
    わたしの理解力がないのか、昔の言葉だからか、よく意味がわからない引用もちらほら。
    最後の「運の貯蓄」については良い考え方だと思ったので、取り入れたい。

  • まあジャケ買いみたいな感覚で、標題に誘われて購入した一冊。くすりと笑える小ネタ的なものが多くて、期待していた小説などからの引用と、名文になった背景や、文法など詳細な解説がなかったのが残念であった。

  • 私も読んだ本で、いいなぁと思ったら書き残そうと思います

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著者プロフィール

コラムニスト。1955年神奈川県生まれ。79年北海道大学卒業後読売新聞社入社。経済部等を経て、98年に論説委員。2001年より読売新聞朝刊一面コラム「編集手帳」を執筆。著書に『名文どろぼう』『名セリフどろぼう』『「編集手帳」の文章術』(いずれも文春新書)等がある。2015年度日本記者クラブ賞受賞。

「2018年 『竹内政明の「編集手帳」傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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